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トビタテの留学で出会った人々とのつながり ~ボストン&ケンブリッジ滞在記~

2018/12/22

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

越田航平

2018年12月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師海外留学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は大学院生で、

薬学研究科に進学し消化管免疫の研究の指導を受けている。

 

未知の生命現象を明らかにしていく基礎研究にやりがいを感じる一方で、

科学技術の急速な発展により、

日本や世界がこれからどう変わっていくのかにも興味があった。

 

英語に自信がないこともあって、

これまで海外に滞在したことがなかったが、

「トビタテ!留学JAPAN」の募集を見て応募し、

あえて無防備で飛び込んだ英語圏のボストンで、

周囲に助けられながら有意義な2ヶ月半を過ごすことができた。

 

「トビタテ!留学JAPAN」は、

文部科学省の運営する官民協働の留学促進プログラムで、

自分で留学をデザインし、

プレゼンや面接に合格すれば、

支援企業から実現のために必要な奨学金を得られる。

 

事前研修も充実しており、

一緒に合格した仲間たちとそれぞれの計画について共有することで、

自身の目的をより明確にできる。

 

2012年にスタートして以来、

毎年1000人近くの学生たちが世界各地へ飛び立っている。

 

私が渡航先にボストンを選んだのは、

学術機関と企業が集結し、

活発にイノベーションが起こっている街だからだ。

 

高校時代の先輩がホームステイ先として紹介してくれた大西睦子先生は、

医師として日本で臨床と研究に携わった後にボストンに留学し、

現在はご主人のラリーさんとボストンに隣接するケンブリッジで生活している。

 

医師としての経験を生かし、

アメリカの社会問題や日本との医療制度の違いなどを

メディアを通して日本に発信しながら、

ご主人とともに日本からの留学生と地域の人々と食卓を囲み、

日本とケンブリッジをつなぐ架け橋となっている。

 

このような環境で

初めての留学を経験できたことはとても幸運だったし、

人としての魅力にあふれるお二人からは、

語学や研究を超え、様々なことを学ぶことができた。

 

インターン先のVedanta Biosciencesは

ケンブリッジにある創薬ベンチャーである。

 

私の研究テーマの一つは腸内フローラと消化管免疫の関係性だが、

潰瘍性大腸炎やクローン病といった難治性の消化器疾患は、

根本的な治療法が確立されていないうえに、

どの治療薬にも強い副作用が伴う。

 

そこで、健康な人の便から腸内細菌を採取し、

単離・培養してフリーズドライするという

新しい発想でアプローチしているベンチャーがあると知って興味を持った。

 

カプセル状の経口薬を服用することで

腸内環境を改善するという画期的な方法は、

副作用の軽減だけでなく、

食物アレルギーなどにも広く効果が期待され、

いま世界中から注目されている企業の一つである。

 

インターンでは経営部門の中で

研究戦略を考えるプロジェクトに参加させてもらったが、

先行研究の調査をしたり、

発症メカニズムを体系化して

腸内フローラを変化させるアプローチが有効となるターゲットに関し、

私自身の研究経験をもとにディスカッションしたりと、

学生の私は大いに刺激を受けた。

 

Vedanta のCEOのBernatは、

マサチューセッツ工科大学(MIT)で

PhDとMBAの学位を取得し、

ベンチャーキャピタルに勤める中でVedantaを立ち上げた人物で、

30代という若さで80人近くの社員をまとめている。

 

科学技術の最先端に常にアンテナを張っていて、

最新の論文を読むだけでなく、

実際に研究機関に足を運び、

研究現場を視察している彼は、

私のたどたどしい英語での研究領域の説明にも真剣に耳を傾けてくれた。

 

経営部門のボスであるJustinも、

ビジネススキルだけでなく、

大学院で生命科学を研究していた経験がある。

 

理系出身の人材が経営陣に多いことは、

最先端の科学技術をビジネスにつなげる上で大きな強みであると感じた。

 

働き方も、日本の感覚とは大きく異なっていた。

毎週の全体ミーティングは会社が用意した軽食を食べながら、

社員の様々な要望や、

社内のハロウィンイベントの企画などについて、

全員が部署や立場に関係なく、フランクに意見を交わす。

 

また社員は勤務時間中でも家族と連絡を取り合い、

夕方には仕事を終えて帰宅するので、

女性もごく自然な形で仕事と子育てを両立していた。

 

さらに頻繁に新メンバーが加わり、

メガファーマで研究をしていた人や国家機関に勤めていた人など、

さまざまな国籍やキャリアを持つ社員がそれぞれ力を発揮していることも、

画一的に映る日本の企業とは全くイメージが違うものだった。

 

インターンに少しずつ慣れた頃から、

私はボストンで毎週月曜日の早朝に開催されている

日本人交流会に参加するようになった。

 

「ロングウッドで朝食を」と名付けられたこの朝食の会では、

多様な職種の人が、

ロボットのリハビリテーション現場への参入や、

アメリカでの起業を支援するMBAネットワークの紹介など、

お互いの専門領域でホットなトピックに関して語り合い、

分野を超えた情報交換が行うことでお互いの知見を広げていた。

 

ボストンで有名なMITの大学院に留学中の日本人留学生とは、

Japanese Association of MIT (JAM)という団体の中で

交流を持つ機会があった。

 

彼らが目指すPhDの学位は日本とは違って社会から高く評価され、

研究職やコンサルタントなどのクリエイティブな職種では優遇され、

給料も大きく異なるため、

卒業後もアメリカに残って就職を考えていると話していた。

 

またボストンにはやはり医学系分野で留学している人が多い。

マサチューセッツ総合病院(MGH)で

皮膚の研究をしている川上聡経先生のように、

海外日本人研究者ネットワーク(UJA)という団体の運営に携わり、

レールの敷かれた日本とは異なる進路を若手研究者に紹介する人もいて、

今回その活動についてお話を伺うことができた。

 

「トビタテ! 留学JAPAN 」 8期生の仲間たちは、

スイスで家庭用ロボットの研究を行う者から

デンマークで教育を学ぶ者、

アメリカで企業を学ぶ者、

中国で計算科学を学ぶ者、

ロシアと日本の架け橋となることを目指す者など様々で、

帰国してからもそれぞれの活動をSNS上で報告し合っている。

 

世界各国の文化や制度について知見を深め、

仲間たちと議論することができるのは、

またとても貴重な「トビタテ! 留学JAPAN 」の収穫であった。

 

最後に、今回のボストン留学にあたり協力してくださった

慶應義塾大学薬学部の長谷耕二先生、金倫基先生、

土肥多惠子先生、留学先でお世話になった方々、

そして応援してくださったすべての方に、

この場を借りて心より感謝したい。

 

 

◯参考文献
・トビタテ! 留学JAPAN

https://www.tobitate.mext.go.jp/program/index.html

・Vedanta Biosciences, Inc.

https://www.vedantabio.com/platform/how-our-drugs-work

・海外日本人研究者ネットワーク(UJA)

https://uja-info.org/about/

・Japanese Association of MIT (JAM)

http://web.mit.edu/jam/www/aboutJAM.html

 

◯プロフィール

越田航平

麻布高校卒業
東京理科大学 薬学部 生命創薬科学科卒業
慶應義塾大学大学院 薬学研究科 薬科学専攻 生化学講座 修士1年次在学中

東京理科大学管弦楽団 2016年度団長
トビタテ!留学JAPAN  第8期派遣留学生

 

 

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