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オンライン診療で「緊急避妊薬」はどうなる? 医師も危惧するGW10連休中の処方

2019/05/25

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はAERA dot.(2月13日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2019021200129.html

 

山本佳奈

2019年5月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

オンライン診療緊急避妊薬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先月23日、緊急避妊薬を対面ではなく、

パソコンやスマートフォンを使用した

オンライン診療によって処方してもらうことについての検討が、

厚生労働省で始まりました。

 

厚生労働省の

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、

オンライン診療とは

「遠隔医療(情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為)のうち、

医師―患者間において、情報通信機器を通して、

患者の診察及び診断を行い診断結果を伝達する等の診療行為を、

リアルタイムで行う行為」のこと。

 

病院に行かずとも、

画面を通して医師の診察が受けられるというものです。

 

医師法第20条では、

「医師は、自ら診察しないで治療をし、

若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、

自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、

又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」。

 

つまり、医師による「無診療治療」は禁じられています。

 

ですが、厚生労働省は、

情報通信機器を用いた診療は

医師不足の地域に対する対処や

働き方改革への対応に有用であるとのの立場で、

オンライン診療を推進。

 

昨年4月には、

オンライン診療の保険適応が開始されたのでした。

 

■オンライン診療が普及しないワケ

当初、パソコンやスマートフォンを用いた診療の普及が

より一層進むだろうと考えられていたようです。

 

しかしながら、さほど普及していないのが現状です。

なぜなのでしょうか。

 

一つ目の要因として、

生活習慣病や難病など一部の疾患に限定されていることが挙げられます。

 

花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患や高血圧など、

病状が安定している場合、
画面を通してのオンライン診療を活用すれば便利だと思われる病気が、

保険適応から外れてしまっているのです。

 

今の時期、

そろそろ本格化する花粉症の薬を希望して受診にきた方からは、

病院を受診して薬を処方してもらうだけなのに、

「(病院で)インフルエンザに感染してしまいそうだわ」と

心配する声が多々あります。

 

高血圧の薬をずっと内服している方で、

勤務が忙しくて受診がなかなかできず、

ようやく受診できるまで

長い時には1カ月も内服しない状態が続いてしまうことが頻繁にある、

という方もたまに見かけます。

 

■細かなルールが普及の足かせに

もちろん、病院に受診していただくことで、

体調不良を医療者側が察知できることもあります。

画面越しではない対面診察を希望される方もたくさんいます。

 

けれども、病状が安定していたり、

花粉症のような毎年同じ症状で同じ薬を希望したりするケースは、

オンライン診療であれば負担になることはなく、

服薬も中断なく継続でき、

患者さんのためになるケースも多々あるのではないかと、

日々感じる次第です。

 

さらに、最初の診察は対面による診察が義務であること、

同じ医師が半年以上診察し、

3カ月に1回は対面診療を組み合わせる必要があること、

さらには、原則として30分以内に通院できる患者に限られていることなど、

細かなルールが決められていることも、要因の一つでしょう。

 

定期的に診療することで得られる管理料が、

対面診療と比較して低く設定されていることが、

医療機関が積極的に導入することを

鈍らせている最たる原因なのかもしれません。

 

注目すべきは、

「医薬品の投与を速やかに行わなければ

患者の生命・身体に危険が及ぶ可能性が高く、

対面での診療を待つことが望ましくない場合には、

医師の判断の下、オンライン診療に基づき

医薬品を処方することが許容され得る。」という文言です。

 

■緊急避妊薬がオンライン処方の俎上に?

そもそも、緊急避妊薬とは、避妊に失敗したときに、

妊娠を回避するために緊急的に女性が内服する薬のこと。

 

性交渉の際にコンドームが破れた、

または穴が空いてしまった、

コンドームが性交渉の途中で外れてしまった、

そもそも避妊をしていなかった、といった理由で、

妊娠を望まないときに、

緊急的な手段として性交渉の翌朝に服用されることが多いことから

「アフターピル」とも呼ばれています。

 

日本では、

医師の処方なしに緊急避妊薬を手に入れることはできません。

保険診療ではなく自費診療であり、

費用も約2万円前後と高額です。

 

ちなみに、世界の多くの国々では、

市販薬として薬局やドラッグストアで手に入れることができます。

 

費用も1000円から2000円と手頃な価格に設定されています。

英国やカナダなど無料で提供している国や地域もありますが、

高くても5000円で手に入るのです。

 

日本で唯一承認されている緊急避妊薬は、

ノルレボ錠です。

 

性交渉後72時間以内に1錠(1.5mg製剤)内服すれば

妊娠を防ぐことができます。

 

エラという性交渉後120時間以内に内服すれば

妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬も存在しますが、

日本の場合、輸入して処方している病院もあれば、

そうでない病院もあるのが現状です。

 

緊急避妊薬に

たどり着くことができなかったというケースは

多々あると思われます。

 

実は、2017年に「ノルレボ錠」を薬局で

薬剤師の指導のうえ購入できるようにするか、

厚生労働省の検討会で議論になったことがありました。

 

性教育が不十分であり、

乱用や悪用の心配があるとして見送りとなってしまったのですが、

その検討会では、緊急避妊薬のオンライン処方についても

話が出ていたと言います。

 

確かに、そのような心配がなされてしまっても仕方ないと思います。

性教育が十分でないことは明らかであり、

アフターピルさえあれば、避妊しなくてもいい、

と誤った認識がなされてしまう可能性は十分あるからです。

 

また、男性が女性にアフターピルを無理やり飲ませる、

というケースも発生するかもしれません。

 

■GW10連休がアフターピル処方に影響する?

さて、今年のゴールデンウィークは10連休。

 

医療機関によって休みにするのか、

通常通りの診察とするのか、

休日対応となってしまうのかなどと差があると思いますが、

アフターピルを処方してほしくても

「病院が空いておらず内服できなかった」というケースが

少なからず発生してしまうことは容易に想像がつきます。

 

3連休明けに処方してもらおうと思っていたら72時間経過していた、

ということが現状で生じているのですから。

 

緊急避妊薬のオンライン診療処方についての検討が始まったことは

大きな一歩だと思います。

 

大型連休を考慮すると、

薬局で手に入れられるような環境づくりと、

同時に教育も行って行くことが

求められているのではないでしょうか。

 

 

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