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病院の外で学ぶ;(3)貧しい国、日本

2019/04/18

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

永井雅巳

2019年4月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

富裕層貧困層幸福度ランキング

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人口ピラミッドでみるこの国の現在のかたちは、

ピラミッドではなく、“つぼ”型とよばれるそうだ。

 

つりがね型より出生率が低下するとこうなる、

と中学の教科書に書いてある。

 

この国のかたちも1930年代はピラミッド型であったそうだが、

1980年代にひょうたんに変わり、やがて、つぼとなった。

 

桐島洋子氏は「淋しいアメリカ人」(1971)の中で、

当時のニューヨークの老人を見て、

人間の廃墟が歩いていると驚愕した想いを語っているが、

1880年代生まれの彼から

「あんたはわたし達が不幸だと思っているのかね。

せっかくだが、それは見当違いさ・・われわれは何事も迷う必要はなかった。

自然は征服するべきもの、技術は進歩させるもの、

生産は増大させるもの、戦争は勝つもの・・すべてははっきりしていた。

生きやすい世界を十分に生きさせてもらったよ。」
と語りかけられる。

 

見ため廃墟のようでも、

今から約50年前のアメリカでは活きのよい老人がいたらしい。

 

一方、今、私が拝見している在宅・施設の患者の多くは80から90歳代。

活きの良い人は概して少ない。

 

大正生まれの人はさすがに少なくなり、

西暦で言えば1920年代生まれの方が多い。

 

ほぼ青春と呼ばれる時代を戦争で奪われ、

わが国の敗戦からの復興を先頭になって引っ張ってくれた。

 

1991年にバブルが崩壊し、

富裕層の一部は財を失ったが、

中流と思っていた階級層の大部分が貧しくなった。

 

2014年の厚労省の国民生活基礎調査によると、

65歳以上の高齢者世帯の27.1%が「大変苦しい」、

31.7%が「やや苦しい」生活を強いられている。

 

2015,2016年の調査ではこの率は改善を示したが、

2016年には生活保護受給者の半数以上が高齢者世帯となった。

 

日本総研のレポートによれば、

2035年には高齢者世帯の19.5%、

394万世帯は生活保護を利用する際の基準となる

「最低生活費」より収入が少なく、

平均寿命に至る前に貯金が底をつくそうだ。

 

この394万世帯はどうやってこの国で暮らしていけば良いのか?

 

失われた20年間の間に、

この国の可処分所得中央値は297万円(1997年)から

最近では245万円前後と50万円も少なくなった。

 

年金生活の高齢者でも年金支給額が下がり、

社会保険料が上がったために、

大和総研の是枝氏によると、

単身高齢女性の可処分所得は

2011年年額166万円から2018年156万円と下がっているそうだ。


一方、富裕層はどうか。

野村総研の調査によると、

純金融資産保有額5億円以上の超富裕層、

1億円~5億円の富裕層は、

2000年ではそれぞれ6.6万世帯、76.9万世帯であったのが、

2015年には7.3万世帯、114.4万世帯、

合わせて122万世帯に増加し、

この2つの富裕層が保有する金融資産総額は

合わせて272兆円になるそうだ。

 

クレディ・スイスによるレポート(グローバルウェルネス2016)によると、

100万ドル以上の試算をもつこの国の富裕層の数は

2016年には282万6千人(!)となり、

世界の中でアメリカに次いで、第2位となった。

 

この富裕層の増加の原因は、

しばらく円高ドル安が続いたことにあるようだが、

この2つの国(アメリカ、日本)が

貧困率においてもOECD加盟国の中で

断トツ1,2位を争っていることを忘れてはならない。

 

富める者は益々富み、

資産がない者は益々貧しくなっている。

 

大きな貧しい層とごく小さな富裕層、

いびつに二極化しているのもこの国の形だ。

 

OECDのグローバルノートによると、

2016年日本のジニ係数は18-65歳で0.34、

世界の主要42か国で17位、

65歳以上に限ると13位となる(格差が大きい)。

 

35位~40位までのボトム(格差が少ない国)には

フィンランド、デンマーク、オランダ、ハンガリー、

ノルウェー、ベルギー、スロベニア、チェコといった

北欧・東欧の国が並ぶ。

 

因みに2018年国連が発表した世界幸福度ランキングでは

1位フィンランド、2位ノルウェー、3位デンマークであるように、

世界の多くの人は格差が少ない社会をより幸福と感じるらしい。

 

それではこの国の国民の多くが幸せを感じるように、

資産を多く持っている人が多くの税を供して、

みんなが幸せを感じる国にしてはどうか。

 

残念ながら、この国の意思決定は

資産を多く持っているごく少ない人が決めているので、

なかなか難しいようだ。

 

現場に出ると、この国の地方が貧しくなり、

活気を失ってきていることが良くわかる。

 

ルドガー・ブレグマンの言うように、

「貧困は人格の欠如ではなく、金銭の欠乏である」のだ。

 

ただそれだけだが、若い人は金銭を求め、

都会に出、高齢者は残される。

 

世代で受け継がれるべきものは、断ち切られ、

やがて地方の村は消えていくことになる。

 

 

 

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