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実効性のある「医師の働き方改革」を実現するために、 医政局長通知(平成26年9月8日 医政発0908第21号)の撤廃を要望する

2019/01/23

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

一般社団法人全国医師連盟代表理事
中島恒夫

2019年1月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

勤務医の過重労働

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この度、一般社団法人全国医師連盟理事会は、

患者を危険な医療に晒す勤務医の過重労働の温床の一因でもある

医政局長通知(平成26年9月8日 医政発0908第21号:以下、医政局長通知)に

記されている「非常勤医師の常勤換算」を廃止することを、

厚生労働大臣をはじめ、関係部局担当者宛に、

本日付で要望いたしましたので、御報告申し上げます。

 

また、かかる内容につきましての取材・報道をよろしくお願い申し上げます。

 

平成31年1月7日

厚生労働大臣  根本 匠 殿
厚生労働副大臣  大口 善徳 殿
厚生労働副大臣  高階恵美子 殿
厚生労働政務官  上野 宏 殿
厚生労働政務官  新谷 正義 殿
厚生労働事務次官 鈴木 俊彦 殿
医務技監  鈴木 康裕 殿
医政局長  吉田 学 殿
医政局
医師・看護師等働き方改革推進官
乗越 徹哉 殿
医療政策企画官   千正 康裕 殿
医療経営支援課長 樋口 浩久 殿
労働基準局長  坂口 卓 殿
労働条件政策課長 黒澤 朗 殿

一般社団法人全国医師連盟 理事会
代表理事 中島 恒夫


事務局:〒114-0023 東京都北区滝野川5丁目41番3号 TKビル6階
電話番号:03-5980-7313
FAX番号:03-5825-6139
E-mail:info@zennirenn.com

 

実効性のある「医師の働き方改革」を実現するために、
医政局長通知(平成26年9月8日 医政発0908第21号)の撤廃を要望する。

 

【主文】
全国医師連盟(理事会)は、

患者を危険な医療に晒す勤務医の過重労働の温床となっている

医政局長通知(平成26年9月8日 医政発0908第21号:以下、医政局長通知)に

記されている「非常勤医師の常勤換算」を廃止することを要望する。

 

併せて、患者の医療安全を担保し勤務医の生命と健康を守るために、

急性期病院における非常勤医師による

夜間・休日診療を1人で担当するいわゆるワンオペの排除を可能とする

施設基準整備と診療費増額を要望する。

 

【要望理由】
<勤務医の過重労働の実状>
未だ、医員(医局員)(以下、勤務医)に

日当制の雇用形態を敷いている大学病院やグループ病院等は少なくない。

 

勤務医に時間外手当を支払わないため、

実態が最低賃金以下の時給という低賃金診療である。

 

その上、「任期1日」「日々更新」「年度末日は一斉解雇」という、

社会通念では考えられない雇用形態を

多くの大学病院等は従来から採っている。

 

このように不安定な身分の勤務医は、

薄給の通常診療業務以外に、

上司の研究の補助を行い、

後進の指導を無償で担当している。

 

低所得の勤務医は、

収入を確保するために時間外診療を含む

いわゆる外勤を行わざるをえない。

 

その結果、勤務医は過重労働に追い込まれる。

 

結果として、勤務医の過重労働は、

派遣元の医療機関でも、派遣先の医療機関でも、

危険な医療を提供する大きな要因となっている。

 

なお、大学病院等の常勤医師を他院に派遣することが、

「労働者派遣法違反」となる事案も含んでいる可能性があることも指摘しておくが、

ここでは詳細を割愛する。

 

<医政局長通知「常勤医師等の取り扱いについて」の問題点:その1>
勤務医過重労働の温床となる「非常勤医師の常勤換算」という

非条理を根底から支えているのは、

医政局長通知「常勤医師等の取り扱いについて」である。

 

さらに、この医政局長通知の利用を促するために、Excelシート(https://www.mhlw.go.jp/toukei/oshirase/dl/140627_4_1.xls)が御丁寧にも用意され、

監督官庁が勤務医の健康と命を危険に晒し、

結果として、患者の医療安全を損ねることに貢献している。

 

昨今、「医師の働き方改革」が取り沙汰されるようになったが、

本来、労働法制を守り、適切な病院運営ができていれば、

勤務医が過重労働によって疾病に罹患したり、

過労死するなどの不幸な転帰をたどることはかなり減らせたはずである。

 

重大な医療事故も減らせた可能性は高い。

すなわち、法令遵守をしていれば

「医師の働き方改革」という課題は生じえなかったはずである。

「医師の働き方改革」と「医療機関での労働のブラック度」は、

まさに裏表の関係である。

 

医政局長通知が他の医療機関に派遣される勤務医の過重労働に根拠を与え、

医療機関常勤医師の他施設での実労働時間を「圧縮換算」させることで、

各医療機関常勤医師数の水増しや実労働時間の偽装隠蔽を主導している。

 

その結果、勤務医の長時間労働・過重労働が

助長されてきたと言っても過言ではない。

 

<医政局長通知「常勤医師等の取り扱いについて」の問題点:その2>
厚生労働省は「いわゆるマルチジョブホルダーに関する現行の労働時間規制について」(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/s0514-5b7.html)を公開している。

 

派遣診療をしている勤務医の現在の就労形態は

「マルチジョブホルダー」である。

 

そして、「改定新版 労働基準法」(厚生労働省労働基準局編)にも

「「労働時間に関する規定の適用については通算する」ということは、

第32条又は第40条はもちろんのこと、

時間外労働に関する第33条及び第36条、

年少者についての第60条等の規定を適用するに当たっては、

甲事業場及び乙事業場における労働時間を通算して、

右の各条の制限を適用するということである。

 

(中略)労働時間の通算の結果、

時間外労働に該当するに至る場合は、

割増賃金を支払わなければならないことはいうまでもない。

 

この場合、時間外労働についての法所定の手続をとり、

また割増賃金を負担しなければならないのは、

右の甲乙いずれの事業主であるかが問題となるが、

通常は、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべきであろう。

 

けだし、後で契約を締結した事業主は、

契約の締結に当たって、

その労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で

契約を締結すべきであるからである。


ただし、甲事業場で4時間、

乙事業場で4時間働いている者の場合、

甲事業場の使用者が、

労働者がこの後乙事業場で4時間働くことを知りながら

労働時間を延長するときは、

甲事業場の使用者が時間外労働の手続を要するものと考えられる。

 

すなわち、

「その労働者を一定時間以上使用することにより、

時間外労働させることとなった使用者が違反者となる。

必ずしも1日のうちの後の時刻の使用者でもないし、

また後から雇入れた使用者でもない。」のである。」と記している。

 

これは医政局長通知と完全に矛盾している。

法の建て付け上、あるいは世の普遍性を考えれば、

医政局長通知に瑕疵があると言えよう。

 

<結語>
患者の医療安全を担保するために、

そして、勤務医の生命と健康を守るために、

勤務医の過重労働の温床となっている

医政局長通知「非常勤医師の常勤換算」を廃止することを要望する。


併せて、急性期病院における施設基準適正化

(非常勤医師による夜間・休日診療を1人で担当するワンオペの排除等)を

可能とする診療費増額を求めるものである。


<医政局長通知「常勤医師等の取り扱いについて」を廃止するべきとする論拠>
1.長時間勤務の危険性は、

  労働安全衛生の関係者の間ではすでに常識となっており、

  法規制がなされている。

 (Kuroda, Sachiko and Isamu Yamamoto,

  “Workers’ Mental Health, Long Work Hours, and Workplace Management

  : Evidence from workers’ longitudinal data in Japan,

  ” RIETI Discussion Paper, No.16-E-017, Research Institute of Economy,

   Trade & Industry, 2016 等)


2.長時間勤務は医療安全を損なうことが指摘されている。

 (Ehara A. Are long physician working hours harmful to patient safety?.

  Pediatr Int .2008;50:175-178 等)

======================

 

<簡略化した仮想の例示>
上記の医政局長通知には、『例』が呈示されている。

「例)A病院で、Bさんが週40時間、Cさんが週40時間、Dさんが週30時間、

   Eさんが週20時間勤務した場合の常勤換算による人数を算出する。

   なお、施設で定める1週間の勤務時間は週40時間とする。」

 

労働基準法では1週間の総労働時間の上限を40時間、

下限を32時間としているため、

この例の場合、BさんとCさんが常勤扱いとなり、

DさんとEさんが非常勤扱いとなる。

 

上述のExcelシートにこれらの数値をそのまま入力すると、

A病院の常勤医師数が週3.3人と計算される。

 

上記の医政局長通知には、

「当直に当たる非常勤医師についての換算する分母は、

病院で定めた医師の1週間の勤務時間の2倍とする。」

と記されている。

 

なぜ分母が「病院で定めた医師の1週間の勤務時間の2倍」となるのか全く根拠がないが、

このような割り算を医政局に強要されたDさんとEさんは

実際の労働時間を短縮偽装させられる。

 

なお、医政局長自らが、

宿直という用語を『当直』と誤用していることも併せて指摘しておく。


さて、Dさんと、Eさんが他の医療機関(仮にF病院とする)から

派遣されていた場合はどうなるのだろうか。

特に、夜間勤務労働者として派遣されていた場合はどうなるのだろうか。

 

労働者派遣法違反となるかもしれないが、

そこはあえて目を瞑ることとする。

 

1回の夜間勤務が18時から翌朝9時までであれば、

1回15時間の労働である。

 

派遣元のF病院での労働時間がすでに週40時間労働だった場合、

派遣夜間勤務だけでも過重労働である。

 

しかし、A病院での計算式ではF病院(派遣元)の労働実態は反映されない。

結果として、Dさんと、Eさんは過重労働を強いられ、

多くの被派遣側医療機関は、

管理業務のみを行うはずの宿日直勤務を非常勤医師が行うことで、

常勤医師の水増しを図っている。

 

過重労働が危険な医療の提供に直結していることを

認識していない病院管理者が大多数であろう。

 

なお、このExcelシートには、

「医療機関において常勤の従事者が勤務すべき1週間の時間数(所定労働時間)」を

(32〜168時間)と記しており、

医政局が過労死労働を容認していることも指摘しておく。

 

 

 

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