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食前薬や食後薬は守らなきゃダメ?お薬と食事の関係

2018/05/13

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

食前薬や食後薬は守らなきゃダメ?お薬と食事の関係

 

お薬を病院で処方されると、

「食前薬」や「食後薬」などといったように、

食事の前か後に服用するように指定されているかと思います。

なかには、食間に服用するお薬もあります。

 

食後ならまだしも、

食前薬や食間薬は忘れてしまいやすいです。

 

食後でも別に同じではないかと思われるかもしれませんが、

お薬によっては食事の影響を大きく受けるものもあります。

 

ですから、お薬は用法通りに使っていくことが大切です。

お薬によっては、用法を間違えてしまうと

著しく効果が落ちてしまうものもあります。

 

ここでは、食事がどのようにお薬に影響していくのかを

お伝えしていきたいと思います。

これを通して、食前薬や食後薬などをどうして守らないのか、

考えていきましょう。

 

食前薬食後薬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.目的による食前薬と食後薬の違い

制吐剤や一部の糖尿病のお薬では、

食事の前に効果を発揮する必要があるために

食前薬となっています。

 

まずはじめに、

お薬の目的による食前薬と食後薬の違いをみていきましょう。

 

食事をする前に効果を発揮する必要があるお薬は、

食前に服用する必要があるのは言うまでもありませんね。

食事では、大きく2つの変化が身体にもたらされます。

 

  • 胃腸の働きが活発になる
  • 血糖値が上昇する

 

食事をしたら消化をしなくてはいけませんので、

胃腸の働きは当然活発になります。

 

こうなると困るのが、

胃腸症状があるときです。

特に嘔吐があるときは、

吐き気止めは食前に服用する必要があります。

 

また食事をすると、

炭水化物が吸収されて血糖値が上がります。

 

糖尿病の患者さんでは食後の高血糖を防ぐために、

糖の吸収を抑えるお薬を服用することが多いです。

このようなα‐GIと呼ばれるお薬は、

食前薬として服用します。

 

その他のお薬は、

基本的に食後に服用することが多いです。

 

食前薬は食後に服用しては意味がないことは

お分かりいただけると思います。

 

それでは食後薬は、食前に服用してはいけないのでしょうか?

続けて、食事のお薬への影響をみていきましょう。

 

2.食事の前後で何が変わってくるのか

胃から腸へ運ばれるのに時間がかかることや、

胃の中でのPhが変わること、

食事中の脂肪の影響があげられます。

 

それでは、食事の前後で何が変わってくるのかを考えてみましょう。

食事をすることによって、大きく3つの変化がもたらされます。

 

  • 胃から腸へ運ばれるのに時間がかかること
  • 胃の中でのPhが変わること
  • 食事に脂肪が含まれること

 

この2つの変化によって、

お薬の吸収の効率が変化していきます。

吸収が高まるケースもあれば、

反対に吸収されにくくなってしまうこともあります。

 

①胃から腸へ運ばれるのに時間がかかること

私たちは食事をすると、

食物は胃に運ばれて、そこで消化を受けます。

そして少しずつ腸に運ばれていき、

栄養素が小腸で吸収されていきます。

 

食べ物で胃が満たされると、

お薬もすぐには腸に運ばれずに時間がかかります。

 

ですからゆっくりと吸収される傾向にあります。

ゆっくり吸収されるため、

一気にお薬の血中濃度は上がらず、

じわじわと効果を発揮するようになります。

 

つまり、お薬の最高血中濃度(Cmax)は低下し、

最高血中濃度到達時間(Tmax)は遅れます。

 

薬の効きは弱くなり、

その代わりに時間をかけて効果を発揮するようになります。

 

②胃の中でのPhが変わること

胃酸というように、胃の中は酸で満ちていて強酸性です。

食事をすることによりその酸がうすまり、アルカリ性によります。

このPhの変化が、お薬の吸収に影響を与えます。

 

空腹時では胃液のPHは1.2~1.8ですが、

一般的な食事では3.5~5.0に上昇するといわれています。

 

このような変化に対するお薬の影響は、

お薬ごとにまちまちです。

 

程度の差はありますが、

胃酸の性質が変化することで薬効が変化します。

 

具体的には、以下の3つの変化があります。

  1. 錠剤の粉々になりやすさ
  2. 酸によるお薬の分解
  3. 薬の胃の中での分子とイオンのバランスがかわる

 

薬にも、酸性のものと塩基性(アルカリ性)のものがあります。

酸性の薬は酸性では安定しやすく、

塩基性では崩れやすくなります。

 

塩基性ではその逆で、塩基性で安定しやすく、

酸性でくずれやすくなります。

 

食後は塩基性によるため、

酸性のお薬は崩れやすくなり、

塩基性のお薬は安定しやすくなります。

 

また胃酸によって、

お薬の成分が分解されてしまいます。

 

ですから空腹時では、

お薬の有効成分が分解されてしまい、

効果が薄れてしまいます。

食後であれば、酸の影響が少なくなります。

 

そしてpHが変化することで、

胃の中での分子とイオンのバランスがかわります。

 

お薬は分子の形かイオンの形で存在しています。

その割合を分子形分率といいます。

 

分子の形の方が疎水性であり、

脂でできている細胞膜を通過しやすくて吸収しやすくなります。

 

③食事に脂肪が含まれること

食事をすれば、何らかの脂肪をとります。

この脂肪がお薬の吸収率に影響を与えます。

 

脂肪に溶けやすいお薬(脂溶性が高い)では、

食事で摂取した脂肪にお薬の有効成分が溶け込んでいきます。

そして脂肪が体内に吸収されるときに、

お薬も一緒に吸収されていきます。

 

ですから脂溶性の高いお薬では、

食事をすることによって吸収効率がよくなります。

 

その他の成分としては、

骨粗鬆症でよく使われるビスホスホネート製剤では、

カルシウムやマグネシウムなどと一緒になると吸収されなくなるので、

朝食前に服用するのが一般的です。

 

3.食事の影響が大きいお薬とは?

精神科のお薬のように脂溶性が高いお薬は、

食後に服用することで吸収効率が増します。

特に抗精神病薬のロナセンやルーランは大きく変化します。

 

このように、お薬は食事よって

影響を受けることがご理解いただけたかと思います。

その影響は、お薬によってまちまちです。

 

通常、用法を変えることで、

お薬の効果が強まることはありません。

薬が効きすぎてしまうことは、

副作用につながるためです。

 

酸の影響についてみてみると、

ハルシオンをはじめとしたベンゾジアゼピン系の睡眠薬や

抗不安薬、乳酸菌製剤(ミヤBMを除く)などは、

酸によってお薬の成分が分解されてしまいます。

 

ご高齢の方などで飲みこみが悪い方は、

服薬補助ゼリーなどを用いることがあるかと思います。

服薬補助ゼリーの中には酸性のものもあるので、

注意が必要です。

 

また、胃の中での分子系率が変化することで吸収も変わります。

例えば精神科のお薬では、基本的に塩基性でできています。

 

精神科のお薬の中で酸性のものは、

ガバペンやトピナ以外の抗てんかん薬、

抗精神病薬のロナセンくらいになります。

 

そして脂溶性の高いお薬では、吸収効率がよくなります。

 

精神科のお薬は脳に作用するために脂溶性が高いものが多く、

食後で効果が増すお薬が多いです。

 

反対にいえば空腹で効果が減弱してしまうため、

食事をしないならば牛乳を飲んだ後に服用したほうが良いでしょう。

 

薬はこのように、様々な影響をうけます。

その影響の大きさは、

薬の累積血中濃度(AUC)を見ることで分かります。

 

AUCとは、トータルでお薬がどれくらい吸収されたかを反映します。

 

精神科のお薬は脂溶性のものが多く、

食事によってAUCが大きく変わるお薬が多いです。

食事によってAUCが大きく上昇する薬としては、

ロナセン(269%)
ルーラン(243%)
セロクエル(149%)
インヴェガ(137%)

に注意が払う必要があります。

 

一方で、免疫抑制剤のプログラフなどはAUCが下がりますが、

下がるお薬はとても少ないです。

 

4.漢方薬が食間薬である理由

漢方薬では、

胃酸によって副作用の強い生薬の働きをやわらげ、

効果の穏やかな生薬の働きを強めます。

 

お薬によっては、

食間に服用するものもあります。

 

食間とは空腹時に服用する必要があるということで、

おおよそ食後2時間をすぎれば食間ということになります。

 

空腹時であればよいので、

食間でなくとも食前でも大丈夫であることがほとんどです。

このようなお薬の代表的なものが、漢方薬です。

 

どうして漢方薬が食間薬なのかというと、

作用が強いアルカロイドの効果をやわらげ、

作用が穏やかな有機酸の吸収をよくするためです。

 

これによって全体的に副作用が少なくなり、

効果が強まります。

 

漢方薬では、

アルカロイドと有機酸の2つの生薬成分が効果を発揮します。

空腹時の胃酸によって、

アルカロイドの吸収をやわらげ、有機酸の吸収を高めます。

 

アルカロイドは作用が強く、

それが副作用となることがあります。

 

例えば麻黄に含まれるエフェドリンは、

交感神経を刺激します。

 

アルカロイドは塩基性であるため、

空腹時の胃酸によって吸収が穏やかになります。

 

それに対して有機酸は作用は穏やかで、

酸性になります。

 

このため、胃酸によって吸収が高まることで、

効果が強まります。

 

このように漢方薬では、

副作用が強い生薬の効果をやわらげ、

効果の穏やかな生薬の効果を高めます。

 

5.脂質・炭水化物・タンパク質のお薬への影響

特に脂質は、お薬の吸収に影響を与えます。

バランスよく食事をとることが、

お薬の効果を安定させるために大切です。

 

食事には、様々な栄養素が含まれています。

それぞれの栄養素は、お薬にも少しずつ影響しあっています。

 

最後に、栄養素とお薬の関係についてみていきましょう。

 

3大栄養素と呼ばれる

脂質・炭水化物・タンパク質ですが、

この中で一番お薬に影響を与えるのは脂質です。

 

その点については上でお話ししましたが、

脂肪に溶けやすいお薬では、

お薬の吸収効率が高くなります。

吸収だけでなく、血液中でも変化があります。

 

吸収についてもう少し掘り下げてご説明すると、

高脂肪食では小腸で脂肪を吸収するために、

胆汁酸の分泌が亢進されます。

 

これによって脂溶性が高い薬は、

吸収率が増加します。

 

リンパ系から直接吸収される割合も増え、

全体としてお薬の生体利用率(バイオアベイラビリティ)があがります。

 

血液中では、遊離脂肪酸が血液内に増加します。

すると、これが血液の中のメインのタンパク質である

アルブミンにくっつきますので、

薬がアルブミンから離れて遊離します。

 

このことが及ぼす影響は2点あります。

 

脂溶性が高い薬は血液には溶けにくく、

アルブミンとくっつくことで全身をスムーズに運ばれます。

ですから、アルブミンと離れることで、

体に残りやすくなります。

 

そして薬としての効果は、

遊離してターゲットである組織(脳)に届いてはじめて発揮されますので、

効果が増強すると考えられます。

 

このように、脂肪はお薬の吸収に大きく影響します。

 

脂溶性が高いお薬は、

脂肪の吸収を妨げるサプリメントや

一部の脂質吸収を抑える医薬品によって吸収率が落ちます。

逆に脂肪をとりすぎると、

血液中の薬が脳に移行しやすくなり、

副作用が出やすくなります。

 

高炭水化物食では肝臓の代謝に関係するCYPという酵素を抑制し、

高タンパク食では促進するといわれています。

 

ですから、高炭水化物食では薬が残りやすくなり、

高タンパク食では薬が分解されやすくなると思われます。

 

このように、栄養素によっても様々な影響がお薬にあります。

お薬を服用するときにこまごま気にする必要はありませんが、

食事をバランスよく毎日偏らないようにすることが大切です。

 

まとめ

制吐剤や一部の糖尿病のお薬では、

食事の前に効果を発揮する必要があるために食前薬となっています。

 

精神科のお薬のように脂溶性が高いお薬は、

食後に服用することで吸収効率が増します。

特に抗精神病薬のロナセンやルーランは大きく変化します。

 

漢方薬では、胃酸によって副作用の強い生薬の働きをやわらげ、

効果の穏やかな生薬の働きを強めます。

 

バランスよく食事をとることが、

お薬の効果を安定させるために大切です。

 

 

 

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