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国立大学医学部一般入試地域枠の学生の理不尽な現状 ~道義的責任があるのはどちらか?~

2019/08/27

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

国立大学地域枠学生の保護者
田中優(仮名)

 

2019年8月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

地域枠離脱者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019.7月5日付け産経新聞

 

― 地域枠出身者が指定外の病院に勤務していたことが判明し

      各病院の補助金減額にされることになった。

      いずれも卒業前に奨学金を全額返済し、地域枠から離脱していた。-

 

      また、基となる医道審議会資料には

   「地域枠離脱者の道義的責任は残る」との記載

 

上記の記事を見て驚きました。

 

おそらく各学生の入学募集要項には

指定病院に勤務する意思がなくなれば

奨学金を返還できると記載されているはずだからです。

 

返済して離脱することに何の問題があるのでしょうか。

 

募集要項に明記していながら

離脱を認めない大学の方にこそ

道義的責任があるのではないでしょうか。

 

私の子は国立大学医学部地域枠の学生です。

 

高校生の時に無医村で働く医師の話に感動し、

地域医療に憧れを持つようになりました。


医学部受験のために高校3年の12月に

いくつかの国立大学前期試験の募集要項を取り寄せました。

 

そこで見つけたのがいわゆる地域枠

(地域枠との明記はありませんでしたが)でした。

 

一般入試を受けて希望すれば

上位者からいわゆる地域枠になれる

(一般枠が不合格の場合には地域枠は不合格になるが

地域枠で不合格になっても一般枠で合格することはある

=地域枠の優遇入試ではない)と明記されていました。

 

義務要件に関しては、

わずかの記載でしたが、数年間の縛りがあり、

毎月の奨学金も受給できて、

県内勤務の意思がなくなれば返還することも可能と書いてありました。

 

電話で説明を求めましたが

「あまり詳しいことは言えないが関心があるならぜひ受けてみて下さい。

チャンスが二倍になりますよ。」とのことでした。

 

このような制度にはあまり馴染みがなく不安もありましたが、

地域医療について優先的に勉強させてもらえ

大事にしてもらえるのだろうと思っておりました。

 

しかし、入学すると優先に地域医療を勉強させてもらえる所ではなく、

誰もが行きたがらない地域に強制的に行かせる所だと気づきました。

 

学内では地域枠の多くは推薦入試入学しており、

地域枠=頭が悪い=またはコネ枠 とレッテルが貼られており、

一般入試(上位)で入った少数の地域枠の生徒は

ショックを受けるようです。

 

中に入り知れば知るほど

この制度がおかしいと感じるようになり、

色々と悩んだ結果、

学生募集要項の記載の通り奨学金を返還することを申し出ました。

 

しかし途端に先生方からの再三にわたるアカハラ

(医師の世界は狭いから君の将来はないよ)、

圧迫面接を繰り返されるようになり、

返還に応じてはもらえません。

 

最近はお金を返還しても

勤務義務だけは残ると言われるようになりました。

 

大学の先生方が勧められるように退学をして受験し直すことを考え、

予備校にも相談しましたが、

医学部を退学して医学部を再受験する場合

たとえ合格ラインに達しても不合格になることが必至だそうです。

 

履歴書や面接で整合性がないと判断されるようなのです。

 

日本の国公立大学医学部50校のうち地域枠推薦入試は42校、

一般入試(前期試験)地域枠は15校、

成績上位者から取ると明記されているところは4校で、

下位者から取ると明記されているところは1校です。

(予備校の受験ガイドより)

 

世間では、地域枠は本来なら医学部に入れない成績の人が

入れてもらう枠なのだからお金を返して辞めるのはけしからんとか、

厚労省や文科省の有識者会議などでも

地域枠学生のことを差別用語で呼称したり、

人権を無視するような議論

(離脱者を脱北者、常識が通用しない人達と呼称し、

禁固刑や刑事罰を作ろう、違約金を2億円にしよう、

一般入試なら通らない、など)が当たり前のようにされていますが、

一般入試(前期試験)の上位者から選抜するしくみの大学もあり、

プライドを持ち一般入試で入った地域枠学生学もいるのです。

 

そしてそのプライドや高い志は

このような現実を知り砕けるのです。

 

保護者を交えた話し合いの場で大学の先生方は、

募集要項の修学支援金を返還すれば

指定病院に勤務しないことができるとの部分については、

「それはあなたの解釈の間違いであり、返還は認めない、

絶対にいかなる理由があっても9年間誰ひとり辞めさせない」と断言されました。

 

募集要項上に奨学金の返還はできないし義務要件もなくならない。

と明記した上で縛るのなら何の問題もないと思います。

 

しかし書かずにおいて縛るということにこそ

道義的責任は問われないのでしょうか。

 

最初からきちんと説明すると志願者が減るから

甘く書いておいて後から縛ろうという策略だったのでしょうか。

 

また、これでは純粋に地域医療を勉強したい、

一生(青年期)を賭けて貢献するほどの気持ちはないけれども、

興味があるので知ってみたいと思う生徒は

安心して出願することができなくなりますし、

優遇入試でなければただ縛られるだけでメリットもありません。

 

地域枠に入らなくても地域医療はできますし、

地域枠に入っただけで頭が悪いと決めつけられるのですから

自尊心を保つこともできにくくなります。


また一方、地域医療の対象とされる地域の住民たちは

どう思われるでしょうか。

 

普通なら医学部に入れない点数で入った地域枠医師たちや

辞められると書いてあるのに辞めさせてもらえず

理不尽な思いを抱える医師に診てもらいたいと思うでしょうか。

 

地域に住んでいる方々も判断力や考える力を持つ人間です。

皆自分の体は大事ですし痛い所は治したいのです。

 

地域の医師にこそより高い技術が必要なことは

地域住民の方が分かっていると思います。

 

日本では誰がどこの病院にかかろうと自由ですから

遠くても信頼のできる病院へ行くことになるのではないでしょうか。

 

7月29日NHKニュース9で無給医の報道を受け、

医療界の重鎮と紹介された嘉山孝正先生が

「若い医師に希望が持てるように、すべての医師に人権を、、」と

発言されていました。

 

成人した医師がある程度納得して無給医の道を選ぶよりも、

未成年の学生がだまされて

地域枠に入ることの方がより深刻な人権問題だと感じました。


多くの親にとって

我が子の出願の数年前に始まった地域枠は未知のもので、

海のものとも山のものともわからないものでした。

 

いかなる理由があろうとも

途中で絶対に辞めることができないと知っていたら、

きっとどの親も恐ろしくて出願を許さなかったと思います。


この問題を多くの人に知って頂きたいと思い勇気を出し投稿しました。

読んでいただいてありがとうございます。

 

 

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