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死因究明等推進基本法の成立 -医療提供関連死は適用除外-

2019/09/07

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はMMJ 8月15日発売号からの転載です。

 

井上法律事務所 弁護士
井上清成

 

2019年8月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

死因究明等推進基本法

1.死因究明等推進基本法の成立

令和元年6月6日、

死因究明等推進基本法が国会で成立した。

 

死因究明の推進は、

死因究明により得られた知見が

公衆衛生の向上及び増進に資する情報として

広く活用されるとともに、

災害・事故・犯罪・虐待等が発生した場合における死因究明が

その被害の拡大及び再発の防止等の実施に寄与することとなるよう

行われることであろう。


もともと死因究明等推進法は、

平成24年に議員立法として成立していたが、

時限立法でもあったため平成26年9月に失効していた。

 

その後、諸々の事情により

4年以上にもわたり失効したままとなっていたが、

やっとこのほど(今度は恒久法として)成立することとなったのである。


この間、事務局所管は内閣府から厚生労働省へと移り、

今後は厚労省が中心となって死因究明が推進されていく。

 

ここにおいて重要なのは、

検案・解剖と科学調査と言ってよい。

 

法律でも、

「医師等による死体の解剖が

 死因究明を行うための方法として最も有効な方法である」と明示された上で、

「医師等による死体の検案及び解剖等の実施体制の充実」が必要とされている。

 

さらに、

「死因を明らかにするため死体に対して行う病理学的検査、

薬物及び毒物に係る検査、死亡時画像診断」といった

「死因究明のための死体の科学調査」も明示された。


これらの体制整備と活用により、

我が国における死因究明がさらに進んでいくことが望まれよう。

 

2.医療提供関連死は適用除外

もう一つ、重要な点がある。

いわゆる医療事故等々は、

この死因究明等推進基本法の適用対象から除外された。

 

法律の

「第6章 医療の提供に関連して死亡した者の死因究明に係る制度」の第31条では、

「医療の提供に関連して死亡した者の死因究明に係る制度については、

 別に法律で定めるところによる。」と明示的に規定されたのである。


ここで言う「別に法律で定めるところ」とは、

「医療法」での定め、

つまり、医療事故調査制度にほかならない。

 

医療提供関連死は、

死因究明等推進基本法から適用を除いて、

もっぱら医療事故調査制度に依らしめた。

 

いわゆる医療事故等々と

それ以外とを分ける立法政策なのである。


とは言っても、

もちろん解剖・科学的調査などの重要性は変わらない。

 

そこで、平成31年4月24日には、

厚労省医政局の総務課長と医事課長とが連名で、

「医療事故調査制度における解剖等調査の適切な選択・実施について」と

題する通知を発出した。

 

そこでは、その他の死因の究明の場合と同様な考え方が示され、

「死因究明を行うためには、有効な方法とされる解剖をはじめ、

 病理組織学的検査、死亡時画像診断等の調査が

 適切に選択・実施されることが重要であると考えており、

 遺族にも死亡後の諸検査の意義を

 わかりやすく説明していただくようお願いいたします。」と述べられている。


つまり、そのような通知での再確認を経た上で、

今回の死因究明等推進基本法の法案提出・可決・成立に至ったのであった。

 

3.医師法第21条の位置付け

このような概観をしてみると、

医師法第21条(異状死体等の届出義務)の位置付けも、

自然と明らかになるであろう。


医師法第21条の政策的な位置付けは、

死因究明等推進基本法の適用対象分野の方に存するのである。

 

適用対象外であるいわゆる医療事故等々に関しては、

医師法第21条の位置付けから外れていたと捉えることができよう。

 

このような位置付けを念頭におくと、

かつての田村憲久厚生労働大臣の答弁(平成26年6月10日参議院厚生労働委員会)も、

よく理解できる。

 

「医師法第21条は、医療事故等々を想定しているわけではない」という答弁は、

極めて意義深いものであったと感じられよう。

 

 

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