寝苦しい真夏の「快眠術」 赤ちゃんも大人もぐっすり眠れる2つの方法
2018/09/08
カテゴリー医師からの情報発信
*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。
この原稿はAERA.dot(7月11日配信)からの転載いです。
https://dot.asahi.com/dot/2018070900015.html
森田麻里子
2018年8月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、
2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム
「ちょっとだけ医見手帖」。
寝苦しい夏の睡眠、
そして赤ちゃんの寝付きについて、
自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。
* * *
夏になると、お子さんの寝付きが悪くなったり、
早朝に起きてしまうというお悩みが増えてきます。
そしてお子さんだけでなく、
ママ・パパも同じようなお悩みがあるかもしれませんね。
季節ごとに変わる温度や光は、
睡眠にも大きな影響を与えています。
まず、温度についてです。
特に赤ちゃんは、眠くなると手足がぽかぽかしてきます。
これは、体の表面の血管が広がって熱を逃し、
体の中心部の温度を下げている状態です。
このようにして、体温が急激に下るときに眠気が強くなるのです。
この特性を利用して、
お風呂に入って体を温めることで、
その後の体温の下がりがよくなり、
睡眠が改善することがわかっています。
ハーバード大学マックリーン病院の研究者たちが、
1996年に行った研究をご紹介しましょう。
60~72歳の不眠症の女性9人を対象に、
就寝時間の1時間半前にお風呂につかってもらいました。
お風呂の温度は、
40~40.5℃と、37.5~38.5℃の2パターンで、
つかった時間は30分です。
脳波を計りながら眠ってもらったところ、
熱いお風呂に入った日のほうが、
夜間の覚醒も少なく、深い睡眠が増えたことがわかりました。
このような研究から、
大人は眠りにつく1時間半前の入浴が勧められることが多いです。
子どもも基本的なしくみは
大人と変わらないと思いますが、
体格の差から、
子どもは大人より体温が上がりやすく
下がりやすい傾向にあります。
赤ちゃんでしたら、
お風呂の温度は38℃前後のぬるめにして、
つかる時間も数分で十分でしょう。
入浴後に体温が下がるまでの時間も、
大人より短いと考えられます。
お風呂から上がって、
30分から1時間程度で就寝にすると、
ちょうどよさそうです。
寝室の温度については、
アメリカ睡眠財団は18〜19℃を推奨しています。
温度を厳密に測る必要はありませんが、
体温がスムーズに下がるよう、
少し涼しいくらいがよいと思います。
息子が3、4カ月だった頃は、
エアコンを付けて寝ると
風邪を引くんじゃないかとか心配するあまり
汗びっしょりにさせてしまっていましたが、
赤ちゃんは暑いのが苦手です。
風が当たらないように調整して、
エアコンを付けてあげたほうが良いでしょう。
とはいえ、日本の夏に、
室温を19℃まで下げるというのは現実的ではありませんね。
クーラーの設定温度は26~27℃くらいにして、
パジャマを夏用の薄いものにするなど、
暑くならないよう調節してあげるとよいでしょう。
また、日が長いこの時期は、
早朝に寝室が明るくなってしまいます。
光は睡眠を浅くする効果があり、
明るい寝室で眠ると、目を覚ましやすくなります。
1981年に奈良女子大学の研究者たちが行った研究では、
3人の女性に、様々な暗さに調節した部屋で寝てもらい、
その間の脳波を測定しました。
その結果、寝室の明るさが30ルクス以上になると、
特に起床前2時間の睡眠が浅くなることがわかりました。
2013年に韓国で行われた研究でも、
4人の女性を対象に、
40ルクスのライトをつけた場合とつけない場合での
睡眠深度を測定しています。
その結果、ライトがついていないグループと
ついているグループでは、
ステージ1の浅い睡眠がそれぞれ8.6%と10.2%、
ステージ3・4の深い睡眠がそれぞれ15.1%と11.3%となり、
やはり睡眠が浅くなることがわかりました。
30ルクスというのは、
なかなか言葉で伝えるのは難しいですが、
物影がうっすら見える程度、
間接照明がついた薄暗い寝室、くらいの明るさのようです。
その程度の明るさでも、睡眠が浅くなってしまうのですね。
日当たりの良い部屋だと、
遮光カーテンをつけていても、
朝方はそのくらいの明るさにはなってしまうと思います。
遮光カーテンは1級遮光のものを使い、
カーテンの上下左右から漏れる光もふさぎましょう。
それでもだめなら、完全遮光の窓用シートを使うのもおすすめです。
温度と光に注意して、夏も快適な睡眠をとりましょう。
◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。
2012年東京大学医学部医学科卒業。
12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。
16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。
17年3月に第一子を出産。
小児睡眠コンサルタント。
Child Health Laboratory代表