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西アフリカで有効だったエボラ出血熱に対する“ボトムアップ型”治療

2018/05/15

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

ヴァージニア大学医学部医学科元教授
David S. Fedson (dfedson@wanadoo.fr)
日本語訳:松本直子(防衛医科大学 医学生)

この文章は、MRIC Globalに掲載された文章を、日本語に翻訳したものです。

https://goo.gl/sfFZsG

 

2018年4月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

 

エボラ出血熱アウトブレイク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西アフリカでのエボラ出血熱のアウトブレイクでは

11000人以上の命が犠牲になった。

 

従来の対症療法の他に、

エボラ出血熱に特に効果を示すような治療法は存在しなかった。

 

ほとんどの治療施設において、

半数以上の患者が亡くなった。

しかし、その多くが生存できたであろうことが、

現在わかっている。

 

エボラ出血熱で亡くなった患者においては、

炎症性サイトカインの血漿濃度が上昇していた。

 

同じような現象は敗血症患者でもみられ、

内皮障害と内皮バリア破綻が、

その機序として知られている [1-3]。

 

エボラウイルスに感染し、

西アフリカでの医療行為から引き揚げた

医療関係者に対する入念な研究によると、

彼らは大量の体液を失っていたという。

 

この体液喪失の原因は、

血管透過性の劇的な亢進であった。

エボラウイルスへの感染により、

内皮バリアが直接影響を受け、破綻したことである。

 

循環器科医は、スタチンやアンジオテンシン受容体阻害剤など、

彼らが日常的に用いている薬剤には、

内皮バリアを安定させたり

修復したりする能力を持つものがあるということを、

長年の経験から理解していた。

 

これらの薬剤は急性期の重篤な患者に投与することができるし、

臨床研究は、これらの薬剤が、敗血症、肺炎、

インフルエンザの患者の救命に有効である可能性があるとしている[1.3]。

 

このような背景から、2014年11月には、

シエラレオネの地元医師たちは、

アトルバスタチン(スタチンの一種)(40mg経口/日)と

イルベサルタン(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、高血圧治療薬)(150mg経口/日)を

併用し、およそ100人のエボラ患者を続けて治療した。

 

果たして、治療が不十分だった数名を除いては、

救命されたのである。

 

不幸にも、そのエボラ治療法は、

数か月前にエボラ出血熱の研究者とWHO職員に却下され、

国立の保健局や大きな財団からのサポートを受けることもできなかった。

 

シエラレオネでの厳密な治験を行うことへの金銭的支援、

体制面での支援もなされなかった。

 

その治療は高額とはいえない個人的な寄付だけで支えられていたのだ。

残念なことに、シエラレオネの医師と保健当局は、

彼らの治療経験に関する情報の公開を拒否した。

 

それにも関わらず、彼らの取り交わした論文やメモは、

その治療によって、エボラ患者が、

驚くほど改善したことを示す良い証拠となっている(図)。

 

エボラ患者に行われたものの、

ほとんど成功しなかった治験(抗ウイルス薬や回復期血漿)[8]とは違い、

アトルバスタチンとイルベサルタンは

感染に対する宿主反応を標的としており、

ウイルスそのものを標的としていない[3-7]。

 

この併用療法は、

内皮の安定化から正常な体液バランスを取り戻すことに貢献し、

結果として、患者は自己の免疫反応が賦活されるまで生きのび、

ウイルスを排除することができる。

 

循環器疾患の患者を治療している医師たちはみな、

アトルバスタチンとイルベサルタンに精通しており、

その大半が患者の治療に、これら薬剤の使用経験がある。

 

これらの薬剤は、

西アフリカでは高価ではないジェネリック医薬品として手に入る。

10日にわたる治療には、

エボラ患者一人あたり数ドルしかかからないのだ。

 

治療を受けたエボラ患者に関する詳細な情報は公開される必要がある。

この治療における発見は、

外の目を介して、よく調べ、検証される必要があるのだ。

 

一方で、エボラ研究者とWHOはこうすることに興味を示していない。

ひょっとすると、ウイルスではなく宿主反応を扱うことが

彼らにとって奇抜な考え方に思われるからかもしれない[9]。

 

もしも、散発性のエボラ症例が発生し続けるなら、

この併用療法を、

それらの患者に対して試みることができるかもしれない。

 

また、患者数が増えた時には、

しかるべき治験が行われる可能性がある。

 

同時に、医師たちは、

流行性のインフルエンザや新種のウイルスに対しても[11、]

この併用療法が使えないか考えておくべきだ[10]。

 

なぜならば、このような疾患では、

内皮障害を克服できない場合、

しばしば多臓器不全から死に至るからである。

 

この原稿は、Sierra Leone Telegraphに2015年7月4日に出版されたもので、

著者の許可に基づき、MRIC Globalが複製したものです。

 

参考文献

 1. Fedson DS, Opal SM. Can statins help treat Ebola? The New York Times, August 15, 2014.
2. Enserink M. Debate erupts on ‘repurposed’ drugs for Ebola. Science 2014, 345: 718-9.
3. Fedson DS. A practical treatment for patients with Ebola virus disease. J Infect Dis 2015; 211: 661-2. (Published online on August 25, 2014)
4. Fedson DS, Jacobson JR, Rordam OM, Opal SM. Treating the host response to Ebola virus disease with generic statins and angiotensin receptor blockers. mBio 2015; 6: e00716-15.
5. Fedson, DS, Rordam OM. Treating Ebola patients: a “bottom up” approach using generic statins and angiotensin receptor blockers. Int J Infect Dis 2015; 36: 80-4.
6. Filewod NC, Lee WL. Is strengthening the endothelial barrier a therapeutic strategy for Ebola? Int J Infect Dis 2015; 36: 78-9.
7. Fedson DS. Immunomodulatory adjunctive treatment options for Ebola virus disease patients: another view. Intensive Care Med 2015; 7: 1383.
8. Cohen J, Enserink M. As Ebola epidemic draws to a close, a thin scientific harvest. Science 2016; 351: 12-3.
9. Baddeley M. Herding, social influences and behavioural bias in scientific research. EMBO Rep 2015; 16: 902-5.
10. Fedson DS. How will physicians confront the next influenza pandemic? Clin Infect Dis 2014; 58: 233-7.
11. Fedson DS. Treating the host response to emerging virus diseases: lessons learned from sepsis, pneumonia, influenza and Ebola. Ann Transl Med 2016; 4: 421.

Figure. Memorandum from a staff physician at the Port Loko Government Hospital in Sierra Leone. It was published on page one of The Times of Sierra Leone on February 3, 2016. Individual patient records document treatment of 15 patients, all of whom survived [5].

 

 

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