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断眠療法(覚醒療法)の効果と特徴

2018/08/12

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

断眠療法(覚醒療法)の効果と特徴

 

「一夜漬けで睡眠削って勉強してたら頭がさえてくる」


「徹夜で遊んでいたらテンションがあがってくる」

 

そんな経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。

このような感覚は間違いではなく、断眠が続くと気分が高まります。

 

日本ではあまり治療法としては知られていませんが、

断眠療法として治療のひとつとして行われている国もあります。

最近は覚醒療法とも呼ばれます。

 

ここでは、うつ病治療における断眠療法(覚醒療法)について

お伝えしたいと思います。

 

ただし、断眠療法は必ず専門家の管理の下で行ってください。

 

断眠療法 覚醒療法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.断眠療法の特徴とは?

<メリット>

  • 治療効果が早い
  • 有効率も高い
  • 副作用が全体的に少ない

 

<デメリット>

  • 効果が持続しない
  • 抗うつ剤と同程度に躁転する
  • けいれんを引き起こす
  • 断眠翌日の眠気がつらい

 

不眠が続くうつ病患者さんの中に、

症状が劇的によくなることがあることは古くから知られていました。

 

それを治療法としたのが断眠療法です。

 

断眠というと「患者さんを眠らせない」という

ネガティブなイメージが強いので、

現在は覚醒療法ともよばれています。

 

断眠療法が有効であった患者さんは60%と、

抗うつ剤とほぼ同等です。

しかも効果がみられるのが早いというメリットがあります。

 

しかしながら効果が持続せず、

その後に睡眠をとってしまうと

80%の方が症状を再燃してしまいます。

 

このような治療なので断眠療法だけでは意味がありません。

効果を持続させてくれる薬物療法や

光療法などを組み合わせて治療をしていきます。

 

その他の問題点としては、

躁状態になってしまう躁転が約10%みられ、

抗うつ剤と同程度に躁転させてしまいます。

 

けいれん発作を引き起こすことがあるので、

てんかんの患者さんでは行えません。

そして、眠気がつらいのは言うまでもありませんね。

 

このような副作用がみられますが、

総じて副作用は低く、安全性の高い治療法です。

 

2.断眠療法の方法

全断眠を基本として、

早く起きる後半部分断眠を行うこともあります。

回数が多いほど、抗うつ効果は増強されます。

 

断眠療法は、決して自己判断で行ってはいけません。

 

上述させていただきましたが、

効果の持続が短い治療法です。

効果を持続するための対策をとりながら行っていかないと、

負担が大きいだけになります。

 

さて、断眠療法は実際にどのようにすすめていくのでしょうか。

断眠の方法には、以下の3つの方法があります。

 

  • 全断眠
  • 部分断眠
  • 選択的REM断眠

 

基本は夜間に全く眠らない「全断眠」になります。

患者さんの負担が大きい場合に、「部分断眠」が行われます。

 

部分断眠では睡眠の前半に断眠するよりも、

後半に断眠する方が効果が高いことが分かっています。

早く就寝して、1~2時に起床するようにしていきます。

 

選択的REM断眠は、主に研究目的で行われます。

脳波をとりながら、

REM睡眠になったら起きるようにしていきます。

 

全断眠の方が効果的ではありますが、

部分断眠でもほぼ同様の効果が期待できます。

 

選択的REM断眠でも同様の効果が期待できます。

REM睡眠は睡眠の後半になるにつれて多くなるので、

REM断眠と抗うつ効果には何らかの関係があると考えられます。

 

断眠の回数は、週に1回よりも2回の方が効果的で、

回数が多いほど抗うつ効果が増強されます。

その後の効果の持続もよいことがわかっています。

 

断眠中はテレビをみたり、

何らかの作業をして起きて過ごします。

 

夜間の断眠はもともと不眠傾向の方が多く、

そこまでつらいことはありません。

むしろ翌日の眠気が大変です。

 

ここでお昼寝をしてしまうと抗うつ効果が弱まってしまうので、

散歩をしたりして眠気を紛らわす必要があります。

 

3.断眠療法の効果を持続させるためには?

薬物療法、光療法や位相前進療法などを併用していきます。

また、次の夜やその次の夜の睡眠時間を短くすれば、

効果の持続につながります。

 

断眠療法の効果の全体的な特徴としては、

以下の3つの特徴があります。

 

  • 効果が早い
  • 抗うつ剤と同程度の高い有効率
  • 効果が持続しない

 

断眠は非常に効果がすぐに期待できる治療法ですが、

一時的によくなっても効果が持続しないのでは意味がありません。

いかにして断眠の抗うつ効果を維持させていくのかが重要です。

 

断眠の効果を持続させるためには、

大きく3つのアプローチのどれかを併用します。

 

  • 薬物療法
  • 光療法
  • 位相前進療法

 

薬物療法としては、

うつ病であれば抗うつ剤を使っていきます。

 

断眠の抗うつ効果維持に効果があると確認されているものとしては、

トリプタノールやアナフラニールなどの三環系抗うつ薬、

日本では未発売のフルオキセチンなどがあります。

 

双極性障害ではリーマスの有効性が確認されています。

甲状腺ホルモンも、断眠効果の維持に有効です。

 

光療法とは、朝方に強い光を浴びせることで

体内時計のリズムを整えていきます。

 

位相前進療法とは、

睡眠の時間帯を夜の18時就寝し2時起床とするなどのように、

前倒しします。

 

詳しく知りたい方は、

「高照度光療法の効果と特徴」をお読みください。

 

また、断眠療法を行った次の夜や

その次の夜の睡眠時間を短くすれば、効果持続に有効です。

 

4.断眠療法の副作用

翌日のつらさは当然ですが、

けいれんを誘発したり、

躁転させてしまうことがあるので注意が必要です。

 

断眠療法の副作用は全体的に見ると少ないです。

しかしながら、以下の3つの副作用がみられます。

 

  • 断眠翌日の眠気やだるさ、頭痛がつらい
  • けいれんを起こしやすくなる
  • 躁転してしまうことがある

 

断眠をした翌日は、当然眠気やだるさが強くなります。

そして頭痛がみられることもあります。

 

徹夜したことがある方ならお分かりいただけると思いますが、

これはあくまで一過性です。

しばらくすると治ります。

 

断眠療法が病気を悪化させてしまうものとしては、

けいれん誘発と躁転のリスクがあげられます。

 

脳が興奮しやすくなるため、

断眠療法にはけいれんのリスクがあります。

このため、てんかんの患者さんではNGです。

 

ときに躁転してしまうことがありますが、

抗うつ剤と同程度の10%ほどと考えられています。

ですが躁転リスクがあることは理解して使っていく必要があります。

 

5.断眠療法が向いている人とは?

  • 入院治療中の双極性障害の方
  • 薬で効果が不十分なうつ病の方
  • うつ病の治療早期の方
  • 治療意欲がある方(重症でない方)

 

それでは、どのような方に

断眠療法が向いているのかを考えていきましょう。

まずは純粋に断眠療法の治療効果だけを考えていきます。

 

  • 双極性障害>内因性うつ病>心因性うつ病
  • 若者
  • 気分に日内変動がある方(朝が不調で夕方に改善)
  • 早朝覚醒を認める方
  • 断眠前に活動量が多い方

 

このような方で、効果が高いと言われています。

症状としては、抑うつ気分や興味の喪失、

思考力低下などに改善効果が期待できますが、

身体症状にはあまり効果がみられないです。

 

これを踏まえて、

どのような人に断眠療法が向いているのか、

考えていきましょう。

 

効果だけを純粋にみれば、

双極性障害の患者さんに向いている治療と言えます。

 

ですが躁転のリスクもあるので、

双極性障害Ⅰ型では特に、

入院治療中が望ましいといえます。

 

躁転率も抗うつ薬と同程度と考えられていますので、

外来でできないこともありません。

 

ですが治療経験の乏しい日本では、

外来で断眠療法を行うには勇気がいります。

 

とはいえ双極性障害のうつ状態に効果のある薬が少ないので、

有効なひとつの方法には違いありません。

 

抗うつ剤で治療するも効果が不十分であった方には、

断眠療法を試してみる価値があります。

 

薬物療法の効果が期待できるのはおよそ7割なので、

3割の方には抗うつ剤が効きません。

そのような患者さんのうち、

4~6割で有効であったという報告が認められます。

 

また、うつ病の治療早期に断眠療法を併用していくことが

有効であるとの報告があります。

 

抗うつ剤は効果が出てくるまでにしばらく時間がかかります。

断眠療法は効果が早いですが持続しないという特徴があります。

 

抗うつ剤を併用することで効果の持続させることができるので、

うつ症状の回復が早まります。

 

ただしこの治療は、確実にうつ病と診断がつく方でしか行えません。

抗うつ剤に断眠療法を併用することで、

躁転率がかなり高くなってしまいます。

 

最後に、断眠療法は患者さんの意志が重要になる治療法です。

重症の患者さんでは自発的に治療することもできません。

 

また、妄想などの精神症状がある患者さんでは、

妄想も精神症状も悪化することが分かっています。

断眠療法は、重症の方には行いにくい治療になります。

 

6.断眠療法がどうして効果があるの?

断眠療法がどうして効くのかは、

現時点ではわかっていません。

 

断眠療法がどうして効果があるのでしょうか?

そのメカニズムは、現時点ではっきりとわかっていません。

 

現在考えられている断眠療法の仕組みとしては、

以下のようなものがあります。

 

  • 断眠によりモノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)が増加する
  • 断眠で甲状腺ホルモンが増加して気分がもちあがる
  • 断眠によりBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加し、脳神経の新生が活発になる
  • 断眠によりグルタミン酸受容体作用が抑制されて、気持ちが穏やかになる
  • 断眠により体内時計のリズムが整う

 

などと考えられています。

 

まとめ

<メリット>

  • 治療効果が早い
  • 有効率も高い
  • 副作用が全体的に少ない

 

<デメリット>

  • 効果が持続しない
  • 抗うつ剤と同程度に躁転する
  • けいれんを引き起こす
  • 断眠翌日の眠気がつらい

 

 

 

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