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日本専門医機構と厚労省はこんな杜撰なデータをもとに「制度開始」をごり押ししていた

2018/02/02

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

仙台厚生病院 医学教育支援室 室長
遠藤希之

 

2018年1月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

専門医取得転職

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨年12月15日、日本専門医機構(以下、機構)から、

各領域、都道府県別の一次募集専攻医数がようやく公表された。

 

筆者は複数の研究者とともにその内容を検証、解析してみた。

結果は予想通り、というよりも、想像以上のものだった。

 

東京一極集中が非常に目立ち、地域格差は広がった。

内科と外科離れも明らかとなり、いわゆるマイナー科志望が激増した。

 

これらの結果は複数の報道、論考で発表されてきている(https://www.m3.com/news/iryoishin/578074) など))。

 

上記の問題は非常に大きい。

 

一方で今回の一次募集者登録数と、

機構と厚労省が公表していたデータを分析した結果、

様々な不整合がみえてきた。

 

はっきり言うと「杜撰な医師数調査」が判ったのだ。

以下その一部を紹介するが、

読者諸賢も時間が許すのなら、厚労省や機構のHP を覗き、

データのいい加減さを検証してもらいたい。

 

まず、昨年3月15日に行われた

「新たな専門医制度説明会」の資料2である(厚労省のHPで公表されている(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/323.pdf))。

 

この資料では平成22年~26年、

5年間の基本領域専攻医採用数平均の図表をみることができる

(3ページ、特に表の(C) 機構調べ)。

 

この数字をもとに、5大都市圏の上限規制などが定められたという。

ところが、読み込むと不思議な点が次々とみえてきた。

 

例えば内科は、年平均3147人採用だ。

これが過去五年の内科志望者数として差し支えない、

ということで公表されたのだろう。

 

このデータと今回の内科志望者一次登録数2527人を比較すると、

実数にして19.7%減少である。

つまり厚労省の公表データでは

内科志望者は過去五年平均から20%も減っているのだ。


内科志望者激減に関しては、

医師国家試験合格者数増加を加味した減少など、

他の報道による三師調査との比較でも明白だ

(前出(https://www.m3.com/news/iryoishin/578074)。

 

さらにこの資料4-5ページ

「主たる診療科・従業地による

都道府県別医籍登録後3~5年目の医療施設従事医師数」の

厚労省、三師調査結果のデータも問題だ。

これらの数字が間違っているとは言わない。

 

しかし、現状を正確に表しているとは言い難い。

なぜなら主たる診療科の3-5年目の医師数を算出し、

これを各科の「後期研修医=新制度専攻医」と考え、

集計を終えた手法に大きな限界があるからだ。

 

現場の指導医なら容易に想像がつくのだが、

3-5年目の医師数に限定した時点で、

各科の後期研修医数はかなり過少に評価にされてしまっている。

 

実際の医療現場で働いている指導医なら自明のことだが、

6-10年目の内科や外科の後期研修医などざらにいる。

 

例えばメジャー科なら、

先にサブスペ科の腕を磨いた医師などが、

卒後年数を経た後に後期研修医の主体になると言う事が少なくない。

 

「3年目から消化器内視鏡の修行を頑張り、

名手になった後に専門医資格をとるため内科学会に入会せざるをえなかった医師」

というイメージを描いてもらえるとよい。


当然、このような医師はマイナー科にも多数いる。

さらに、小児科や皮膚科、病理診断科の従来のプログラムは4年である。

これらの科では少なくとも卒後6年目まで調査しなければならなかったはずだ。

 

卒後、3-5年目というくくりなら

「後期研修医すべてを網羅できる」という現場を

全く知らない医系技官の思い込みが、このデータの意味を台無しにしている。

 

機構調べのデータと較べても明白だが、実数がかなり少ない。

つまり、繰り返すが、現実数からはかなり少ない数字になっているのだ。

 

さて、機構調べの表に戻る。

目を引くのは「脳神経外科」の「約」300人だ。

 

そもそも「約」とはどういうことなのか?

当時の脳神経外科学会理事長の嘉山氏が機構に入れ込んでいたことは有名だ。

 

一方、機構理事長の吉村氏は同じ日の説明会スライドで

「脳神経外科は239人」と発表している

(厚労省、2017年3月15日、吉村氏データ、

最後のスライドhttp://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/262.pdf)。

 

つまり機構調べのデータは

吉村氏のスライドから60人以上増えているのだ。

 

機構は独自に調査する術も実力もないため、

調べると言いながらも結局、

各学会からの自己申告数を用いざるを得なかったという情報もある。

 

この厚労省の資料がその辺りの混乱を示している様に思える。

吉村氏は正確なデータを持ちながら、

脳神経外科学会の自己申告、水増しデータを

敢えて表に入れたのかもしれない。

 

これでは基幹施設の募集定員を水増しするためのデータではないか、

と勘繰られても仕方ないだろう。

 

さらに、この資料、医師の全体数もおかしいのである。

この5年間の医師国家試験数平均は年7666人だ。

ところが、この表では5年平均が年8300人になっている。

 

年7700人しか医師が卒業していないのに、

各科を合計すると年600人以上も増えている。

 

前述の水増し疑惑、ダブルカウント、色々な要因があるのだろう。

統計の限界とも言える。

 

しかし、本質的な問題は統計の限界ではない。

このようないい加減な数字をもとに、

五大首都圏の上限を設け、

今現在も姑息な人員調整を行っている

機構のやり方が杜撰すぎるということが問題なのだ。

 

機構はすぐさま持てる全ての情報を公開し、

堂々と議論の場に立つべきだ。

それができないならこの混乱の責任をとり、即刻解散し、

専門医制度を白紙撤回するしかないだろう。

 

 

 

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