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赤ちゃんの「夜泣き」にはそっとしておくのが良い? ママ医師が語るそのワケとは

2019/01/22

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はAERA.dot(10月17日配信)からの転載いです。

https://dot.asahi.com/dot/2018101200047.html?page=1

 

森田麻里子

2018年12月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

赤ちゃん夜泣き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は普段、夜泣きで困っているママパパには

「ねんねトレーニング」というトレーニングをおすすめしています。

 

これは、赤ちゃんの夜泣きに

すぐに反応せずそっとしておくことで、

夜泣きを解決するというものです。

 

しかし、この「泣いていてもそっとしておく」ことが、

赤ちゃんの発達、

特に愛着形成に悪影響があるのではないかということは、

よく議論の的になります。

 

今日はこのテーマについて、

研究を紹介しながら解説したいと思います。

 

子どもの適切な愛着形成を促すことは、

特に1歳半までの育児で大切です。

 

愛着とは、『人と人との絆を結ぶ能力であり、

人格のもっとも土台の部分を形造っている』ものです(※1)。

 

安定した愛着を形成することが、

大人になってからの良い対人関係を築くために

重要と考えられています。

 

不安定な愛着スタイルは回避型と抵抗型などに分けられますが、

これらの愛着スタイルを持つ人は、相手を信頼しにくく、

上手に助けを求められなかったり、

相手をコントロールしようとしたりする傾向があります。

 

生後6カ月から生後1歳半は、

この愛着形成にとって一番重要な時期です。

 

この時期に、特定の養育者が子どものニーズに敏感に応え、

スキンシップを十分とることが大切です。

 

特定の養育者というのは母親である場合が多いと思いますが、

母親でないといけないわけではありません。

 

特定の誰かが、子どもの要求にすぐに反応し、

たくさん抱っこしてあげるのがポイントです。

 

しかし、「ねんねトレーニング」をする場合、

夜中に赤ちゃんが泣いても、

すぐに抱っこするのではなく、

ある程度「放って置く」ことになります。

 

しかも、ねんねトレーニングが必要になるのは、

6カ月前後から1歳頃までのお子さんが一番多く、

ちょうど愛着形成の臨界期と重なってしまいます。

 

夜泣きを解決するためにはねんねトレーニングが有効ですが、

ねんねトレーニングを行うことは、

安定した愛着を形成する方法と逆行してしまうのです。

 

では、子どもの夜泣きを改善するためのトレーニングが、

愛着形成を阻害することはあるのでしょうか? 

 

この問題に答えようとして、

研究も行われています。

 

オランダ・ライデン大学の研究者が

2000年に発表した論文があります。

 

赤ちゃんがいる家庭50件を、

生後3週間から9カ月まで3週間ごとに訪問して、

泣きの様子や親の対応を観察しました。

 

そして赤ちゃんが1歳3カ月になったときに

愛着パターンを評価しました。

 

すると、回避型の子は、安定型や抵抗型の子よりも、

泣いたら親がすぐに反応してあやす傾向が強かったことがわかりました。

 

さらに2009年、デラウェア大学の研究者は、

ちょうど1歳の子ども44人を対象に行った研究結果を発表しました。

 

子どもが寝ているときの様子や

親との関わりを3日間ビデオテープで撮影し、

その後の実験で子どもの愛着パターンを評価しました。

 

すると、夜泣きに全く反応しない家庭とその他の家庭を比べても、

子どもの愛着パターンに有意な差はありませんでした。

 

また、あやし方のバリエーションが多く一貫性がない家庭の子は、

有意な差ではないものの、

不安定な愛着パターンを持つことが多かったのです。

 

これらのことから、

夜泣きに反応してすぐ抱き上げなくても

安定した愛着形成に問題はなく、

むしろ一貫性を持った対応をすることが大事である、

ということがわかります。

 

夜泣きや寝ぐずりといった睡眠の問題を抱えている場合、

泣いてもすぐ反応しない「ねんねトレーニング」を行うことが、

愛着形成に悪影響を与えるとは言えません。

 

そもそも、愛着形成とは

子どもに対する夜中の反応の仕方だけで決まるものではなく、

生活全体を通して育まれるものです。

 

夜中に親が敏感に反応しなくても、

日中に子どものニーズを汲み取って反応し、

十分なスキンシップを持つことが大切です。

 

夜泣きにすぐに反応することによって、

親が睡眠不足になり、日中の関わりの質が低下するとしたら、

それこそ本末転倒になってしまいます。

 

また、親の過剰なサポートは、

子どもの自主的な行動や、

様々なスキルを試す機会を奪ってしまいます。

 

赤ちゃんが泣いているからといって、

必ずしも赤ちゃんが抱っこを求めているとは限りません。

 

「泣いたらすぐに抱っこ」ということだけにとらわれず、

一度立ち止まって、赤ちゃんがなぜ泣いているのか、

どうやったら赤ちゃんのニーズを

満たしてあげられるのかを考えてみてください。

 

(※1) 岡田尊司『愛着障害~子ども時代を引きずる人々』光文社新書

 

 

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。

2012年東京大学医学部医学科卒業。

12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。

16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。

17年3月に第一子を出産。

小児睡眠コンサルタント。

Child Health Laboratory代表

 

 

 

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