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牛乳は本当に体に良いの?

2018/04/28

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

森田麻里子

2018年4月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師牛乳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息子も1歳になり、

そろそろ授乳も減ってきています。

 

今の保育園では、

食後やおやつの時間に冷凍母乳やミルクを飲んでいますが、

来年度からはお昼の時間に牛乳を飲むかどうか選べるようです。

 

私は子供の頃から、

食事と一緒に牛乳を飲むのがあまり好きではないので、

特に牛乳はいらないと思っていました。

しかし、保育園や学校ではほぼ100%、

牛乳が出されるようです。

 

その理由は学校給食法に

「完全給食とは、給食内容がパン又は米飯

(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む。)、

ミルク及びおかずである給食をいう。」という記載があるから、

という意見もあります。

 

慣習的なものも大きいのでしょう。

では、牛乳を飲んだ方がいい、

という科学的な根拠はどこにあるのでしょうか?

 

アメリカ小児学会は

1〜2歳の幼児は1日で約480mL以上の牛乳を飲むことを推奨しています。

 

これってかなりの量ですよね。

アメリカの基準では

この時期の1日のカルシウム必要量は700mgであり、

カルシウムにして300mg以上が推奨されているようです。

 

日本人の場合、

『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると、

1〜2歳の幼児は400〜450mgのカルシウム摂取が推奨されています。

 

牛乳100g に含まれるカルシウムは110mg なので、

1日にコップ2杯くらいを飲むと、

推奨量を摂取できることになります。

 

牛乳が子どもの成長に良いという研究もたくさんありました。

例えば、アメリカのボストン大学の研究者たちが行った研究では、

3〜5歳の子ども106人を、

1987年から1999年に渡って追跡しています(1)。

 

3〜5歳で乳製品をよく摂取していた群では、

15〜17歳になった時の骨密度が高いという結果が出ています。

 

特に、子ども時代の運動習慣と、

牛乳をはじめとする乳製品を摂取する習慣があることが、

骨密度のピークを高めるために大切です(2)。

 

また、カナダで2008〜2013年にかけて行われた研究では、

1〜6歳の子ども2831人を調べたところ、

牛乳を飲んでいない子はビタミンDの濃度が低いことがわかりました(3)。

 

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、

骨密度を維持する働きのある栄養素ですが、

実は、 カナダやアメリカでは、

牛乳のほとんどでビタミンDが強化されているという事情があります。

 

そういった国では、牛乳はビタミンDの摂取源でもあるのです。

カルシウムとビタミンDを同時に十分摂取すれば、

成長にはさらに良い影響があるでしょう。

 

一方で、日本の成分無調整の牛乳では、

この話は当てはまりません。

 

牛乳100gに含まれるビタミンDは12IUです。

これでは1日に500ml飲んだとしても60IU程度にしかなりません。

1歳以上の幼児の1日の必要量は600IUなので、その十分の一です。

 

また、牛乳は鉄分がとても少ないというデメリットがあります。

1〜2歳の1日の摂取推奨量4.5mgに対して、

牛乳100g中に鉄は0.02mgしか含まれていません。

 

牛乳を飲みすぎてお腹がいっぱいになってしまうと、

ただでさえ不足しがちな鉄分を

食事から十分に摂取することができなくなる可能性もあります。

 

このような背景も考えると、

十分なカルシウムを摂ることは大切ですが、

そのために必ず牛乳を飲まなければならない、

というのは言い過ぎかもしれません。

 

では、豆乳やアーモンドミルクなど植物性のミルクはどうでしょうか?

 

牛乳より「ヘルシー」であるというイメージがあるかもしれませんが、

イメージだけでこれらのミルクを使うのは、

ちょっと待ってください。

 

実際には必ずしもヘルシーとは限りません。

例えば、100g中に含まれるカルシウムは、

製品にもよりますが、およそ牛乳が110mg、

無調整豆乳が15mg、アーモンドミルクは75mgです。

 

タンパク質に関しては、

牛乳は3.3g、無調整豆乳も3.6gですが、

アーモンドミルクではわずか0.6gです。

 

豆乳やアーモンドミルクでは、

十分なカルシウムやたんぱく質を摂取することはできず、

牛乳の代わりにはなりません。

 

また、豆乳にはイソフラボンを摂りすぎるというデメリットもあります。

 

イソフラボンは、女性ホルモンに似た形をした物質です。

動物実験の結果からは、

動物の子どもの生殖機能に影響がある可能性もあると言われており、

人間の体への影響は、まだはっきりとした結論が出ていません。

 

現在の日本の基準では、

大人での安全な摂取目安量は1日に70mgであり、

子どもが大豆イソフラボンをサプリメント等で摂取することは、

勧められないとされています。


豆乳のイソフラボン含有量は、

製品によっても異なりますが、

平均で100g中25mg 程度です。

 

納豆1パックには約37mg 、

豆腐半丁(150g)で約30mgのイソフラボンが含まれています。

 

今のところ、小児の安全な摂取量の目安は示されていませんが、

豆腐や納豆、きなこなど、大豆製品は乳幼児でも食べやすく、

離乳食・幼児食でも活躍する食材です。

 

食事から摂る分だけでも、

十分なイソフラボンの量になることはお分かりいただけると思います。

 

ちなみにアメリカの基準では、

大豆由来の粉ミルク中のイソフラボンは、

乳幼児で体重1kgあたり1日0.08mg以下にすることが定められています。

 

離乳食が始まるまでは、

10kgの乳児でも1日0.8mgまでということになります。

 

こうして考えてみると、十分なカルシウムを摂取するためには、

牛乳をはじめとする乳製品はやはり便利な食材です。

 

乳製品以外でカルシウム豊富な食材を調べてみると、

茹でた小松菜は100g中150mg 、

鯖の水煮缶は260mgのカルシウムを含んでいます。

 

しかし幼児がこれほどの野菜や魚を食べるのは難しいでしょう。

乳牛の生育環境や飼料など、

気にし始めるとキリがない部分もありますが、

カルシウム不足になるよりは、

牛乳1〜2杯を飲むのは良いことだと思います。

 

また、乳糖不耐症といって、

乳糖を分解する力が弱いタイプの人もいます。

 

乳糖不耐症があると、

特に冷たい牛乳を一気に飲んだりした時、

お腹が張ったり、腹痛や下痢が起こったりします。

 

このため、乳糖不耐症が多い日本人に、

牛乳は「合わない」という意見もあります。

 

しかし、少し温めてあげたり、

ゆっくりコップ一杯分を飲ませてあげる分には、

症状が無い場合がほとんどです。

 

症状のない子が牛乳を控えなければいけない理由もありません。

牛乳ですぐにお腹がゴロゴロする子は無理に牛乳を飲む必要はありませんが、

その場合でも、ヨーグルトは食べることができる場合が多いようです。

 

結局、いくら食べても体に良い食材はありません。

どんなものでもバランス良く適量を食べ、

十分な栄養を摂取するのが大切です。

 

牛乳は1日に1〜2杯飲むことで

効率的にカルシウムを摂取することができますが、

他の食事からも、カルシウムや鉄分・ビタミンDを摂取することが大切です。

 

栄養素の補給として考えれば、

1歳以降は、育児用ミルクから牛乳に切り替える代わりに、

フォローアップミルクを飲ませるのも良いと思います。


特に鉄分は不足しがちな傾向にあるので、

気になる方はお家ではフォローアップミルクにしてもいいかもしれません。

 

市販の栄養素を強化した牛乳は、

子どもにはカルシウム・鉄や葉酸などが多すぎる場合もあるので、

フォローアップミルクの方が無難でしょう。

 

乳製品のアレルギーがあるときは、

植物性ミルクを上手に使うことで、

食事のバリエーションも増えると思います。

 

その場合も、

他の食材からカルシウムやタンパク質を十分に摂取できるよう、

心がけてみて下さいね。

 

1.Moore LL, Bradlee ML, Gao D, Singer MR. Effects of average childhood dairy intake on adolescent bone health. J Pediatr. 2008;153(5):667-73.


2.Golden NH, Abrams SA, Committee on N. Optimizing bone health in children and adolescents. Pediatrics. 2014;134(4):e1229-43.


3.Lee GJ, Birken CS, Parkin PC, Lebovic G, Chen Y, L’Abbe MR, et al. Consumption of non-cow’s milk beverages and serum vitamin D levels in early childhood. CMAJ. 2014;186(17):1287-93.

 

 

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