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2019年人口比別旧帝国大学合格者ランキング ~明治維新以降からつづく東北の教育格差~

2019/05/23

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

東北大学医学部医学科2年
村山安寿

2019年5月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

旧帝国大学合格者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月23日東京でも桜の開花が宣言され、

今年も桜の季節が来た。

 

「サクラサク」といえば、

大学入試を連想される方も多いだろう。

 

そこで今回はサンデー毎日3月24日号、

週刊朝日3月29日号のデータを用いて

全国の旧帝国大学合格者数と

その合格者の出身県の関係について考えようと思う。

 

本題に入る前に自己紹介をしたいと思う。

私は東北大学に通っている医学生である。

 

生まれは北海道帯広市、

2歳のときに東京に引っ越してからは

小学5年生まで東京の町田で過ごした。

 

小学6年のときに沖縄に引っ越し1年間沖縄の小学校に通った。

その後中学受験をし、

中学は北海道函館市にある私立函館ラ・サール中学に進んだ。

 

高校は東京に戻り都立日比谷高校に進学し、

大学で東北大学の医学部に入学した。

 

中学からラグビーをはじめて以来、

ラグビーがとても好きである。

 

特に高校ラグビーが好きで毎年花園は必ずスマホで中継を見ている。

中学3年生のときは、現在明治大学で活躍し

U20日本代表にも選ばれている児玉樹選手が率いる

秋田の将軍野中学校に1トライ差で負け全国大会に進めなかった。

 

自己紹介はこれくらいにしてそろそろ本題に入ろうと思う。

 

まず京都大学のランキングを見ると

1位は奈良県、2位京都府、3位兵庫県、4位大阪府、5位滋賀県(図1)と

上位5県軒並み近畿地方の県が並んでいる。

 

京大とは対照的に、

日本の大学の最高峰である東京大学のランキングを見ると

1位東京都、2位奈良県、3位神奈川県、4位富山県、5位兵庫県(図2)となり

上位10番以内に関東の県は東京都、神奈川県、千葉県の3県しかない。

 

このことからも一般的に東京大学は

全国から優秀な学生が集まっており、

全国の大学生が東京へ一極集中していると考えられている。

 

また東京の高校に通っていた私自身も高校生のときは、

東京大学は日本中から学生が来る全国規模の大学で、

京都大学は日本を代表する関西の大学というイメージを持っていた。

 

しかし実際のデータを見ると

東京大学はそのような傾向ではないと考えられる。

 

今年の入試結果によると

東京大学の合格者に占める関東出身者の割合は59.02%である。(図3)

 

日本でもっとも偏差値の高い私立大学である

慶應義塾大学、早稲田大学にいたっては

合格者の約78%が関東出身者である。(図4、図5)

 

京都大学の場合は近畿出身者の割合が49.5%(図6)である。

これらのデータを見る限り、

少なくとも地元出身者の割合から考えると

京都大学よりも東京大学の方がローカルな大学であると言える。

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-1.pdf

図1,2019年受験における全国47都道府県ごとの

    18歳人口1万人あたりの京都大学合格者数ランキング

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-2.pdf

図2,2019年受験における全国47都道府県ごとの

        18歳人口1万人あたりの東京大学合格者数ランキング

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-3.pdf

図3,2019年受験地方別東京大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-4.pdf

図4,2019年受験地方別慶應大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-5.pdf

図5,2019年受験地方別早稲田大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-6.pdf

図6,2019年受験地方別京都大学合格者の割合

 

さらに他の旧帝国大学の場合、

名古屋大学では中部地方出身者が49%(図7)、

大阪大学では近畿が62%(図8)、

九州大学では九州・沖縄出身者が実に合格者の69%(図9)を占めている。

 

このように基本的にはどこの大学も

合格者の過半数以上は地元出身者で占められている

ローカル大学であることがわかる。

 

たしかに高校の同級生の半数近くは東京大学を目指していたし、

事実、33人が現役で東京大学に入り、

他の同級生も一橋大学や東京工業大学、

横浜国立大学、千葉大学などに進学していった。

 

私の知っている同期で

関東以外の大学に進学した同級生は

みな医学部か京都大学であった。

 

これは大多数の高校生は

地元志向があるということを示していると言えるのではないだろうか。

 

また、親の中には自分の大事な子供を

わざわざ遠くの大学で学ばせることを躊躇する人もいるに違いない。

 

さらに一般的に一人暮らしをするのは

自宅暮らしよりもお金がかかるということも

地元の大学を志向する理由の一つと言えるだろう。

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-7.pdf

図7,2019年受験地方別名古屋大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-8.pdf

図8,2019年受験地方別大阪大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-9.pdf

図9,2019年受験地方別九州大学合格者の割合

 

一方で、北海道大学と東北大学は他の旧帝大とは異なった傾向がある。

北海道大学の場合北海道出身者が合格者の39%(図10)、

東北大学では東北出身者が合格者の39%を占めている。(図11)

 

さらに注目すべき点は名古屋大学、大阪大学、九州大学では

一部の県からの合格者がいないのに対して、

北海道大学と東北大学では

47都道府県全ての県から合格者が出ていることである。

 

このように、北海道大学と東北大学は

他の旧帝国大学と比べると全国規模の大学であることがわかる。

 

さらに言えば関西以西の人の方が全国に分散する傾向があると見える。

今年九州大学に東北地方から合格したのは5人(宮城県4人、秋田県1人)に対して、

九州地方から東北大学に合格したのは26人

(福岡県10人、佐賀県1人、長崎県7人、熊本県7人、

大分県1人、宮崎県1人、鹿児島県4人)である。

 

北海道大学にいたっては九州地方から35人が合格している。

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-10.pdf

図10,2019年受験地方別北海道大学合格者の割合

 

http://expres.umin.jp/mric/mric_2019_077-11.pdf

図11,2019年受験地方別東北大学合格者の割合

 

この事実は私にとって大きな衝撃であった。

私の大学の友人の多くは東北地方の出身者である。

 

特に仙台二高出身者がとても多い印象を持っている。

事実今年も仙台二高から97人(週刊毎日4月5日号より)もの

合格者を輩出している。

 

しかし実際は地元からの出身者が旧帝大のなかで

もっとも少ない大学であるということに衝撃を受けた。

 

さらに衝撃を受けたのは、

東北地方の中でも県ごとに

旧帝大の合格者数に大きな差があったことだった。

 

東北大学全体の合格者の中で一番人数が多いのは宮城県である。

そして宮城県は各都道府県の18歳人口1万人あたりの合格者数でも

日本で最も多い。

 

2位は岩手、3位は青森、4位秋田、5位山形と

上位5位以内は東北6県のうち5県が並ぶ。

 

では、残りの1県である福島県の順位はというと11番目に入る。

 

他の東北地方の県と比べると低い傾向にあると見て取れる。

また東京大学のデータを見ても

福島県は42位、福島より下の東北の県は45位の青森だけである。

 

つまり、福島の学生が東北大学を受験しない代わりに

東京大学に進学するというのではないということなのだろう。

 

ちなみに、18歳人口あたり東京大学に最も合格者が多い東北の県は

20位の秋田県であり、

私が住んでいる宮城県は31位で東北では2番目となる。

 

さらに都道府県ごとに

旧七帝大合格者数の合計を18歳人口1万人あたりで算出すると

東北6県の中では、全国7位で宮城県が最も高くなり、

その人数は1万人あたり179.38人、

次に秋田県が135.28人で全国20位、東北では2番目となる。

 

その後は山形県98.60人で31位、

岩手県91.08人で33位、青森県86.60人で34位と連続しており、

これら3県の差はわずかなものである。

 

しかし福島県は69.71人で全国43位、

やはり東北の他県と比べて福島県は大きな差があるように思える。

 

そして逆に宮城県は東北の他県を圧倒して東北地方では首位となっている。

また秋田県も中間的な東北の県と比べると高い値となっている。

 

同じ東北の県でもなぜこのような差があるのだろうか。

この問いに対する答えの鍵は幕末以降の歴史にある。

 

江戸時代、会津藩には日新館という藩校があり、

多くの優秀な人材を育成してきた。

 

かの白虎隊もこの日新館の出身だ。

 

会津藩は戊辰戦争で旧幕府側の主力として参戦、

結果は知っての通り敗北した。

 

その際日新館も会津戦争で1868年に焼失した。

その後戊辰戦争で幕府側に付いた多くの東北の藩は冷遇され、

戦後の復興もままならなかった。

 

福島には、1884年の福島(現福島県立安積高校)、若松、平の三中学校、

1890年には旧会津藩士によって作られた

私立会津中学校(現福島県立会津高校)が開学するまで

高等教育機関が存在しなかった。

 

さらに1887年には福島で唯一の医学校、

福島医学館も廃止された。

これらの痕跡は現代であっても残っている。

 

福島県の人口10万人あたりの医師数は

204.5人で47都道府県中44位である。

 

他にも、各都道府県の教育レベルの指標として

その県にある国立大学への運営交付金の金額で考えることができる。

 

福島県には福島大学という国立大学が1つだけあるが、

福島大学に対する運営交付金等の金額は

年間約36億6000万円(平成29年度 旺文社教育情報センターより)。

 

この金額は全国に存在する国立大学86校中68位となり、

他の国立大学と比べると大きな差はないように思われるかもしれない。

 

しかし、都道府県単位に交付されている金額としては

47都道府県中全国46位、

県民1人あたりの金額に換算すると47都道府県中44位である。

このことが福島県の旧帝大進学者数が少ないことの一因だろう。

 

福島県と対局をなすのが秋田県である。

秋田藩は戊辰戦争で新政府軍として庄内藩、盛岡藩と戦った。

 

戦後、秋田藩は秋田戦争での功労として

当時盛岡藩の領地であった鹿角地方を授かった。

 

この鹿角地方には日本有数の銅山である尾去沢銅山の銅や

小坂銀山の銀など鉱山資源が採掘できた。

そして明治政府は秋田県に投資した。


その結果として1910年には秋田鉱山専門学校が設立され、

秋田鉱山専門学校は後に秋田大学となった。

 

秋田鉱山専門学校はドイツのフライブルク大学を模範とし、

京都帝国大学から教授を招いた。

 

彼らが伝えたのがラグビーであった。

当時京都はラグビーの強豪勢であった。

全国高校ラグビー大会の優勝校は

第1回から11回までの11回連続京都の高校が優勝した。


このラグビーの文化は秋田中学校や秋田工業へと伝わった。

秋田工業は1933年の第16回大会で優勝して以来過去15回優勝している。

 

先述の児玉樹選手や

日本人で唯一ラグビー世界選抜に3度選ばれた

吉田義人選手も秋田工業のOBである。


秋田県立秋田高校は秋田藩の藩校明徳館の伝統を引き継ぎ、

東北地方を代表する名門校である。

 

東大合格者数は仙台二校(17人、39位)、

盛岡第一(13人、54位)に次ぐ12人で東北では3番目である。

 

第27代東京大学総長佐々木毅総長も秋田高校の卒業生である。

秋田県の旧帝大合格者数は

18歳人口1万人あたりでは

宮城県に次ぐ東北地方で2位だ。

ここからも秋田県の教育レベルの高さがうかがえる。

 

このように戊辰戦争から150年が経つ現代でも

当時の名残は大きく残っており、

特にここ東北地方ではその傾向が顕著である。

 

これからも東北地方が抱える課題について学んでいきたいと思う。


*参考文献
福島県立安積高等学校ホームページ 学校概況・沿革

https://asaka-h.fcs.ed.jp/学校案内-1/学校概況・沿革

 

福島県立会津高等学校ホームページ 学校の沿革

https://aizu-h.fcs.ed.jp/about

 

総務省統計局ホームページ 平成27年国勢調査

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&bunya_l=02&bunya_s=01&tstat=000001080615&cycle=0&tclass1=000001089055&statdisp_id=0003149249&result_page=1&second=1&second2=1

 

上昌広(2019) 「地域の人材育成」,『厚生福祉』,2019年3月19日号,p2,時事通信社

         東京大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学の合格者数は

         週刊朝日3月29日号より
         北海道大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学の合格者数は

         サンデー毎日3月24日号より

         各都道府県の18歳人口は平成27年国勢調査時の15歳人口を用いた。

 

 

 

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