各分野の専門家が医師の転職や開業などに必要な情報を配信します。

トップ > 医師からの情報発信 > [新専門医制度問題] 機構副理事長松原氏講演より 第二回「新設医大は戦時中の臨時医専!?」、氏の言葉を読み解く

[新専門医制度問題] 機構副理事長松原氏講演より 第二回「新設医大は戦時中の臨時医専!?」、氏の言葉を読み解く

2018/03/05

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

仙台厚生病院 医学教育支援室
遠藤希之

2018年2月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

専門医キャリア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事を読み始めて下さった方は恐らく、

拙文、「機構副理事長松原氏講演より

第一回「新設医大は戦時中の臨時医専!?」」も

お読みいただいていることと思います。(第一回はこちら


ただし前回は拙文といっても

殆どが松原氏の講演内容の紹介でした。

これからが筆者の意見です。

 

さて。
なぜ地方の新設医大に専攻医が集まらなかったのか、

そして東大、京大、慶応大に偏りがあったのか。

松原氏の考えは以下の発言に集約されるだろう。

くどいが、再度記載する。

 

「なぜそういう偏りがあるかといいますと、

日本の国の医療つまり医学を担当した大学は

旧帝国大学、旧医科大学、

それから、戦前からある医専、

それから戦争中作られた臨時医専、

この多くが各主要都市と主要県の医科大学になっているわけですが

こうして、最後がいまから数十年前に作られた新設医科大学。


そのきれいなボーダーができておりまして、

やはりそういった東京大学、慶応大学、京都大学、

そこに基幹病院の実権が集まっているというのも

紛れもない事実なんですが、

このことを裏返しますと、そういった大学や旧医科大学が、

ジッツ持っているところに人を派遣している。」

 

筆者もいまなお、

旧帝国大や旧医科大が多数の関連病院(ジッツ)を持っているのは、

ある程度は真実であろうと思う。

 

ただ、それらの大学が加速度的に

「ジッツ」を失いつつあるのも事実である。

 

なぜなら地方の新設医科大学も着実に力をつけてきているからだ。

各大学とも設立から数十年もたち、

卒業生から母校の教授になる人材も次々に出ている。

 

筆者は秋田出身、

仙台在住のため東北地方の友人が多数いる。

 

東北のいわゆる「新設医大」の友人たちは

必死で地域医療を守っているのだ。

 

仙台にある旧帝大の一つ、

東北大の「ジッツ」は明らかに減っている。

氏のいう「きれいなボーダー」などすでに崩れている。

 

今は二十一世紀、情報も教育もボーダーレスだ。

氏はいつの時代の話をしているのか。

 

ただ、筆者が最も驚いた発言内容はこれだ。

 

「医師を大量に生産した時代が日本国にもかつてございました。

それは、戦争のために医師がたりない、

それで全国に医専を作って臨時医専というところでございます。

大量に医者を育てて、そして1,2年で一人前にして戦地に繰り出す。」

 

なぜ、新専門医制度の説明に

「戦時中の臨時医専」が出てくるのか?

しかもこの話の後にしばらく話題が飛び、上記の内容に繋がるのだ。

 

氏の心の中にあるきれいなボーダーとは、

「旧帝大が最高位にあり、最下位は新設医大が

「戦時中の臨時医専」と同列に位置するボーダー」と聞こえる。

 

だから、宮崎や沖縄、秋田、といった新設医大には

「専攻医」が集まらないのだそうだ。

 

恐るべき現実認識の欠如である。

ボーダーがあるから集まらなかったのではない。

基本設計に重大な欠陥がある「新制度」が問題なのだ。

 

新設医大はどこでも地域医療のために必死だ。

それを「戦時中の臨時医専」に例えるなど信じられない物言いだ。

 

仮にそのような意味合いではなかったと氏が弁明するにしても、

「戦時中の臨時医専」を例えに出すのはいかがなものか。

 

松原氏の時代錯誤感は否めないだろう。

新設医大を中心に地域医療を頑張っている人々の

心の気持ちを折るような発言を平然と行う

松原氏の歴史的・地理的常識、見識、それらを筆者は強く疑う。

 

さらにこのような御仁を「副理事長」に推し頂いている

「機構理事」たちもみな同じ考えでいるとするなら、

日本の医療未来は暗いと言わざるを得ない。

 

氏は続ける。


「基幹施設として、こういった大学病院

(筆者注:氏のいう旧帝大、旧医科大などの付属病院であろう)からの派遣、

実際問題として県立中央などは

例えば九州などは福岡の九州大学が人事権を握っています。

だからそういったところに所属して、

実際的に人は見合っている方向です。」

 

氏によると、旧帝大と「こういった大学病院」が

「県立の中央病院の人事権を握っている」のだそうだ。

 

しかもそれが当然だと言わんばかりだ。

これも時代錯誤と言わざるを得ない。

県ごとの中央病院が最も臨床力が高い時代ではない。

 

とどのつまり松原氏の発言は

「旧帝大、旧医科大に専攻医を集める仕組みを造る制度は正当であり、

そこから、地方に人を派遣するシステムを造った」とも聞こえる。


結果的に、新専門医制度の基本設計は、

専攻医の「受験資格」のためにむやみにハードルを上げ、

プログラム制という

「循環型研修(筆者に言わせると、若手医師派遣業型研修)」を

こしらえることになったのであろう。

 

若い医師が首都圏に集中するのは当たり前だ。

ここに新制度の重大な欠陥がある。

 

さて今回の松原氏の講演を聞く限りでは、

都道府県・診療科別の応募者数分布の偏りを充分に認識しているようだ。

 

その上で、専攻医偏在の加速が機構の責任問題とされぬよう、

恣意的にデータを解釈しようと試みていると思わざるを得ない

(そのため未だに各種のデータを出さない・出せないのであろう)。

 

そこで次回は「静岡県は関東ブロック!?」という題で続けようと思う。

 

お願い:
松原氏の講演内容にピンポイントでも

疑問をお持ちの方がもしいらっしゃったら、

ぜひ MRIC 編集部経由で、筆者にご連絡くださいませ。

 

機構は具体的なデータを全く出していません。

それなのに上から目線で「各種報道は誤報だ」と言い張っています。

筆者と仲間は、例えばひどい言われようの

神奈川、静岡のデータなどもご提供できます。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

お問い合わせはこちら