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自民党改憲案と徴兵制、徴医制

2018/07/19

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

NPO法人・医療制度研究会
理事 平岡諦

2018年6月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医療制度研究会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日(2018.6.9)、

NPO法人医療制度研究会の第99回総会が行われ、

理事長が中澤堅次氏から本田宏氏に交代するとともに、

わたしも理事に推されて就任した。

 

その時の講演会で追加発言した

「徴兵制・徴医制と憲法改正」を中心に、

自民党・安倍内閣のおよそここ10年のうごきをまとめたので報告する。

 

徴医制については、

日本学術会議の動き(1)、

および平成26(2014)年の医療法改定の内容(2)と関連して

すでに述べてきた。

 

しかし、これらの動きが、拙著(3)で指摘した、

自民党憲法改正草案

(平成24(2012)年4月27日決定、以下、自民党改憲案という。)から

読み取れる徴兵制と、見事にリンクしていることが判った。

 

●自民党、改憲への道:

1955:自民党結党時の党是に改憲が盛り込まれた。


2006.09.26.第一次安倍内閣、

一時、体調不良で降板したが、

2012.12.22.第二次阿倍内閣以降、長期政権を続けている。


その安倍首相は、

2007年1月の施政方針演説で

「戦後レジーム」からの脱却を述べ、

首相官邸HPで次のように改憲の意味を明かしている。

 

「憲法を頂点とした行政システム、

教育、経済・雇用、国と地方の関係、

外交・安全保障などの基本的枠組みの多くが、

21世紀の時代の大きな変化について行かなくなっていることは、

もはや明らかです。」


そして、最後の改憲へ向けて、

着々と法改正、立法を行ってきた。

 

教育については、

2006.12. 教育基本法の改定、

経済・雇用については、2012.12. アベノミクスの実施、

行政システムについては、2014.06. 内閣人事局誕生、

すなわち官邸主導(これがモリ・カケ問題等を引き起こしているのだろう)、

そして外交・安全保障については、

2015.09. いわゆる“安全保障関連法“の成立

(これが自民党改憲案の一部前倒しに相当することは後述する)。

 

国と地方の関係については、

道州制を考えているのかもしれない。


最後に残るのが頂点である憲法の改正である。

2010.05.には国民投票法を成立させ、

2012.04.に自民党改憲案を発表したのである。

その改憲案から読み取れる徴兵制についてつぎに述べる。

 

● 自民党改憲案から読み取れる徴兵制:

前文:日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、、、

国家を形成する。


9条の三:国は、主権と独立を守るため、

国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、

その資源を確保しなければならない。


12条:国民は、、、常に公益に、、、反してはならない。

これを読み解くと次のようになる。

 

「主権と独立を守るため、領土、領海及び領空を保全し、

その資源を確保する」という「公益」のために、

国が「国民に協力」を求めれば、

「日本国民は、国と郷土を自ら守る」ため、「公益に反してはならない」。


法律で形式さえ決めれば、

容易に強制的な徴兵制が可能である。

 

●  時を同じくして徴医制が・・・:

徴兵制が読み取れる自民党改憲案の決定が

2012年4月27日である。

 

前後して出てきたのが、

すでに報告(1,2)した徴医制である。

流れを纏めると次のようになる。


2012.03.金澤一郎 元・日本学術会議会長が講演

「これまでの医療、これからの医療」のなかで、

「全員加盟の医師職能集団」を発表した。

 

2013.08. 日本学術会議は報告書を発表、

そのタイトルが「全員加盟制医師組織による専門職自律の確立」である。

 

2014.06.医療法の改定。

第5章・医療提供体制の確保は次のようになっている

(条項は2016.05改定のもの)。


30条の3:厚生労働大臣は、「基本方針」を策定。


30条の4:都道府県知事は、その地域の「医療計画」を策定。


31条:公的医療機関の開設者、管理者及び医療従事者は、

「医師の派遣」などに協力するよう努めなければならない。


35条:厚生労働大臣又は都道府県知事は、

公的医療機関の開設者又は管理者に、次を命ずることができる。


三:救急等確保事業に関する医療の確保。

(救急等確保事業の内容は以下のとおりである)


30条の4の五:救急等確保事業:救急、災害時、へき地、周産期、小児・小児救急など

そこに読み取れる徴医制についてまとめると次のようになる。


厚生労働大臣又は都道府県知事が、

「救急等」の医療確保のために、

「公的医療機関」からの「医師の派遣」を命じることができる、

これは「一部の徴医制」と言うことになる(1,2で述べた)。

 

さらに、厚生労働大臣(国)が、

「戦闘地域の救急等」の医療確保のために、

全員加盟制医師組織に、「医師の派遣」を命じることになると、

「完全な徴医制」が出来上がる。

国はそこまで準備しているのだ。


自衛隊を、集団的自衛権も可能な国防軍へと改憲し、

そして「強い国」日本を目指す、

それが『日本の決意』だと安倍首相はいう(4)。

 

そのために徴兵制、徴医制を準備しているということだ。

安倍首相は改憲をなぜ急ぐのか、つぎにその理由を述べる。

 

●  違憲・反立憲といわれる“安全保障関連法”を合憲にしたいから:

自民党に「高村理論」と言うものがある(5)。

 

それは「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」した場合の集団自衛権、

すなわち「日本のための集団的自衛権」は合憲とする理論だ。

 

この理論には矛盾がある。

それは、「武力行使の三要件の3:必要最小限の実力行使」との矛盾である。


たとえば、米軍に対する武力攻撃が発生した場合、

それには当然、米国自身の自衛のための実力行使が行われるだろう。

 

ここが高村理論に欠ける認識である。

米国の自衛のための実力行使と、

「日本のための集団的自衛権」としての

自衛隊の実力行使は「一体」となるだろう。

すなわち「必要最小限の実力行使」が定められない、という矛盾である。


2014.7.1. 矛盾ある高村理論に基づき

「武力行使の新三要件」が閣議決定された。

 

これは矛盾ある理論に基づく憲法解釈となり違憲である。

 

2016.3.29. それに基づく“安全保障関連法”が施行された。

これは違憲の法律、すなわち反立憲である。

 

2016.11.18. 南スーダン派遣自衛隊に

「駆けつけ警護」など「新任務」が命令された。

 

しかし、内戦が再燃し、

あわや隊員に死傷の危険もおよび、

「任務完了」という口実(?)で急ぎ撤退させた。

 

2017.5.3. 撤退ほぼ完了した時点で、

「憲法9条の第2項を残しても自衛隊明記を」という、

安倍首相の改憲急げ発言が出てきたのだろう。

 

●  もし、自衛隊(国防軍)が合憲になれば・・・

中国との軋轢がたかまり、

とくに尖閣諸島の領有権問題がこじれるだろう。

 

この問題は、日中共同声明(1972)前の

田中角栄・周恩来会談で「棚上げに」することとなった。

 

しかし、日本が国有地化したことで、

中国も動き出している。

 

国連憲章の敵国条項を批准していない中国が相手である。

どうしても日本は軍拡、

軍事費膨張を強いられることになるだろう。

もうすでに起きている。


さらに、米軍との共同軍事行動をとるようになればどうだろうか、

America first.で日本兵に多数の犠牲者がでるだろう。

少子高齢化、人口減少期の国内問題がさらに深刻になるだろう。


いずれにしろ、日本経済を圧迫することは必然であり、

また徴兵制、徴医制も現実になるのだ。

 

憲法改正のための国民投票は、

日本でほぼ唯一の、直接民主主義である。

 

ひとりひとりが自民党改憲案を吟味してほしいものだ。

 

 

(1)「専門職自律の確立」、実は「徴医制(全員強制加入・懲罰機能を持つ医師会制度)」: MRIC Vol. 314. 2013.12.26.
(2)現場の医師から見た医療法改定の意味:(2の2):MRIC Vol.051. 2015.3.17.
(3)平岡諦著『憲法改正 自民党への三つの質問、三つの提案』:212p、2017
(4)安倍晋三著『日本の決意』、2014
(5)高村正彦、三浦瑠璃著『国家の矛盾』、2017

 

 

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