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「君死にたまう事なかれ」 ~医師の過重労働は許容限度を越えている~

2019/01/15

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

つくば市 坂根Mクリニック
坂根みち子

2018年12月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師過重労働突然死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この半年で、身近にいる医師が3人突然死した。


一人は同級生で、

彼には中高大学生の子供が3人、

後輩にはまだ小さい2人の子供が残された。


遺族は哀しみの只中にいて、

グリーフケアを受けることもなく、

ひたすら耐え、

目の前の子供を育てることで精一杯の日々を過ごされている。

 

後輩の医師を研修医の頃から育ててきた直属の上司は、

忘年会の挨拶で、

人格者でもあった彼について語りながら、

言葉に詰まり、自分を責めた。

 

ご自身もずっと過重労働の中で、

たくさんの患者の命を救ってきたドクターである。


誰もが、やり切れない思いを抱えながら、

どこかに贖罪の意識を抱えながら、

それでも目の前の患者を救うために立ち止まることが出来ない。

そして、次は自分の番だと心の中では思っている。

 

一体これは、各医療機関で解決出来る問題なのだろうか。


奈良県立奈良病院産婦人科医師らが

「宿直は月8回以上、日直は通常勤務から連続で32時間以上」などという

過酷な勤務が常態化しているとし、

改善を求めて提訴し最高裁で勝訴したのが2013年。

 

訴訟はその後も繰り返され、

その度に医師側が勝訴しているが、

奈良県は、抜本的な解決は一地方団体では無理と言うことで

匙を投げている。

 

現在、全国の医師の1割は、

年間1920時間を越える時間外労働に従事している。

 

4割の医師は、

過労死基準の年間960時間を越える

時間外労働(週60時間を越える労働)をしている。

 

厚労省は、このような医師の働き方が、

全業種を通じて最大のブラック状態だと認めている。

 

ところが、自ら定めた労災基準(1)がありながら、

医師の時間外労働の上限について、

医師不足の地域などでは例外として年間1920時間、

月の平均に換算すると160時間まで認める方向だという。

12月13日NHKニュース(2)

 

このような恣意的な行政判断が許されるものなのだろうか。


厚労省の医系技官は、遵法精神が乏しいのか、

あまりに現場知らずなのか。

SNSが発達した今は昔と違う。

流石に医療現場には怒りの声が溢れている。

 

日本の医療界は、労働団体は無いに等しい。

現場の医療を守るべき日本医師会を始めとする各医療団体は、

まず経営者の視点でものを考える。

 

厚労省の諮問機関は、

利害関係調整の場となり、

予定調和を乱す意見の持ち主は呼ばれない。

 

他の労働団体、患者団体も、

医師の過重労働はあまり問題にしない。

 

ましてやそれが国民の医療安全を損なっているという認識はされていない。

 

ヨーロッパや北欧が、

医師の労働時間を週48時間程度に厳しく制限しているのは、

患者安全のためでもある、

とはっきり認識しているのと雲泥の差である。

 

勤務医中心の団体である全国医師連盟が

厚労省の長時間労働容認の方針に反対する緊急声明を出した(3)。

 

その中で、特に以下の2点は、重要である。


*地域医療の維持と長時間労働改善を両立させる唯一の抜本的方法は、

 急性期病院の集約化による一病院当たりの医師数増加を基盤とした

 交代制勤務の導入である。


*厚生労働省、日本医師会、各病院団体は

 医療提供体制維持が不可能である現状を放置してきたことを率直に詫び、

 医療の持続、安全性確保のため、急性期病院の集約化、

 再編が必要であることを国民に説明し、

 そのロードマップを明示すべきである。

 

現場の医療者を守るのは誰か。


残念ながら厚労省も医師会も医療団体もあてにならない。

メディアも医師の働き方改革は5年先延ばしされ、

長時間労働が容認されるという垂れ流し報道しかしない。

 

その背景にある深刻な問題に踏み込むのが、

メディアの真骨頂であろうに。

 

日本の司法はどうだろう。

医療事故が起きたとき、他の先進国のように、

医師の過重労働という背景要因まで分析して

判断してきたことがあったのだろうか。


そして、医療安全団体はいったい何をしているのか。


「過労死ラインを超えて医療安全は守れない」となぜ言わない。

この期に及んでなぜ声を上げないのか。


この国はどこかおかしい。

 

 

(1) 脳心臓疾患の労災認定

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf?fbclid=IwAR2_u6GFWI1IOClyRpVj37JcMwpHw1v4OZ5sggNSDNHg7l5iqyetX3CNflY

 

(2)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181213/k10011745141000.html?fbclid=IwAR39Nnj_Kwmyaant1iu4Y9A5j9uTDV-IAsUTpGSy2wxEYRnhrm_Vd4UP6pQ


(3)一般社団法人 全国医師連盟 理事会 緊急声明
医療安全を脅かし、勤務医の過労死基準超の長時間労働容認に断固として反対する

平成30年12月14日

http://zennirenn.com/news/2018/12/-301214-2.html?fbclid=IwAR1XP-amwEctk18eYKAvi2zjQExXLjBYqRAybQmwRv6q173cQvrJT-kh1nY

 

 

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