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スポーツの内か外か 刑事司法の役割

2018/06/21

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

小松秀樹

2018年5月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師謝罪会見

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日大と関西学院大のアメリカンフットボールの定期戦で悪質タックルがあり、

大きな議論になっています。

 

当該選手は、

監督・コーチの指示で意図的に反則タックルを行ったこと、

自分にアメリカンフットボールをする資格がないこと、

アメリカンフットボールをやめることを

記者会見で明らかにして謝罪しました。

 

アメリカンフットボールは死亡事故が生じうる競技であり、

ルールを遵守しなければ、ひどく危険です。

 

仮に、監督の指示があったとしても、

実行するかしないかは本人の判断です。

 

自立した判断能力を持った個人でなければ、

こうした危険なスポーツに参加してはなりません。

 

ナチスの残虐行為、

ベルリンの壁での逃亡者の射殺など

いずれも実行者が処罰されました。

 

事件解決のために最初に行うべきは、

当該選手に対する刑事責任の検討です。

 

この選手の将来のためにも、

刑事責任についてはっきりさせるべきです。

 

とはいえ、最大の問題は、監督・コーチにあります。

監督・コーチは、理由を示さずに当該選手を目の敵にして攻撃し、

追い込まれた選手に命じて、

相手のクオーターバックに傷を負わせようとしたと報道されています。

本当だとすれば卑劣極まりない行為です。

 

日大の監督・コーチは負傷させろと命じたことを否定し、

監督・コーチの意図と

当該選手の受け止め方に乖離があったことが

事件の原因だとしました。

 

監督は、すべて自分に責任があると発言しましたが、

選手が悪質タックルを実行したことの責任を

代わって負うことはできません。

 

しかも、指示したことを否定し責任を選手に押し付けました。

負えない責任を引き受けるとする一方で、

負うべき責任を回避しようとしました。

 

立派な態度だとは言えません。

 

監督・コーチの発言の矛盾が次々と指摘されていますが、

監督・コーチの主張を、民間人が覆すのは不可能です。

調査権限がないことに加えて、

法的な評価を下す立場にないからです。

 

傷害罪は刑法の中でも、基本的な犯罪です。

その適用範囲によって、多くの人の行動に影響を与えます。

 

刑事司法は、今回の事件を捜査し、

犯罪か、犯罪じゃないのか、境界を示すべきです。

 

スポーツのルールで選手を守れるのか、

スポーツの範囲外の犯罪行為として

刑法で選手を守るのかが問われています。

 

このまま、刑事司法が捜査することなく事件を放置すれば、

日大の監督・コーチの行動を承認したことになりかねません。

 

いかに厳しいルールがあっても、

スポーツのルールでは、

意図的な反則タックルの歯止めになりません。

 

被害者側も、警察に被害届を提出し、

検察への告訴も検討しているとのことです。

 

2004年、福島県立大野病院で、

出産時に癒着胎盤から大量出血があり、

母親が死亡しました。

 

医師が逮捕され、業務上過失致死罪で起訴されました。

癒着胎盤は、極めて危険な産科合併症です。

医師は、故意に害を及ぼそうとしたわけではなく、

必死に母親を救うべく努力しました。

 

残念ながら医療は安全ではありません。

大野病院事件が議論になった頃、

医療の内側と外側の区別が、議論されるようになりました。

 

手術、合併症は医療の内側であり、

どうすれば母親の生命を救えたのか、

善悪の規範ではなく科学的に議論すべきはずのところ、

警察・検察は、法規範で医師に罪があるとして、

刑事罰を科そうとしました。

 

医療の内側の問題に、

司法が介入しようとして強い批判を浴びました。

 

今回の事件は、

パワーハラスメントで当該選手を追い込んで、

相手のクオーターバックを負傷させようとしたものであることが

確定しつつあります。

 

これが正しければ、明らかな故意犯罪です。

 

スポーツの範囲外のことであり、

刑事司法が介入すべき事件です。

 

刑事司法が介入しなければ、

選手は安心してプレイできず、

アメリカンフットボールは衰退するでしょう。

 

社会への影響を考えると、

刑事罰を科さない場合でも、

刑事司法は、その理由を示す責任があります。

 

日大の学長は、第三者委員会で調査すると言明したものの、

監督・コーチの説明を追認した形になっています。

 

この後の、日大からの関学側への説明でも、

学生への事情聴取をすることなく、

監督・コーチの言い分を認めています。

 

大学側の姿勢を見ると、

大学が選任した第三者委員会が

公平な立場で調査するのかどうか懸念されます。

 

ここまでくると、

日大の経営者が事件の正当な解決を

意図的に怠っていると見えてしまいます。

 

問題を解決するのに、

経営者の入れ替えが必要であることを、

日大自身が時間をかけて、

段階を踏んで示しているように思えるほどです。

 

日大経営者に責任を問うためにも、

刑事司法の役割は大きいと言わざるを得ません。

 

 

 

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