各分野の専門家が医師の転職や開業などに必要な情報を配信します。

トップ > 医師からの情報発信 > 医師法21条(異状死体等の届出義務)に関する初の厚労省Q&A(質疑応答集)の策定・公表

医師法21条(異状死体等の届出義務)に関する初の厚労省Q&A(質疑応答集)の策定・公表

2019/06/13

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿は月刊集中5月末日発売予定号からの転載です。

井上法律事務所所長 弁護士
井上清成

 

2019年5月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

医師法21条

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1 厚労省がQ&Aを策定・公表

厚生労働省医政局医事課は、

平成31年2月8日に

「医師による異状死体の届出の徹底について」と題する通知を発出し、

3月8日に同通知をその4頁に新たに記載した

「平成31年度版 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」を改訂した。

 

そうしたところ、

医師法21条(異状死体等の届出義務)に関する

「これまでの解釈との整合性等について疑義が生じているとの懸念が指摘され」

(4月24日付け厚労省医政局医事課事務連絡より抜粋)てしまったのである。


そこで、厚労省としては緊急に、

吉田学医政局長が3月13日に衆議院厚生労働委員会で、

翌14日には参議院厚生労働委員会でも、

いずれも「従来からの解釈と何ら変わることもなく、

同趣旨を改めて確認させていただいた」だけだとして、

「同趣旨の内容」だと言い切って釈明した。

 

通知の発出者である佐々木健医政局医事課長自身も、

同じく14日に、

一般社団法人医療法務研究協会主催の

「医師法第21条に関する懇談会」で、

やはり吉田局長と同じ内容にて断言したのである。


しかも、医政局医事課は、

事の重要性に鑑みて、立て続けに4月24日に、

医師法21条に関する「質疑応答集(Q&A)」を取りまとめて公表した。

 

そして、やはり同日に、

「平成31年度版 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」に

その「質疑応答集(Q&A)」を追補すると共に、

同4頁に記載したばかりの2月8日付け通知

「医師による異状死体の届出の徹底について」を、

今度は同記入マニュアルからきれいに削除してしまったのである。


したがって、

これをもって医師法21条に関する疑義は払しょくされた。

 

むしろ、医師法21条では初となるQ&Aによって、

解釈運用が今までと同じだということが

さらに明瞭になったと言えよう。

 

そこで、以下では、

この明瞭となった医師法21条に関する

「質疑応答集(Q&A)」を紹介する。

 

2 医師法21条に関する質疑応答集(Q&A)

4月24日に厚労省が取りまとめて公表したQ&Aの正式な名称は、

「『医師による異状死体の届出の徹底について』に関する質疑応答集(Q&A)」と言う。

 

ここでは、このQ&Aの要旨を箇条書きにして列記する。

 

(1)

「医師は、死体の検案の際に、

様々な情報を知り得ることがあることから、

それらの情報も考慮して死体の外表を検査し、

異状の判断をすることになることを明記したものにすぎない。」

 

この事柄は平成24年10月26日の当時の田原医事課長の発言

(基本的には外表を見て判断するということですけれども、

外表を見るときに、

そのドクターはいろんな情報を知っている場合もありますので、

それを考慮に入れて外表を見られると思います。

…あくまでも、検案をして、死体の外表を見て、

異状があるという場合に警察署のほうに届け出るということでございます。)と

「同趣旨」のことであると明記されている。

 

(2)

「死体の外表の検査のほかに、

新たに『死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況等諸般の事情』を

積極的に自ら把握することを含ませようとしたものではない。」


この回答は、

「本通知は医師法第21条の『検案』に死体の外表の検査以外の行為を

含ませようとするものか」という問い(Q&Aでは問3)に

答えた形のものであることからして、その意味は明瞭だと言えよう。

 

(3)

「届出の要否の判断は、

個々の状況に応じて死体を検案した医師が

個別に判断するものであるとの従来からの解釈を変えるものではない。」

 

この結論は、

平成24年10月26日の当時の田原医事課長と

中澤構成員のやり取りを受けてのことである。

 

当時のやり取りは、

 

「田原医事課長 ですから、検案ということ自体が

外表を検査するということでございますので、

その時点で異状とその検案した医師が

判断できるかどうかということだと考えています。

 

中澤構成員 判断できなければ出さなくていいですね。


田原医事課長 それは、もしそういう判断できないということであれば

       届出の必要はないということになると思います。」

 

というものであった。

 

特に重要なことは、

田原医事課長が「もしそういう〔異状と積極的に〕判断できないということであれば」

届出の必要はないと明言したことであろう。

 

積極的な異状の判断がない限りは、

届け出なくてよいのである。

 

(4)

「本通知は、医師法第21条の届出義務の範囲を拡大するものではなく、

医療事故等の事案についての届出についても、

従来どおり、死体を検案した医師が個々の状況に応じて

個別に判断して異状があると認めるときに届出義務が発生することに変わりない。」

 

この回答は、

「本通知は医療事故等の事案について

警察署への届出の範囲を拡大するものか。」という問い(Q&Aでは問4)に

真正面から答えたものである。

 

Q&Aの冒頭の

「通知の発出の趣旨は何か。」という

問い(Q&Aでは問1)に対しても、

「医師が検案して異状を認めるか否かを判断する際に

考慮すべき事項を示したものであり、

医師法第21条の届出を義務付ける範囲を新たに拡大するものではない。」と

断言していることからしても、

今回のQ&Aで最も強調したかった点にほかならない。

 

 3 医師法21条問題はこれで解決済み

今回のQ&Aでは、

都立広尾病院事件の判決(最高裁判決のみならず、東京高等裁判所判決も)も

引用して追認した。

 

したがって、医師法21条に関する問題を、

医療事故等の事案も射程範囲に入れて解決したものなのである。


2月8日付け医事課長通知が発出された直後には

懸念も示されたこともあったが、

今回のQ&Aを経て明瞭な解決を得ることができた。

 

結果としては、

かえって良かったと評しうるところでもあろう。

 

 

診療圏調査バナー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お問い合わせはこちら