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鼻の奥にグリグリ… 痛くて辛い「インフルエンザ検査」はどこまで信用できる?

2019/02/09

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はAERA dot.(11月7日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2018110500012.html

 

山本佳奈

2019年2月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

インフルエンザ予防

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年も残すところあと2カ月(過去記事です)。

記録的な猛暑が落ち着いたと思ったら、

もうインフルエンザの流行が目の前に迫ってきましたね。

 

昨シーズンは、1999年の統計開始以降、

最大のインフルエンザの流行を記録。

 

インフルエンザの感染を恐れ

「予防接種を受けました」という方も多いのではないでしょうか。

 

2018年10月24日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、

およそ20年ぶりに新たな作用機序をもつ

インフルエンザ治療薬を承認した、と発表しました。

 

商品名は「ゾフルーザ」(一般名はバロキサビルマルボキシル)。

この新薬は、たった1回服用するだけでよく、

なんと、従来のインフルエンザの治療薬よりも効果が高いと言われています。

 

さらに、服用してから10日ほど効果を維持できることから、

予防薬としての効果も期待されており、

臨床試験も行う予定だそうです。

 

予防薬として承認されれば、

受験生には必須の予防薬となりますね。

 

さて、今回は、流行がすぐそこまで迫ってきている

インフルエンザについてお話したいと思います。

 

インフルエンザとは、

インフルエンザウイルスに感染しておこる感染症です。

 

咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状の他に、

38度以上の高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、

倦怠感などの全身の症状がみられます。

 

稀にではありますが、小児では急性脳症を、

高齢者や免疫力の低下している人は肺炎を合併するなど、

重症化することもあります。

 

「そもそも風邪とは違うのですか?」という声も多く聞かれます。

俗に言う風邪は「かぜ症候群」と呼ばれ、

ライノウイルスやコロナウイルス、

RSウイルスやアデノウイルスなどが主な原因ウイルスとなります。

 

インフルエンザも同じウイルスが原因ではありますが、

風邪の場合、インフルエンザほど高熱にはならず、

咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状が中心で、

重症化することはあまりありません。

 

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があります。

そのうち、ヒトに感染し流行を引き起こすのはA型とB型です。

インフルエンザの流行には季節性があり、

日本では、毎年12月から3月にかけて流行します。

 

では、どうして毎年流行するのでしょうか?

 

インフルエンザウイルスには、「型」だけでなく、

「株」とよばれるさらに細かな分類があります。

 

インフルエンザウイルスの表面の突起物である

HAの構造の違いを分類したものです。

 

私たちのカラダの免疫システムは、

このHAの構造を記憶しているのです。

 

しかしながら、HAの遺伝子は毎年のように変異を起こします。

そうすることで、インフルエンザウイルスは、

我々の免疫システムから逃れ、毎年流行し続けているのです。

 

こうしたことから、予防接種をすることが

インフルエンザの一番の対策となります。

 

FDAのゴットリーブ長官も、

「FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、

年に1度の予防接種の代わりにあるものはない」と述べています。

 

インフルエンザワクチンは、

現在、A型とB型ともに2種類の株、

つまり4種類の株に対応できるように作られています。

 

その際、世界保健機関(WHO)を中心として、

どの株が流行するかが予想されており、

これまでに、予想が外れて

ワクチンが効かなかったという事態はほとんど生じていません。

 

また、インフルエンザワクチンは、

不活化ワクチンであり、

病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となります。

 

そのため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まります。

インフルエンザワクチンの場合、

3カ月程度しか効果は持続しないため、

流行のシーズン前に接種する必要があります。

 

米国疾病管理センター(CDC)の

インフルエンザワクチンの有効性の報告によると、

65歳未満の健常者ではインフルエンザの発症が70~90%減少、

65歳以上の老人施設に入居されていない高齢者では

肺炎やインフルエンザによる入院が30~70%減少、

老人施設に入居されている方は、

インフルエンザの発症が30~40%減少、

肺炎やインフルエンザによる入院が50~60%減少、

死亡リスクが80%減少したといいます。

 

また、1歳から15歳の子供にも、

インフルエンザの上気道症状に対して

77%から91%有効であったとのことでした。

 

さて、インフルエンザの予防には、

日々の手洗いうがいと予防接種が欠かせませんが、

インフルエンザに感染してしまった場合、

どうすればいいのでしょうか。

 

こまめに水分を摂って、

ウイルスの侵入経路である喉を潤し、

よく休んで体力を回復させ、

ウイルスを増殖させないようにし、

軽いうちに自力で抑え込むことが大切です。

 

併せて大切なのが、人にうつさない行動をとる、

つまり自宅で休養することです。

 

CDCは、65歳未満のハイリスクでない成人は、

検査も治療も必要としません、と言います。

 

インフルエンザが疑われるときは、

息が苦しい、意識がおかしいといった状況でない限り、

早期の受診を促すのではなく自宅療養でいい、ということです。

 

ほとんどの人は、抗インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、

5日から7日ほどで軽快します。

 

喉が痛い、熱が出た、節々が痛い、体がだるい……

そういった症状が出たら、

何かしらのウイルスが体に侵入して闘っているということを意味します。

 

それが、インフルエンザウイルスなのか、

風邪のウイルスなのか(場合によっては細菌感染もあります)、

軽症の場合、区別はつきません。

 

「インフルエンザかどうか、検査してください」と、

外来を受診される方もたくさんいらっしゃいます。

 

すぐに結果がわかるものの、

鼻の中に綿棒を入れ、

鼻の粘液をとってインフルエンザかどうかを判定する迅速検査は、

痛くて辛い検査ですよね。

 

カナダのモントリオール大学の報告によると、

感度(インフルエンザに罹患している人の中で、検査が陽性である人の割合)は62%、

特異度(インフルエンザに罹患していない人の中で、検査が陰性である人の割合)は98%。

 

実は、陽性が出ればインフルエンザであると確定できるのですが、

陰性であったとしても、

インフフルエンザではない、とは言い切れない検査なのです。

 

最後に、インフルエンザについての興味深い知識を一つ。

 

ニューヨークにあるコロンビア大学が

1975年から2008年にかけて40カ国78都市で調査した結果、

インフルエンザウイルスは、乾燥していて寒い気候を好むだけでなく、

湿度が高くて雨が多い気候も好むことがわかっています。

 

実際に、一年を通して気温が高い東南アジアでは、

雨季にインフルエンザが流行しているのです。

 

日本でも、東南アジアと同様に、

亜熱帯に属している沖縄では、

夏にもインフルエンザが流行しています。

 

温暖化が進めば、今後、本州でも夏にインフルエンザが流行する、

なんてこともあるかもしれません。

 

もうすぐに迫ったインフルエンザの流行に備えて、

しっかり予防をしてくださいね。

 

 

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