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憲法違反が危惧される医師の働き方改革は許されない(2)

2019/02/13

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

全国医師ユニオン代表
植山直人

 

2019年1月30日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師過重労働

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2、求められる対策

1)この5年間で行うこと

勤務医労働実態調査2017では、

改善に有効な方法を調査しているが上位の3つは

医師数の増員、医療補助職の増員、無駄な業務を減らす、である。


5年間に各医療機関で削減を進めるにあたって、

具体的な目標を設定して取り組みを進める必要がある。

 

その一つの例として以下の案を示す。

 

この2年間で年間300時間の時短を目指す。

特に過労死ラインを超えて働いている医師に関しては

これを徹底すること。

 

これは1日の残業を1時間減らすことを目標とするものである。

法令の変更等を必要とせずに

トップと医療機関の姿勢を変えることで進めることができるものである。

 

a.ムダな業務をなくす

多くの医師はムダな業務があると考えており、

本当に必要な業務以外を減らす活動を

病院全体で取り組むことが必要である。

 

会議や書類作成等などに費やされる時間を

1日30分減らすことができれば、

300日勤務として、年間150時間の時短が見込める。

 

b.当直回数の削減

長時間労働を行っている医師の当直を外部の医師に依頼して減らす。

当直は1回15時間程度の時間外労働を生むため、

月の当直を1回減らせば年間に180時間程度の時短が見込める。

 

c.当直の準夜帯を当直を行っていない他の医師に代わってもらう(病院内部や外部を問わない)

夕方17時から朝の8時までの当直があるとして、

17時から20時までの3時間の当直を代わってもらえば、

月に5回当直を行っている医師は、

月に15時間、年間で180時間の時短が見込まれる。

 

d.外来単位の削減
当直明けに外来や

胃カメラなどの侵襲性のある検査を行うことは

医療安全上望ましくない。

 

当直明けの外来は、極力避けるべきである。

また、医療機関によっては

診療所などとの役割分担により

外来数を減らすことが求められる。

 

長時間労働を行っている医師の外来を

週1単位(4時間として)減らせば、

年50週として200時間の時短が見込まれる。

 

e.複数主治医制やチーム制の徹底
主治医制という慣習が続いている医療機関では、

複数主治医制やチーム制に変更する。

 

医師が特定の患者に対して

24時間365日にわたり責任を持つことは

非現実的であり医師の疲弊を進めるだけである。


これによる具体的な時短目標はないが、

完全な休日の取得には極めて有効である。

 

重要な点は、

複数主治医制やチーム制をとることを医療機関が宣言し、

患者の理解を得ることである。


上記の取り組みは、

医療機関や診療科の実状により異なるが、

医療界が本気に取り組めば

かなりの成果を上げることが可能となると考えられる。

 

5年間で過労死ラインを超える医師を大幅に減らす

上記の取り組みをさらに進める中で、

診療科によっては医師の代替が効かないケースなどが出てくるため

一医療機関では解決できない問題もでてくると考えられる。

 

特に高度救急など緊急手術や

緊急カテーテル治療などに関しては、

医療機関の壁を越えた体制が必要となると考えられる。

 

そのためには、

都道府県単位での輪番制の確立や

地域によっては特定の診療科に関する集約化等の取り組みが必要となる。


これも、先の課題ではなく今すぐ取り組みを進め、

この5年以内に解決しなければならない問題である。


また、NPやPA(フィジシャン・アシスタント)の促進など

法改正が必要となる問題に関しても、

議論を進め速やかに結論を出す必要がある。

 

さらに医療機関の役割分担に関しては診療報酬の適正化などで、

促進を進める必要がある。

 

2)根本的な解決

・医師不足と偏在の解消
日本の医療の最も大きな問題は

「絶対的な医師不足の中の相対的な医師偏在」であり、

これを解決する必要がある。

 

そして、異常な連続労働を止めるには

交代制勤務の導入が必要であり、

交代制勤務を導入した場合の必要医師数を明らかにしなければならない。


また、偏在問題の解消も行う必要があるが、

現状では地域の偏在に関しても

診療科の偏在に関しても全く基準がなく、

どの地域に何科の医師がどの程度不足しているのか全く不明である。

 

厚労省は地域ごとの診療科別の必要医師数を明らかにする必要がある。

特に少子化問題が深刻となっている現状では、

地域で安心して子供を生み育てられる診療体制に

必要な医師数であることが不可欠でである。

 

これらの事を考慮した上で、

偏在が起きない政策と共に医師増員を行う必要がある。

 

・自由開業医制度のみなおし
医師の地域偏在の解消には

自由開業医制度の見直しも必要である。

 

現状では医師の偏在のために

国民の医療を受ける権利が脅かされおり、

これを放置することはできない。

 

医療はライフラインに準ずる公的なものである。

一方自由開業医制度は市場原理に基づく制度であり、

一定のルールがなければ公共性を守ることはできない。

 

市場原理は需要と供給のバランスを必要とするが、

日本では需要を無視して

医師の供給を厳しく制限しているため

市場原理は機能しない。

 

医師と国民の双方が納得できるルールを作る必要がある。

 

・診療科の選択のルール作り
また、診療科の選択に関しても

偏在を解消するためのルール作づくりが必要である。

 

自由と寛容の国フランスにおいてさえも、

毎年地域別に必要な診療科の医師数が公開され、

学生は成績順で地域と診療科を選択する。

 

診療科の選択は、

大学時代または遅くとも初期研修医時代に行われる。

 

大学は、単に知識や技能を教えるだけでなく、

学生の適性を把握して

診療科の選択にアドバイスや指導を行えるようになるべきである。

 

大学は、地域で必要な診療科医師の数を把握し、

学会などとも協力して

診療環境の改善策やキャリアアップの道筋を提示し、

医学生に求められている進路ややりがいを語る必要がある。


いずれにしても、

医師不足を解消しなければ

医師の労働実態の根本的な解決は期待できない。

 

地域医療が崩壊すれば、

国民皆保険制度も崩壊してしまう。

 

国民医療を守りながら医師の労働条件を正常化するには、

明確な工程表を作つくり、

計画的な医師の増員を行った上での医師充足の実態調査と

労働実態調査を定期的に行い、

着実に改革を実行する以外に根本的な解決策はない。

 

長期的には、EUのように医師も

一般労働者とほとんど同様の労働条件で働ける環境を作るつくる必要がある。

 

・歪んだ医療政策の見直し
日本の医療は国際的にみれば、

極めて特殊なものとなっている。

 

一年間の医療機関への国民一人当たりの受診回数は、

OECD諸国平均は6.9回に対して日本は12.7回と約2倍である。

 

病床数は人口1000人当たりOECD諸国の平均は4.7に対して、

日本は13.2と約3倍である。

 

また、CTやMRIといった検査機器の人口当たりの普及率は

世界で断然トップでOECD平均の3倍から4倍となっている。

 

さらに、薬剤費なども

保健医療支出に占める割合は韓国に次いで2番目に高くなっている。

 

また、日本の医療はフリーアクセスという制度をとっている。

これは保険を使って病院を自由に選択できる制度で、

患者にとっては喜ばしい制度である。

 

しかし、ヨーロッパの国では病院の選択には制限があり、

アメリカはフリーアクセスの国であるが公的な保険は使えない。

 

保険を使ってフリーアクセスを実現すると高度医療機関へ受診が増え、

コストの上昇などから公的な保険の維持も困難になる。


日本人の医療に対する要求度は極めて高く、

病床数や検査機器も多く薬にも莫大な医療費が使われている。

 

一方、医師や看護師などは

その数を国に抑制され深刻な人手不足となっており、

医師をはじめとする多くの医療スタッフが犠牲になっている。

 

患者の受診回数や適切な医療機関の配置

さらには検査や薬の処方の在り方についても見直す必要がある。

 

日本の医療制度には大きな歪みがあり、

医療体制の維持は限界に来ているため

国民と医療従事者が納得できる制度に改革する必要がある。

 

 

 

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