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睡眠薬で認知症になるの?睡眠薬の認知機能低下への影響

2019/08/18

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

睡眠薬で認知症になるの?睡眠薬の認知機能低下への影響

 

睡眠薬を一度は飲まれたことがある方は多いのではないでしょうか?

現在発売されている睡眠薬は安全性が高く、

用量用法を守っていれば基本的に安心して服用できるお薬です。

 

しかしながらお薬のことで詳しい方は、

「睡眠薬のせいで認知症のリスクがあがる」ということを

聞いたことがあるかもしれません。

 

睡眠薬は高齢者に使われることも多いので、

認知機能を低下させるならば使いたくないですね。

確かに睡眠薬によって

一時的に認知機能が落ちてしまうことは、よく経験します。

 

ですが睡眠薬を長期に服用していて認知機能が低下してしまうかどうかは、

まだ結論がついていません。

 

認知機能が低下するという報告がある一方で、

それを否定する報告もあるからです。

 

ここでは、睡眠薬を服用していると認知症になるのかどうかについて、

現在分かっていることをお伝えしていきます。

 

その上で睡眠薬の適性な使い方を、

長期的な認知症への影響という面から考えていきたいと思います。

 

睡眠薬認知症

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.認知症になるかもしれない睡眠薬とは?

ベンゾジアゼピン受容体に作用する睡眠薬では、

認知症のリスクを高めるのではないかと懸念されています。

 

睡眠薬による認知機能低下についてお話をする前に、

どの睡眠薬が認知症につながる可能性が言われているのかをお伝えしていきましょう。

 

日本では現在、主に4種類の睡眠薬が使われています。

  • ベンゾジアゼピン系薬剤:ハルシオンレンドルミンデパスなど
  • 非ベンゾジアゼピン系薬剤:マイスリーアモバンルネスタ
  • メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
  • オレキシン受容体作動薬:ベルソムラ

 

この中でもっともよく使われているものは、

ベンゾジアゼピン系睡眠薬になります。

 

非ベンゾジアゼピン系は

まるで「ベンゾジアゼピンでないお薬」のようにみえますが、

親戚のお薬です。

 

ベンゾジアゼピン骨格と呼ばれる構造を持たないというだけであって、

作用の仕組みとしては同じベンゾジアゼピン受容体に作用します。

 

ただ、その作用が睡眠作用にだけにしぼられているお薬なのです。

 

認知症と関連しているかもしれないといわれている睡眠薬は、

ベンゾジアゼピン系受容体に作用するお薬です。

 

非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系よりは影響が少ないと思われますが、

少なからず影響があると考えられています。

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、

脳内のGABAの働きを強めて脳の活動を抑えることで効果を発揮します。

 

GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、

神経伝達物質とよばれます。

 

GABAを神経が受け取ると、

神経細胞の活動が抑えられます。

こうして睡眠作用がもたらされるのです。

 

このように、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が

認知症のリスクを高めるかもしれないと考えられてきています。

 

注意が必要なのは、

ベンゾジアゼピン系は睡眠薬だけでなく

抗不安薬としても使われていることです。

 

ベンゾジアゼピン系に関係するお薬として、

まとめて考えていく必要があります。

 

2.睡眠薬による認知機能低下とは?

睡眠薬の短期の影響として、

前向性健忘やせん妄があげられます。

 

睡眠薬の長期の影響として、

認知症のリスクが高まることが懸念されています。

 

睡眠薬による認知機能低下を考えていくに当たっては、

短期の影響と長期の影響に分けて考える必要があります。

 

  • 短期の影響:前向性健忘・せん妄
  • 長期の影響:認知症

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、

GABAによって脳の活動を低下させることによって効果が発揮されます。

 

薬が効いている時には、

物事を記憶することはもちろんのこと、

いろいろな情報を判断する認知機能は低下してしまいます。

 

それが病的な症状としてあらわれるのは、

前向性健忘やせん妄といった形です。

 

前向性健忘とは、

睡眠薬を服用してからの記憶が無くなってしまうことです。

 

脳の覚醒が中途半端な状態となり、

普通に行動しているのですが記憶ができなくなってしまいます。

 

せん妄とは、一時的に意識がなくなってしまう状態です。

脳の機能が低下してしまうために生じる状態で、

幻覚や妄想が見えたりして興奮することもあれば、

不安になって落ち着かなくなったりします。

 

外からは目立たなくても、

急に話がかみ合わなくなってしまうこともあります。

 

このような短期の影響は、

お薬の効果が薄れるにつれて改善していきます。

睡眠薬がなくなれば元の本人に戻ります。

 

これに対して認知症は、

睡眠薬の長期の影響によるものです。

 

睡眠薬を長期間使っているということは、

脳の活動が抑えられている状態が長く続くということです。

 

「頭を使わなければボケてしまう」といわれますが、

その感覚で考えれば、

睡眠薬は認知機能に良い影響はなさそうですね。

 

睡眠薬を使うことで認知症につながるのではないかということは、

以前から懸念はされていました。

 

しかしながら認知症を発症するのは、

かなり時間がたってからです。

 

それを科学的に証明するには年月が必要になります。

医者が認知症への影響を実感するにも、

長い年月が必要になるのです。

 

ですから、睡眠薬によって認知症のリスクが高まるかどうかは、

はっきりと結論はつけられていません。

 

ですがこのような長期の影響は、

薬をやめれば改善するものではありません。

 

このため2014年に発表された

「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」では、

疫学調査の結果は一定せず、結論がでていません。

としながらも、

睡眠薬の服用期間や用量を増やさないように

心がけながら治療をすすめていくべきとしています。

 

それでは具体的な報告について、

最近報告された研究も踏まえてみていきたいと思います。

 

3.睡眠薬による認知症リスクの研究結果

睡眠薬によって認知症リスクが高まるかについては、

一定した見解が得られていません。

 

しかしながら、

睡眠薬は認知症のリスクを高めると判断する方が妥当かと思います。

 

それでは実際に、

睡眠薬による認知症リスクが高まるかどうかの研究結果が

どのようになっているかみていきましょう。

 

研究結果は一致していないと申し上げましたが、

いくつかの論文をみていると傾向があります。

 

睡眠薬によって認知症リスクは高まらないという結果になったものは、

高齢者を対象にした研究で短期間をみたものが多いということです。

 

それに対して認知症リスクが高まる結果になったものは、

数年~数十年の長期にわたってみたものが多いということです。

 

このことは先ほどの

「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」でも記載されていて、

認知症のリスクが高まるという報告では、数年~十数年間にわたる長期服用が原因となって、服用していない方に比較して1.5~3倍程度罹りやすくなるようです。

となっています。

 

最近の研究を調べてみたところ、

2015年に2つの研究結果が報告されています。

 

どちらも、ベンゾジアゼピン系薬剤の使用者は

認知症発症のリスクが増大するといった報告でした。

 

1つ目の研究では、

10研究のうち9研究において

ベンゾジアゼピン系薬剤使用者で

認知症リスクが増加(有意だったものは8研究)するといった報告でした。

認知症のリスクは1.5~2.0倍に増大していました。

 

2つ目の研究では、

ベンゾジアゼピン系薬剤の使用経験がある人はない人に比べて、

認知機能低下リスクが49%増大しているといったものでした。

 

このようにみていくと、

睡眠薬は認知機能低下の影響は

少なからずあると考える方が妥当かと思います。

「頭を使わなければボケる」という感覚的な部分でも納得しやすいです。

 

4.認知症のリスクがあるので
  睡眠薬は使わないべき?

不眠自体が認知症の始まりであることもあります。

また不眠が続くことも認知症のリスクになります。

このため、必要なお薬は適切に使っていく必要があります。

 

認知症のリスクを高めるならば

睡眠薬を使うべきではないかというと、

決してそんなことはありません。

 

そもそも不眠になってしまうこと自体が、

認知症に先行することもあります。

 

例えば認知症として代表的なアルツハイマー病では、

レム睡眠(夢を見ている睡眠)の減少という

特徴的な睡眠障害がみられます。

 

このように認知症自体が不眠症をもたらすことがあるので、

不眠になっている時点で認知症がはじまっている可能性もあるのです。

 

このようなケースに限らず、

不眠症自体が認知症のリスクになることもわかっています。

 

寝れていない状態が続けば脳の活動も低下してしまいますので、

結果として「頭を使わなければボケてしまう」と考えれば

理解しやすいですね。

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は即効性があって、

その効果もしっかりとしています。

 

ですからその恩恵を受けている患者さんもとても多く、

睡眠薬によって安心して生活をおくれている方も少なくありません。

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると、

認知症への影響が少ないと考えられているロゼレムは

効果が不十分であることが多いです。

 

抗不安薬ではセディールがありますが、

これも効果が乏しいです。

 

最近発売されたベルソムラはこれらに比べると効果が期待できるので、

代替薬となる可能性を秘めています。

 

ですから睡眠薬は、

メリットとデメリットを考えて適切に使っていく必要があります。

それではどのように使っていけばよいのでしょうか?

続けてご説明していきます。

 

5.認知症への影響も考えて
  睡眠薬をどう使うべきか

若者では、睡眠薬を漫然と使わない意識が重要です。

高齢者では、生活習慣や原因から取り組めることから行います。

 

必要な場合は適切に睡眠薬を使えば、

過度に心配することはありません。

 

それでは認知症への影響という点を踏まえて、

睡眠薬をどのように使っていくべきかを考えていきましょう。

認知症への影響を考えていくので、

若者と高齢者に分けてみていきましょう。

 

認知症への影響といわれると、

若い方はピンとこないかもしれません。

 

今すぐの問題ではないですし、

薬もよくなったら止めればよいと考えている方も多いと思います。

 

そう思えているのならばよいのですが、

睡眠薬を使い始めると漫然と使い続けてしまうことが多いのです。

 

年をとるにつれて、

不眠にはなりやすくなっていきます。

 

ですから高齢者では、

不眠で悩んでいる方がとても多いです。

睡眠薬を服用している方も、

高齢者では10人に1人と報告されています。

 

高齢者では、そもそもお薬をできるだけ使いたくはありません。

お薬は肝臓や腎臓に負担にもなってしまいますし、

身体の病気で多くの薬を服用している方も少なくありません。

 

まずは患者さんが不眠になった原因をみていきます。

原因があるのなら、その原因を取り除く治療をしていくべきです。

 

うつ病やストレスなどの心の問題だけでなく、

痒みや痛みといった身体の問題、

頻尿でトイレが近いということだってあります。

 

その上で不眠を改善しなければいけないならば、

患者さんの生活状況によって

どれくらいのスピードで不眠を改善していくかを考えていきます。

じっくりと改善していけるならば、

生活習慣の改善からはじめていきます。

 

せん妄や認知症リスクを考えると、

できるだけ認知機能に影響を与えないお薬が望ましいです。

 

睡眠薬を使うならば、

ロゼレムやベルソムラといった

認知機能低下が少ないと考えられている

睡眠薬から使っていきます。

 

それでも改善が不十分な時は、

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬から使っていきます。

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬と変わらないという報告もありますが、

少しでも認知機能低下の影響が少ない方がよいです。

 

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は作用時間が短いお薬が多いので、

中途覚醒や早朝覚醒が目立つ場合は

ベンゾジアゼピン系睡眠薬に頼らなくてはいけないことも少なくありません。

 

ですが適切に使用していれば過度に心配することはありません。

医師と相談しながら、あなたにあったお薬をみつけてください。

 

まとめ

睡眠薬は認知症のリスクを高めるのかについて、

現時点で分かっていることをまとめていきました。

 

確かに睡眠薬が認知症のリスクを高める懸念はありますが、

過度に心配しないでいただきたいです。

 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、

お酒とその作用が似ています。

 

アルコールを飲み続けている方が

よっぽど認知症のリスクが高まります。

 

睡眠薬による認知症を心配するのでしたら、

まずはお酒を控える方が先決です。

 

不眠症が続くことは精神的に辛いですし、

そのこと自体が認知症のリスクにもなります。

 

必要最小限の薬にしていくことは大事にしながらも、

必要なときはしっかりと睡眠薬を使っていきましょう。

 

 

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