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痰はどうして出るのか?喀痰の原因と病気の見分け方

2018/12/09

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

痰はどうして出るのか?喀痰の原因と病気の見分け方

 

痰がなかなか切れないと、

スッキリしない感じが続きますよね。

咳や鼻水と並んで、痰は辛い症状のひとつだと思います。

 

このような痰ですが、

医学用語では「喀痰(かくたん)」と書きます。

 

出しても出してもあふれてきますし、

人によっては痰が出せずにかなり胸に不快感が残ってしまいます。

 

「痰を出そうとするから咳が出るんだ」と

おっしゃる方も多いかもしれません。

 

そもそも痰がなんで出るのでしょうか?

どんな理由ででるのでしょうか?

 

ここでは、喀痰の原因について考えてみたいと思います。

痰の性状から、どのような病気が考えられるのかもみていきましょう。

 

喀痰の原因

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.痰ってどんなもの?

気管支などの肺、咽頭、喉頭などから出てくる

泌物と定義することが多いです。

 

痰とはそもそもなんなのでしょうか?

 

医学的に痰をさす場合は

『呼吸器系で作られた粘液物や異物。多くは気管、気管支などの肺からだが、
 咽頭、喉頭の分泌物も含める』

と定義されます。

 

もともと痰は、正常な人にも作られています。

気管支などにある杯細胞などから粘液物がでてきて、

肺の中をきれいにしています。

 

杯細胞が出した粘液物をゴミとしてまとめたのが痰になります。

 

実は痰として肺や咽頭で作られたゴミは、

少ない場合は食道の方に落ちていきます。

 

食道は胃につながっているため全く問題になりません。

ただしこの痰の量が増えて咽頭から口に溜まる場合が、

喀痰として症状となって表れます。

 

ここで大切なのは、「鼻水」や「唾(つば)」は含まれません。

言われてみたら当たり前と感じるかもしれませんが、

実際に線引きはかなり難しいです。

 

特に唾と痰の違いは、かなり曖昧です。

 

患者さんからの訴えで調べてみたら

ネバネバした唾だった…ということは実は良くあります。

 

痰を調べる時には、Miller & Jones分類で痰の性状をみていきます。

 

具体的には、

  • M1・・・唾液
  • M2・・・粘性の中に膿性が一部含まれる
  • P1・・・膿性で膿性部分1/3以下
  • P2・・・膿性で膿性部分1/3~2/3
  • P3・・・膿性で膿性部分2/3以上

となっています。

 

M痰、P痰といいますが、

Mは検査としては不適ということになります。

つまり患者さんが痰として出したものが唾だった場合は少なくないのです。

 

また、Geckler分類といって、

気管支や咽頭にある上皮細胞や好中球といった

細胞の数で痰の状態を見る場合もあります。

 

この時上皮細胞や好中球がほとんどない場合は唾となります。

唾がベタベタしているのを痰と誤認することはよくあることです。

 

ただしM痰が一回出たからといって、

痰じゃないとは言い切れません。

 

沢山痰が出ているのに、

1回検査の検査だけで全てを否定するのはちょっと乱暴だと思います。

 

医学的には唾や鼻水以外の咽頭や肺の分泌物となっていますが、

患者さん側からすると口の中にあるねばねばしたものを

痰ととらえて良いかと思います。

心配でしたら、病院で調べてもらいましょう。

 

2.痰ってどうして出てくるの?

異物を外に出そうとする防御反応の場合と、

どこかから液体物が漏れ出ている場合の2つが考えられます。

 

上記のように痰は

咽頭や肺から出てきた粘液物と考えられています。

どうしてこういった粘液物が出てくるか考えてみましょう。

 

大きく分けて2つの原因が考えられます。

  1. 異物が体に入ってきたのを粘液物で絡めとって外に出す防御反応
  2. 気管支や咽頭のどこかから粘液物が漏れ出ている

の2つが考えられます。

 

具体的にそれぞれ見てみましょう。

 

2―1.防御反応による喀痰とは?

まず防御反応による喀痰の場合です。

風邪や肺炎など、多くの場合はこちらになります。

 

ばい菌が侵入した場合、

戦わないとやられっぱなしになってしまいます。

細菌と戦う主な細胞は白血球です。

 

体の中の自衛隊ともいうべき白血球は、

ばい菌を見つけると戦いにきます。

 

白血球は戦いになるとサイトカインといわれる炎症物質をばらまきます。

 

この炎症物質が、

  • 傷ついた気道の表面(上皮細胞)の剥離
  • 粘液物質の産生
  • 白血球のさらなる増援

などの作用が起こります。

 

基本的にばい菌が入ってきた場合は、

やっつけるまでこの戦火が起こるのです。

 

そのため喀痰の中には、

  • ばい菌や細菌
  • 傷ついた気道表面
  • やられた白血球

などが集められてゴミとして集められて喀痰として出ていきます。

 

痰がでている人は、

自分の体が頑張って戦ってるんだと感じてくれればと思います。

 

ただしここで大切なのは、

「細菌やウィルスなどのばい菌」だけではなく

「異物」が侵入した際の防御反応と記載したことにあります。

 

つまり喀痰が出る原因は、ばい菌だけではないのです。

  • タバコによるタールなどの化学物質
  • 花粉症などの抗原物質

も異物として扱われています。

 

タバコで痰が出続けることで分かりやすいのが、

肺気腫(COPD)という病気です。

 

「タバコを吸ってると痰がでるのは当たり前」と

思ってる人も多いとは思います。

 

それでは、タバコを吸ってる人は何で痰が出続けるのでしょうか?

 

実は体がタバコの煙を嫌がって、

痰としてタバコの物質を外に出し続けているのです。

 

また、COPD自体肺の防御力が低下しているため、

頻回にばい菌に感染している可能性もあります。

 

もう一つの抗原物質ですが、

これはアレルギーの原因になる物質のことです。

 

分かりやすくいうと喘息になります。

アレルギーになり得る物質を体内に吸収することで、

体が嫌がって痰として出続けるのです。

 

このように防御反応による喀痰=風邪と決めつけてはいけません。

 

2-2.気管支や咽頭のどこかから粘液物が漏れ出ている喀痰とは?

大部分の場合が防御反応による喀痰ですが、

一部は肺や咽頭から漏れ出ている場合があります。

漏れ出ている場合の多くは、赤い痰(血痰)の場合かと思います。

 

咳のしすぎや、炎症によって

気管支や咽頭が傷ついて血がにじみ出て血痰が出ている場合は良いのですが、

怖い病気が隠れていることもあります。

 

例えば、病気が血管を傷つけて漏れ出ていることがあります。

可能性がある病気のうちで最も怖い病気は、肺癌です。

 

肺癌が気管支動脈などまで浸潤してしまうと、

出血するリスクがあります。

 

肺癌がいきなり血管を破って大出血することは極めてまれです。

ただし血痰を放っておくと、喀血といって大出血をきたします。

 

この状態を喀血といいます。

 

血が肺内から噴き出た場合は、

実は止めることはかなり難しいです。

 

例えば腕の傷口から血が出たら、

皆さんどうするでしょうか?

 

多くの人は傷口を抑えるかと思います。

一番の止血方法はこの圧迫止血なのですが、

肺内ですと出血源を抑えることができません。

 

基本的には、

  1. 止血剤を投与
  2. 出血源の気管支をカテーテルで止める
  3. 気管支内視鏡で止める
  4. 手術する

となりますが、

②~④は特殊な施設ですかできないですし、

大喀血している時は基本的に呼吸状態も安定しないためできません。

 

まずは止血剤を投与しますが、

癌を治す治療ではないのでほとんど効かない場合が多いです。

そのため血痰は、絶対に放っておいてはいけない病気です。

 

ただし血痰=肺癌と決めつけるのは早計です。

血痰を調べて肺癌だった人は、全体の10%です。

 

他に血痰が出る原因としては、

  1. 肺自体がもろくて出血しやすい(気管支拡張症・結核後遺症)
  2. 血管から水が漏れ出ている(心不全・うっ血肺)
  3. ばい菌が感染した(結核・非結核性抗酸菌症・カビ)
  4. 特殊な病気(グッドパスチャー症候群・血管炎症候群)

などがあります。

 

3.痰の性状と原因は?

痰の性状だけで診断するのは難しいです。

痰が長引く場合は、レントゲンを撮りましょう。

 

痰って一言で言っても、

さらさらしたものや粘っこい痰など色々ありますね。

 

教科書的には以下のように分けられています。

 

性状 特徴 主な疾患
膿性

粘り気がある痰色は、

黄色・白混濁・緑など固いことが多い

  • 細菌性肺炎・気管支炎
  • 慢性気管支炎
  • 副鼻腔炎
  • カビ
  • 気管支拡張症
  • COPD
漿液性

さらさらとしている痰

透明~白色泡状のことが多い

  • ウィルス性
  • 気管支喘息
  • 肺胞上皮癌
淡血性 ピンクの痰泡状のことが多い
  • 心不全
  • 肺水腫
血痰

痰の中に血が混じる

点状、線状、 泡状色々あり

  • 結核
  • 非結核抗酸菌症
  • 肺癌
  • 肺動静脈奇形
  • 気管支拡張症

 

これらは、呼吸器内科専門医テキストに書かれているものを簡略化したものです。

  • 緑色なら緑膿菌
  • さび色なら肺炎球菌

など細かく色によっても記載されています。

 

良くテレビでは名医と呼ばれる人が、

痰の色や性状、臭いでなんの菌か言い当てるということがあります。

 

このように特徴があるのです。

ただしこれらはあくまでも参考です。

 

多くの専門テキストでは、

  • 膿性でもウィルス性のことがあり得る。
  • 漿液性でも細菌性のことがあり得る。
  • 喘息でも膿性のことがあり得る。

と分類はしていても、

確定はできないことが記載されています。

 

また血痰も、細菌性やウィルス性で咳のし過ぎで

気管支が傷ついてにじみ出て血痰になることが良くあります。

 

そのため、

「黄色の痰だから細菌性だよ、ばい菌やっつける薬を使おう」

「さらさらした痰だからウィルス性だよ、様子見てて大丈夫」と

痰の性状だけで決めつけはかなり危険です。

 

痰の性状で細かい病気が書かれていると、

心配になってしまうかもしれません。

 

まずは、

  • 急激に痰がでてきた
  • ずっと痰が続いている

といった発症時期に注目すると良いと思います。

 

急激に痰がでた場合は、

「細菌性・ウィルス性」含めた風邪の症状が多いです。

 

まずは様子をみても良いかもしれません。

一方で痰がずっと出ている人は、

ただの風邪が長引いているで終わらせるのは危険です。

 

上の表を見れば、怖い病気もちらほらと記載されています。

一番心配なのが肺癌でしょう。

 

「血痰じゃないから肺癌ではない」といったように、

鵜呑みにしてはいけません。

 

膿性や漿液性の痰を主訴に肺癌を見つかった人も大勢います。

その他の病気も、結核だと人に移してしまいますし、

カビだと悪化すると完治するのが難しくなってしまいます。

 

そのため痰が長引く場合は、

必ず病院機関を受診しましょう。

 

最低限レントゲンは取るべきです。

上にあげた病気のうち、

レントゲンを撮れば8割から9割は鑑別することができます。

 

その他、COPDや喘息など

レントゲンだけでは診断できない病気も含めて、

しっかりと診断することが大切です。

 

まとめ

  • 痰は肺、咽頭、喉頭などから出てくる分泌物です。

  • 痰は防御反応による場合と漏れ出ている場合の二つの可能性が考えられます。

  • 痰の性状だけで診断するのは困難です。

  • 痰が長引く人は一度病院でレントゲンを撮ってもらいましょう。

 

 

 

 

 

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