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医師法21条には異状なし

2019/04/04

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿は月刊集中3月末日発売予定号からの転載です。

 

井上法律事務所所長 弁護士
井上清成

2019年3月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師法21条

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.従来の解釈と何ら変わることもなく

医師法第21条(異状死体等の届出義務)に関して、

2019年2月8日付けで

「医師による異状死体の届出の徹底について」という通知が、

厚生労働省医政局医事課長によって発せられた。

 

ここ数年来、医師法第21条について

医療界では落ち着いた運用が続いている。

 

この通知が突然のものと受け止めた向きもあり、

医師法第21条の運用や解釈が変わってしまうのではないか、

という動揺も生じかねなかった。


そこで、そのような不安や動揺をあらかじめ抑えるため、

この3月13日には吉田学厚生労働省医政局長が、

翌14日にはまさに通知の主体である

佐々木健厚生労働省医政局医事課長自身がいずれも、

異口同音の答弁を行ったのである。

 

吉田局長は衆議院厚生労働委員会で、

「従来の解釈あるいは従来の私どもの法21条について

申し上げていることについて何ら変わることもなく、

同趣旨を改めて確認させていただいたというふうに位置づけてございます。」

と答弁し、

佐々木医事課長は一般社団法人医療法務研究会主催の懇談会で、

「この度の通知は、従前の内容と同じでして、何ら変わるところはございません。」

と明言した。


つまり、従来(従前)と何ら変わるところもなくて同じだったのだから、

医療界はいずれの意味においても過剰反応する必要は全くない。

 

2.当時の田原医事課長の発言の通り

(1)死体の外表を見て異状があると判断した場合に届け出る
佐々木課長は、当時の田原克志医事課長の2012年10月26日の

「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」における発言に対して、

今回の通知と「同じ趣旨」であると真正面から肯定した。


田原医事課長の発言とは、正確には次の通りである。

 

○田原医事課長:検案は外表を見て判断するとなっておりますけれども,

          その亡くなられた死体があって,

        死体の外表を見たドクターが検案して,

        そのときに異状だと考える場合は

        警察署に届け出てくださいということだと考えております。

 

○中澤構成員:それは外表を見てということは,

       外表だけで判断されるということでよろしいわけですね。


○田原医事課長:基本的には外表を見て判断するということですけれども,

        外表を見るときに,

        そのドクターはいろんな情報を知っている場合もありますので,

        それを考慮に入れて外表を見られると思います。

 

        ここで書かれているのは,あくまでも,検案をして,

        死体の外表を見て,異状があるという場合に

        警察署のほうに届け出るということでございます。

        これは診療関連死であるかないかにかかわらないと考えております。


○中澤構成員:そうすると,外表では判断できないものは出さなくていいという考えですか。

 

○田原医事課長:ですから,検案ということ自体が

        外表を検査するということでございますので,

        その時点で異状とその検案した医師が

        判断できるかどうかということだと考えています。

 

○中澤構成員:判断できなければ出さなくていいですね。

 

○田原医事課長:それは,もしそういう判断できないということであれば

        届出の必要はないということになると思います。

 

(2)厚労省が診療関連死について届け出るべきだと申し上げたことはない
また、3月13日の衆議院厚生労働委員会においては、

橋本岳衆議院議員(元厚生労働副大臣)が、

「有賀構成員からやはりこの医師法21条についての問いがあって、

田原医事課長が答えておられます。

そこで『厚生労働省が診療関連死について届け出るべきだというようなことを

申し上げたことはないと思っております。』という答弁をしております。・・

そこについても確認をさせていただいていいですか。」と問い掛けた。

 

これに対して、吉田医政局長は明瞭に、

「私どもとしても同じように認識をしてございます」と答弁したのである。


つまり、佐々木医事課長も吉田医政局長も、

当時の田原医事課長の発言を今もって肯定し続けていて、

その通りだということであった。

 

厚労省の見解は、

当時の田原医事課長の発言の通りなのである。

 

3.都立広尾病院事件の判決などを見て

(1)医療事故等々を想定しているわけではない
当時の田村憲久厚生労働大臣は、

2014年6月10日の参議院厚生労働委員会で、

「医師法21条は、医療事故等々を想定しているわけではない」と明言していた。

 

この点について、3月14日の前述の懇談会において、

橋本岳衆議院議員が佐々木医事課長に確かめたところ、

佐々木医事課長はこれもやはり肯定し、

「もちろん、その通りで、医療事故等々かどうかを問わず、

警察に届け出るべきかどうかは、

死体を検案した医師が個別具体的に考えることになります。」と回答したのである。

 

(2)都立広尾病院事件の判決なども参考になる
医療事故と言える事案での医師法第21条に関する代表的な裁判例は、

いわゆる都立広尾病院事件判決

(東京高等裁判所2003年5月19日判決、最高裁判所2004年4月13日判決)で

あると言ってよい。

 

そこで、やはり3月14日の懇談会において橋本岳衆議院議員は、

「そうすると、医療事故等々が生じた時には、

医師法21条で届け出るべきか判断する際には、

都立広尾病院事件の判決なども参考になるのでしょうか?」とも尋ねた。

 

そうすると、佐々木医事課長は、

「検案した医師が、警察に届け出るべきかを個別具体的に考える際には、

都立広尾病院事件判決などを見ていただくことも大切なことだと思います。」

と丁寧な回答をしてくれたのである。

 

4.医師法21条は今も異状なし

以上の次第であるから、

医師法第21条の運用・解釈は今も何ら変わっていない。

 

したがって、医療界はこれで安心してよいのである。

くれぐれも、過剰反応をしてはならない。

 

 

 

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