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ママ・パパたちへ、発熱を味方につけましょう!

2019/07/25

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

帝京大学大学院公衆衛生学研究科
ナビタスクリニック川崎小児科
ときわ会常磐病院小児科
高橋謙造

 

2019年7月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

子ども夏風邪発熱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏に向かい、子どもたちの間では、

夏風邪が流行る季節が来ました。

夏風邪では、発熱に悩まされるママ、パパも増えてきます。


今回は、一臨床医、一小児科医として、

森田麻理子先生の投稿にインスパイアされて投稿します。

 

お子さんが小さいときに熱が出ると心配ですよね?


脳に害が出るんじゃないか?

熱が続くと肺炎になるんじゃないか?と心配は尽きません。


おそらくは、最も熱の患者さんと向き合う頻度が多い

医療職のうちの一つが小児科医です。


私は、受診した子どもがどんなに軽症に見えても、

そのママ、パパにとって初の子どもで、

特に初めての発熱であれば、

じっくりと説明をするようにしています。


医療者にとっては軽症であっても、

ママ、パパにとっては初の経験であり、

重症に感じているかもしれないからです。


今まで、熱にまつわる様々な心配事を相談され、

勉強させていただきました。


今回は、そのご恩返しも兼ねて、

子どものお熱に関する知識や対処法をお伝えします。

 

発熱に直面するとママ、パパの不安はたくさんあることと思います。

でも、過大な不安を持つ必要はありません。


発熱は、身体に有益でありこそすれ、

害をもたらすことはほとんどないのです。

 

1. 発熱は有害か?


通常、ウイルスや細菌などの感染が起こると、

発熱が生じます。


発熱というと、

誰もが心配になるのが脳障害ですが、

脳障害は通常の発熱で生ずることはまずありません。

 

42度を超えるような発熱であれば脳障害の懸念は出てきますが、

通常の感染症では、

それがインフルエンザであろうと

アデノウイルスであろうと

42度を超える事は無いように人体は出来ているのです。

 

42度を超えるような事態は、

極端な脱水や熱中症の場合がほとんどなのです。


欧米の病院サイト等を見ても、

発熱への過剰な心配が不要であることが記載されています。


特に、(3)のテキサス小児病院のサイトでは、

「発熱にまつわる5つの迷信」という形でメッセージが発信されています。

 

(1)https://www.seattlechildrens.org/conditions/a-z/fever-myths-versus-facts/
(2)https://medlineplus.gov/ency/article/003090.htm
(3)https://www.texaschildrens.org/blog/2016/11/top-5-fever-myths-and-facts

 

発熱の原因が感染症の場合を見ると、

小児に対して悪さをする病原体の代表格はウイルスです。

このウイルスは37度程度で最もよく繁殖すると言われています。

 

細菌の繁殖もほぼ同様です。

つまり、ちょっと微熱っぽい時が、

病原体が繁殖しやすい時なのです。

 

一方で、身体の免疫力の方はというと、

発熱とともに活性化してきます。


仮に体温が38、39、40度と上がって行ったらどうでしょう?

身体に病原体がいる場合、その繁殖力は鈍り、

免疫力は活性化していくのです。

 

つまり感染症の治療になるのです。


だから、発熱を放置して肺炎になるというのは理屈に合いません。

ただし、肺炎になってしまっている場合に、

その治療をしようとして、

体温を必死に上げているという状況は考えられます。

 

今までの話をまとめると、

熱は脳に害のあるものではなく、

それが高いほど治療効果が高いという事にもなります。

 

例えば、発熱初期に悪寒(ふるえ)が生ずる事がありますが、

これは筋肉を震わせる事で、

熱を産生しようとしている反応なのです。

 

つまり、熱を早く上げようとする動きです。

これほどまでに、人体は、

発熱する事で病原体から身を守ろうとするのです。


でも、いいことばかりではなく、

発熱時の不快感をどうにかしたいですよね?

発熱時の対処法について、次から見ていきましょう。

 

2.発熱のメカニズム:手足が冷たい時が辛い時


発熱初期には、寒気が続いて辛い時間が最初に来ます。

この時には、身体のだるさも強くなります。

 

まだ話の出来ない年齢の子だと、

「抱っこ、抱っこ!」になるか、

ぐずって泣き止まない状態になるでしょう。

 

大人でいうと、寒気がして身体がだるくて、

布団に入ってもつま先が冷たくて眠れたものではなく、

ガタガタ震える時が発熱初期にあたります。

 

しかし、やがて眠りが訪れ、

目がさめると汗ばんでおり、

一所懸命くるまっていたはずの掛け布団は

蹴飛ばしていませんか。

 

そして、ちょっと身体が楽になったかな?と感じるようになります。

 

発熱状態に慣れて来るのです。

子どもでいうと、手足が冷たいうちは、

まだ発熱の始まりの時期なのです。

 

その時は寒気を感じてぐずります。

やがてぐずっていた子達が、

だんだんとウツラウツラしてきて眠り始める時間が、

まさに熱に慣れて来た時間なのです。

 

治療の必要があってせっかく出す熱なので、

身体はそれに慣れようとします。

身体は合理的に出来ています。


このメカニズムを知っていれば、

お子さんを上手に発熱させる事が出来ます。

 

手足を触って冷たい感触があるうちは、

寒気があって可愛そう。

 

もし、本人が寒いのか暑いのか分かりにくい時には、

自分の手のひら(大抵は、温かい)を

お子さんのつま先に当ててみて下さい。

 

もし、お子さんが足を押し付けて来るようなら、

寒気があって不快なので、

温かい手のひらの体温を求めているのです。

 

だったら、毛布などで愛情一杯にくるんであげればいいのです。

「抱っこ、抱っこ!」で離れないのであれば、

しばらくは抱っこしておいてあげましょう。

 

熱が身体の隅々にまで伝わりきれば、

やがて眠り出してくれます。

 

そして、しばらくすると、

布団にくるまっていたはずの我が子は、

毛布を蹴っ飛ばしたり、布団から転がり出たりしています。

 

こうなったら、

「もう熱は伝わり切ったから、温めないで。」というサインなのです。

涼しい格好にしてあげましょう。


「昔ながらの知恵」と称して、

いつまでも毛布でぐるぐる巻きにしていると、

熱がこもりすぎてしまい、

脱水を起こしてしまいますので、注意して下さい。

 

3.なぜ水分を飲んでくれないか?


育児書などで発熱の項目を見ると、

「発熱した時には脱水に注意して下さい。」と

書いてあることが多いようです。

 

そこでママ、パパは、必死で水分を取らせようとします。

しかし飲んでくれないのです、

手足が冷たいうちは特に!です。


この理由も、前述の発熱のメカニズムを考えれば簡単です。

体温を上げたくて必死な時に、

水分を摂ってしまうと身体が内側から冷えてしまうからなのです。

 

ただし、発熱初期に水分を摂らなくても、

それで脱水になる事はないので、

心配せずとも大丈夫です。

 

4.なぜ、熱冷まし用シートにぐずるか?


「ウチの子は、何度シートを貼っても嫌がってすぐに剥がしちゃうんです。」

という悩みもよく聞きます。

 

これも理由は簡単。

「貼る時期が早すぎる。」のです。

 

せっかく上げようとしている熱を、

奪い取られないために、

本能的に冷やされるのを避けるのです。

 

ちなみに、冷却用シートは、

どんなに良質なものでも数時間しか効果は持続しません。

 

効果がなくなっても貼り続けていると熱をこもらせてしまい、

不快感を増加させてしまうのです。


冷やすのにちょうどいい時期は、

手足がすっかり温まってからです。

 

それからであれば、

余分な熱を取ってあげる事は、

不快感を取る事にもなります。

 

その場合、シートを貼るより、

氷枕や冷却材で冷気を送り込んであげる方が効果的です。

 

頭を冷やせれば最高なのですが、

十分に温まっていても嫌がる子はいます。

 

その場合には、

子ども用のリュックに冷却材を入れて背負わせるという手があります。

 

この戦略は、患者さんのママ達に教わったのですが、

自分の子どもなどで試してみると非常に効果的でした。

ママの知恵は強いのです。

 

5.解熱剤はいつ使えばいい?


今まで読んでいただいた方々は、

「解熱剤はいつ使えばいいのか?」という疑問が

湧いて来る事でしょう。

 

実は、原則的には、解熱剤は必要な薬ではありません。

でも、「38.5度以上あったら使って下さい。」と聞いた事はありませんか?

 

実は、この38.5度には科学的な根拠が無いのです。

あえて言えば、「38.5度以上あったら、使ってもいいよ。」が正しいので、

「是非、使って下さい。」は間違いなのです。

 

副作用としての低体温を起こしにくいのが38.5度以上と言われています。

だから、使ってもいい。

 

だけど、機械的に38.5度以上になったらすぐに使うのはやめましょう。

身体としては一生懸命にあげようとしている熱なのに、

それを強引に抑え込んでしまうと、

薬が切れるのを待ってすぐに体温が上昇します。

 

そこでまた解熱剤の使用を繰り返すと、

体力を消耗してしまうのです。


ちなみに、解熱剤で深部体温自体を下げるのと、

周囲から冷却するのは全く意味が違います。

 

免疫力を上手に活性化してあげるためには、

深部体温を変化させるよりも、

体表の熱を取って不快感を減らしてあげる冷却の方が効果的なのです。

 

6.保育園に入ったら熱を頻繁に出すようになった?


ジジババ達が、目尻を吊り上げて、

こう訴えて来る事があります。

 

「昔はそんなに発熱しなかった。だから、ウチの孫は絶対におかしい。

親が忙しいから、心因性でサインを出しているんだ!」と。

 

これは、半分正しく、半分間違っています。


と言うのは、昔は0歳児、1歳児保育という

サービスがそもそも存在しなかったので、

子どもが集団に入る事が少なかったのです。

 

つまり、おばあちゃん、おじいちゃん達が

現役のママ、パパだった時代には、

頻繁に発熱する乳幼児は少なかったでしょう。


しかし、近年は0歳児保育も当たり前になっています。

つまりまだ免疫発達が未熟な小さな子どもがたくさん集まって来るのです。

 

ここに風邪の病原体が入り込んだらどうでしょう?

 

確実に感染して、発熱、鼻汁等の症状が出ます。

発熱がおさまったと思って保育園に連れて行くと、

またあっという間に発熱を繰り返します。

 

発熱する事で、免疫を活性化させて真面目に毎回戦っているのです。

それが証拠に、1年から1年半くらい経過すると、

発熱の頻度は減って来ます。

 

この状況は、共働きが必要な家族では

ある程度やむを得ない状況でしょう。


心因性ではないのです。

 

以上のように、免疫が未熟な子どもが

ある程度発熱を繰り返すのは仕方がない事なのです。

 

だったら、発熱を上手に味方に付けて、

子どもの免疫的成長を支えるようにしましょう。

 

 

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