各分野の専門家が医師の転職や開業などに必要な情報を配信します。

トップ > 医師からの情報発信 > 摂食障害の入院が難しい理由と入院適応となるケース

摂食障害の入院が難しい理由と入院適応となるケース

2018/02/09

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

摂食障害の入院が難しい理由と入院適応となるケース

 

摂食障害は、治療が難しく長期化することの多い疾患です。

そうなると家族や周囲の方は、

「入院させて食生活や問題行動を管理してもらった方が安心」と考えてしまいがちです。

 

しかしながら摂食障害を入院だけで治療することは困難で、

生命的な危機がある場合を除き、

基本的には外来治療が原則となっています。

 

ここでは、摂食障害での入院治療について考えていきたいと思います。

その上で、入院治療が適応となるケースについてもお伝えしていきます。

 

摂食障害入信

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.摂食障害の入院治療が難しい理由

摂食障害の入院治療は、

それを専門に診られる体制や

専門医がそろっている病院でしか行われていません。

 

入院施設のある精神科や心療内科の病院であっても、

摂食障害患者の入院は受け付けない場合が多いです。

それはなぜでしょうか?

 

1-1.摂食障害と他の精神的疾患との違い

摂食障害の治療は、

薬物療法よりも精神療法が中心になります。

精神療法は短期的な効果は期待しづらく、

専門性も必要になります。

 

例えばうつ病や双極性障害、統合失調症などの場合、

薬を中心とした治療を行っていきます。

 

これらの病気では効果がある薬も多く、

入院治療をすれば何かあればすぐに対応ができるので、

思いきった使い方をすることができるメリットがあります。

 

それだけでなく、入院環境にあわせて生活することで、

強制的に規則正しい生活リズムに整えられます。

 

それだけでも、

症状がよくなっていくことが期待できるのです。

 

このため自分に合う薬を探したり、

生活リズムを整える目的で入院をすると、

それなりの効果を期待することができます。

 

しかし摂食障害は、

現段階で効果を実証されている薬はありません。

 

拒食や過食にともなって出てくる不安や焦燥、抑うつ状態などに対して、

対処療法的にお薬が使われる程度です。

 

摂食障害の治療の基本は

患者さん自身の心理的な成長を促すことにあり、

ある程度時間をかけなければ治療の効果や方向性は見えてきません。

 

決められた入院期間に

集中的な何かの治療を行ってもあまり効果は期待できず、

やり方を間違えばむしろ悪化させる恐れがあります。

 

そのような面から、

心理的なサポートや専門の知識のある医師がいない病院では、

摂食障害の患者さんを受け入れることは難しいのです。

無理に引き受けたとしても、良い結果にはならないことが多いのです。

 

1-2.患者さん本人の難しさ

病気に対する認識が全くない方もいれば、

入院すれば問題がなくなるけれども、

退院するとすぐに再発する方もいます。

 

摂食障害の患者さんは、

入院に対する考え方が大きく2極化しています。

 

やせ願望の強い過食症の方や拒食症の方は、

入院生活で食事をとることに強い抵抗をしめします。

 

食べる内容やカロリーに極度のこだわりがあるため、

食べたフリをして捨てたり、

吐くための食物を盗んだりすることになって、

治療や現場が混乱してトラブルを招きやすい状況になりがちです。

 

このタイプの患者さんは自ら入院を希望することはなく、

家族や周囲によって無理にさせられていることがほとんどです。

本人が治療にまったく協力的ではないため、効果は期待できません。

 

反対に、積極的に入院を希望するタイプの患者さんもいます。

こちらの場合は、コントロールできない食行動に強い不安を感じ、

「何とか治さなければ!過食を止めなければ!」と必死になっています。

 

病院で健康的な食生活を指導・管理してもらえば良くなると期待していて、

実際に入院期間中は精神的にも落ち着き、

過食症状がピタリと治まる人もいます。

 

しかし退院したとたんに再発し、

入院中に過食しなかった分の反動でかえってひどくなるパターンがよく見られます。

 

2.摂食障害の入院治療とは?

認知行動療法を中心に治療をすすめていきます。

退院後も継続して治療をしていく必要があります。

 

摂食障害の入院治療においては、

ただ単純な食生活や行動の管理のための入院はメリットがありません。

 

その期間中に本人の心理面にアプローチをして、

根本の心の問題を改善していけるような体制と専門家が必要なのです。

 

現在摂食障害の入院治療を受け入れている病院もいくつかありますが、

そこで行われる治療の中心は認知行動療法です。

 

食行動や体型、人間関係や物事に対する考え方の歪みを修正していく方法で、

一定の効果は認められます。

 

しかしそれも入院治療が終わった後、

本人が回復への高いモチベーションを保って

日常の中でも継続して取り組めるかどうかにかかっています。

 

入院をしたからすぐに良くなるというものではありません。

 

そのため、摂食障害の入院治療は短期に限られています。

入院期間が終わった後は外来に戻り、

長期的な治療を続けることが基本となっています。

 

ですから入院が必要になる摂食障害の患者さんは、

入院施設での継続的な治療が望ましいです。

 

3.摂食障害で入院がすすめられる場合

痩せの度合いが酷い場合に入院となることが多いです。

自分の治療意志があって環境を整えることで治療が進む場合や、

過食で高血糖による身体的な保護が必要な場合に入院となることがあります。

 

ただ、状態によっては強く入院がすすめられるケースもあります。

 

まず、拒食症の患者さんで、やせの度合いがひどい場合です。

身体や脳に必要最低限の栄養まで行きわたらない状態になると、

本人に正常な判断能力が無くなります。

 

このようなときは外来での治療が不可能になり、

放置しておくと命の危険も出てくるために緊急の入院がすすめられます。

 

また、拒食症の患者さんのうち、

比較的軽度で本人に治療の意志が見られる場合、

適切な栄養管理によって過食衝動が治まることがあります。

 

拒食→飢餓状態→過食衝動の悪循環を断ち切ってあげることで

冷静な判断力が戻り、

積極的な外来治療が受けられるようになるケースがあります

 

過食症の人に対しては

あまり入院がすすめられることがありません。

 

しかしながら、インシュリン注射が必要な糖尿病の患者さんで、

過食して太るのを避けようと自己注射をしない場合は、

高血糖の危険があるので入院となることがあります。

 

太り過ぎで動きが取れなくなったり、

身体に深刻なダメージを与えたりする恐れがあるような場合には、

緊急避難的な管理入院がすすめられることがあります。

 

まとめ

摂食障害の入院治療があまりすすめられない理由、

適応となるケースについてご紹介しました。

 

ここに書いているのはあくまで一般論ですので、

個人個人の状態によっては臨機応変な対応が必要になります。

 

しかし、摂食障害の治療においては、

病院や医師に治してもらおうという姿勢ではなかなか良くなりません。

 

もちろん、専門家の指導や支えは欠かせませんが、

自分自身の食行動の異常を認め、

それと関連する心理的な問題と地道に向き合い

回復していこうとする患者さん本人の意志がとても大切です。

 

入院治療をする場合も漠然とするのではなく、

その入院の中で自分が目標とすることは何か、

日常の回復に生かせることが何か、

最初にしっかりと医師や周囲と話し合っていきましょう。

 

 

 

お問い合わせはこちら