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精神科・心療内科での診断書の実情とは?

2019/09/22

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

精神科・心療内科での診断書の実情とは?

 

病院やクリニックで治療を受けていると、

自分の病名や治療経過、回復見込みなどを

公的に証明しなければいけないこともあります。

 

さまざまな理由があるとは思いますが、

一番多いのは会社に対しての診断書でしょう。

 

内科や外科などの身体の病気では

判断が明確であることが多いのですが、

精神科や心療内科などの心の病気では、

診断書もあいまいな部分がかなり多いです。

 

このため、診断書を受け取る側はもちろん、

患者さん本人もよくわからない部分が多いと思います。

 

まずは精神科や心療内科における

診断書のもつ意味を整理してみましょう。

 

それを踏まえて、

精神科や心療内科での診断書についてみていきたいと思います。

 

さらに診断書は原則的に自費になるので、

料金は各病院の裁量に任されています。

だからこそ診断書をみれば、

病院の素顔が見えてくる部分もあります。

 

ここでは金額的な面も含め、

精神科や心療内科での診断書の実情をお伝えしたいと思います。

 

1枚の診断書をみていくことで、

医療と職域の息の通わなさを感じていただけるかと思います。

 

精神科心療内科診断書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.精神科・心療内科で診断書が
  問題になる場面とは?

休職や復職にあたって、

会社と従業員である患者さんの間で、

診断書の扱いに関して問題となることが多いです。

 

病状を説明するだけの診断書でしたら、

その診断書の持つ意味はそこまで問題にはなりません。

 

診断書の扱いでもっとも判断に迷うのが、

休職や復職の診断書になるかと思います。

 

会社側からみれば、

従業員が「休職を要する」という診断書を

突然もってくることがあります。

 

休職の期限ぎりぎりになって、

かけこみのように「復職可能である」という

診断書をもってくることもあります。

 

「部署異動を要する」のような

環境調整に具体的に踏み込まれることもあります。

 

従業員である患者さんから見れば、

休職の診断書をもっていたのに

受け取ってもらえなかったということもあります。

 

復職可能と診断書を持って行ったのに、

産業医に復職は早いといわれてしまうこともあります。

診断書の内容を尊重してくれないこともあります。

 

会社と従業員である患者さんには、

それぞれに権利と義務が絡み合っています。

 

会社としては、従業員の安全配慮義務はありますが、

業務契約の使用者としての権利があります。

 

患者さんとしては、

会社には自分の心身の健康を守ってもらう権利がありますが、

業務契約としての労働者として労務を提供する義務があります。

 

精神科・心療内科は、

その病状や治療内容が客観的に評価しにくい分野です。

 

だからこそ、診断書による両者の線引きに曖昧さが生じてしまいます。

 

まずは診断書のもつ公的な意味について、

はっきりさせていきましょう。

 

2.休職の診断書のもつ公的な意味とは?

「主治医が生活ができるかどうかのレベルを下回った可能性があると判断した」

ということになります。

 

休職の診断書の意味とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休職の診断書が出されるときの状態は、

主治医の判断によって大きく変わります。

 

それこそ、状態がそこまで悪くないのに休職に入ることもあれば、

本当にひどくなって休職に入ることもあります。

その判断は、主治医の判断によってしまいます。

 

それでは休職の診断書は、

公的にはどのような効力をもつのでしょうか?

 

休職ということは、

少なくとも仕事ができるレベルではないと

主治医が考えているということになります。

 

場合によっては生活ができるかどうかのレベルも

下回っている可能性もあります。

 

ですから公的には、

「主治医が生活ができるかどうかのレベルを下回った可能性があると判断した」

ということになります。

 

ですから会社としては、

「休職を要する」という診断書をうけとったら、

理由は問わずに直ちに休職させないと

安全配慮義務に反してしまいます。

 

診断書を受け取らないというのは論外です。

 

知らなかったでは通用しませんし、

会社だけでなく受け取らなかった上司などにも

法的な責任が伴います。

 

よくあるのが、

「仕事の引継ぎだけすませてから休んで」という形です。

 

原則的には、これもアウトになります。

 

そんなに調子も悪くなさそうに見えるから大丈夫だろうと思っても、

仮に出勤している途中に

駅のホームで誰かにぶつかって転落事故死したとしたら、

自殺をしてしまったのかわからなくなってしまいます。

 

ただし「絶対に引継ぎをさせてはいけない」というわけではなく、

本人も引継ぎをしたいという希望があり、

書面で同意が取れる時のみ、

時間や環境などのできる限りの配慮をした上で

産業医として認めることはあります。

 

3.休職の診断書のもつ公的な意味とは?

「主治医が少なくとも生活ができるレベルは超えていると判断した」

ということになります。

 

復職の診断書の意味とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんどは、復職の診断書がもつ公的な意味について考えていきましょう。

復職の診断書が主治医から出されるときも、

その状態の差はとても大きいです。

 

少なくとも生活ができるかどうかのレベルよりは

上であってほしいのですが、それを下回っていることもあります。

 

一方で、リワークもバッチリやっていて、

明日にでもフル出勤できそうなこともあります。

 

しかしながら復職の診断書が出されることの公的な意味は、

「主治医が少なくとも生活ができるレベルは超えていると判断した」

ということになります。

 

ここで重要なのは、

「仕事ができるかどうかのレベルかは判断されていない」という点です。

 

厚労省も推奨していますが、

仕事ができるかどうかの判断は産業医が意見することになっています。

 

ですから主治医から復職可能の診断書が出ても、

すぐには仕事に復帰することはできません。

 

仕事が最低限のラインはできることを、

会社に認めてもらう必要があります。

 

休職期限がギリギリになって、

この点で患者さんである従業員と会社でもめることが多いのです。

 

4.精神科・心療内科の診断書の疑問①
  ―病名

大きく3つの理由で、

病名にあまり意味を持たないことが多いです。

 

それでは、精神科・心療内科の診断書で

多くの方が感じている疑問についてお答えしていきたいと思います。

 

まずは「病名」についてみていきましょう。

 

精神科や心療内科の診断書にかかれる病名は、

あまり大きな意味を持たないことが多いです。

 

というのは、以下の3つの理由があるからです。

  • 患者さんの意向をふまえて、印象がやわらかい病名にすることがある
  • 状態像を診断名に書くことがある
  • 治療経過で病名が変わることがある

 

心の病気に対する社会の認識はだいぶ広がったとはいえ、

いまだに根強い偏見があります。

 

ですから患者さんのことを考えて、

印象がやわらかい病名にすることはよくあります。

 

例えば統合失調症など、

しっかりとした治療と会社での配慮も必要な病気では、

診断書にはできるだけ正確に書くようにします。

 

そうでなければ、

病名での偏見から社会復帰を妨げられることがないように、

主治医としても配慮をするのです。

 

病名に状態像を書くこともあります。

一番多いのが、「抑うつ状態」「うつ状態」になるかと思います。

 

「落ち込みがひどい状態」という意味になりますが、

このような記載の仕方をするには、

印象をやわらかくするという目的も含めれば3つの理由があります。

 

  • 本質的な原因が他にある場合
  • 明言すると不都合がある場合
  • 純粋なうつ病とは異なる場合

 

精神科や心療内科の病名は、

治療経過で変わることも多いです。

 

治療経過の中で、少しずつ患者さんの本質が見えてきます。

ときには10年以上かけて、

診断が変更されるようなこともあります。

 

正確な病名を書かないのはおかしいと思われる方も

いらっしゃるかもしれませんが、

私は患者さんの長い目での社会復帰を考えれば、

状況にあわせて臨機応変に病名を考えるべきだと思います。

 

同じ考えをもっている医師は多いかと思います。

 

このような理由で、

精神科・心療内科の診断書での病名を深く考える必要はありません。

 

よくある病名に関して、

以下のように解釈してください。

 

  • 抑うつ状態・うつ状態→落ちこみが深い状態
  • 不安障害・不安神経症→不安が強い状態
  • 自律神経失調症→自律神経症状が認められている状態
  • 適応障害→上手く環境になじめない状態→いずれ環境調整が必要?
  • 双極性障害・統合失調症・発達障害→病気に応じた対応が必要

 

5.精神科・心療内科の診断書の疑問②
  ―休職期間

休職期間はあくまで暫定的で、

長く書いてくれる方が良心的な病院です。

 

次に、「休職期間」についてみていきましょう。

 

精神科・心療内科で休職になると、

その期間は身体の病気よりも長くなることが多いです。

 

心の病気で休職になった場合は、

多くの場合で3か月以上となります。

 

その理由としては、以下の3つがあげられます。

  • 抗うつ剤は効果が出てくるのが遅い
  • リハビリ期間が必要になる
  • 不調のきっかけの解決に時間がかかる

 

現在使われている抗うつ剤は効果が出てくるまでに、

2~4週間の時間がかかってしまいます。

 

また十分量使わなければ効果が出てこないこともあるので、

時間がかかってしまいます。

 

また心の病気は、

症状がよくなってもリハビリ期間が必要になります。

 

体力的な面ももちろんですが、

対人関係などの社会生活での刺激に慣れていく必要があります。

 

不調のきっかけとして明確なものがある場合、

それを現実的に解決する必要があることもあります。

 

職場での問題があるならば、

スムーズに復職できるように環境調整も考慮する必要があります。

このような調整にも時間がかかることがあります。

 

これらを踏まえると、

休職期間は3か月以上かかることが多いです。

 

ですから私は、診断書は3か月で書くことが多いです。

3か月で書いたからといって、

3か月休まなければいけないわけではありません。

 

期間内によくなったら、

「復職可」という診断書を提出すればよいのです。

 

会社側としては、

いきなり3か月休職の診断書が提出されると、

「本当にこの病院は大丈夫かな?」と思われるかもしれません。

 

ですがむしろ、患者さんの診断書代の負担を考えれば良心的なのです。

 

ですから、診断書の期間はあくまで暫定的なものです。

1か月ごとに診断書を出す病院よりも、

長い期間で書いてくれる病院の方が良心的です。

 

診断書の期間が意味をもつのは、

これまで3か月で提出されていたのが、

2か月や1か月などに短くなった時くらいでしょう。

 

休職期間を短く設定することで、

患者さんに社会復帰を促していることが多いです。

 

このため会社側も、

そろそろ復帰してくるかもしれないと

準備する目安になります。

 

6.精神科・心療内科の診断書の疑問③
  -金額の違い

紹介状(診療情報提供書)は保険適用になりますが、

診断書は自費になります。

 

一般的な診断書の費用は、

保険の適応にはなりません。

 

医療関係の文章で保険の適用になるのは、

病院への紹介状のときのみです。

 

紹介状は正確には、診療情報提供書といいます。

 

これに関しては、

  • 文章だけの診療情報提供書・・・2500円(250点)
  • 検査結果つきの診療情報提供書・・・4500円(450点)
  • セカンドオピニオン目的の検査結果つき診療情報提供書・・・5000円(500点)

となっています。

 

ですから一般的な方はこれの3割負担、

自立支援医療利用中の方は1割負担となります。

 

しかしながら診断書は、

すべて自費負担になります。

 

自費ですので、その料金は病院ごとの判断に任せられています。

一般的な病院では、

診療情報提供書を目安に料金を設定しています。

 

このため3000円の医療機関が多いと思います。

少し手間のかかる文章(保険会社書式の診断書など)では5000円、

非常に手間のかかる文章(障害年金など)では

10000円といったところでしょうか。

 

病院によっては、

もっと安価で書いてくれるところもあります。

 

とくに文章だけの診断書はすぐに書けるので、

なかには1500~2000円くらいの良心的な病院もあります。

 

7.精神科・心療内科の診断書の疑問④
  -環境調整

環境調整は産業医を踏まえて、

会社と相談しながら決めていくのが最も現実的です。

 

病状を悪化させないための医療上のポイントだけ、

書いていただけるのが理想です。

 

精神科・心療内科の診断書では、

場合によっては

復職後の職場環境に関しての意見を書くことがあります。

 

どこまで主治医側で書くべきなのか、

産業医と主治医の両方を経験している私の立場から

お伝えしていければと思います。

 

もっとも基本的で、

それでいて混同されることの多いことは、

適切な環境調整を行うのは産業医の仕事だということです。

 

主治医の診断書はあくまで、

「なんとか生活できるレベルを超えている」という意味合いなので、

仕事が本当にできるのかどうかは産業医が判断する必要があります。

 

そして環境調整は、

現場の状況も踏まえながら産業医が調整をしていくのです。

 

ですから主治医としては、

病状を維持するために重要な医療上のポイントは書いて欲しいのですが、

具体的な環境調整の内容にまで踏み込み過ぎてはいけません。

 

例を挙げるとするならば、

「生活リズムを一定に保つことが重要と思われる」と書くのはよいのですが、

「遅番や夜勤は禁止する」とは書くべきではないのです。

 

「接客業務や電話応対は禁止」などは書くべきではなく、

「対人不安は段階的な改善が必要と思われる」などと書くべきです。

 

それでは、主治医と産業医のそれぞれの目線で考えていきましょう。

 

主治医としては、

会社から具体的な環境調整の相談をされたり、

詳細な診療情報提供書を要請されると、

「産業医は一体何をしているんだろう」という気持ちになります。

 

ただでさえ忙しい外来診察の中にこのような件があると、

会社に対してネガティブな気持ちになることもあります。

 

もちろんこれに引きづられることはありませんが・・・

このようなことは、

常勤産業医のいる大企業に多い印象があります。

 

産業医としては、

具体的な環境調整に限定されてしまうと、

「この主治医は職場のメンタルヘルスをまったく分かっていない」と

思ってしまいます。

 

皮肉なことに、

メンタルヘルスを強みにうたっているクリニックに多いです。

 

おそらく、

「メンタルヘルスに強い=明確な会社対応を指示できること」と

勘違いしているのだと思います。

 

しかしながら環境調整を診断書に明記されてしまうと、

非常に職域としては調整しづらくなります。

 

産業医と主治医の両方の立場にたって考えると、

「本人と相談のうえ、適切な環境調整が望ましい」というのが

一番よいかと思います。

 

患者さんの希望を盛り込むにしても、

「配置転換などの環境調整が望まれる」程度に

余地を残した方がよいです。

 

患者さんとしては、

自分の希望をかなえたいという気持ちになるかもしれません。

 

しかしながら現実的でないことを希望すると、

会社でもやりづらくなってしまいます。

 

診断書に書いてある職場環境が用意できない時は、

休職の延長とせざるを得なくなります。

 

環境調整は、

産業医を踏まえて会社と相談して決めていくのが

一番現実的です。

 

まとめ

これらを踏まえて、

精神科・心療内科の診断書に対する考え方を整理してみましょう。

 

患者さんとしては、

休職の診断書をもらったら、

提出してからすぐに休職することができます。

 

しかしながら現実的に引継ぎをしなければいけない場合、

できる範囲を会社と相談しながら行った方が

復職のときがスムーズになると思います。

 

復職の診断書をもらったら、

提出したからといってすぐに復職できるわけではありません。

 

産業医と面談し、

可能と判断されたら段階的に復職を行っていきます。

その際の環境調整は、

産業医をまじえて会社側と相談していくのが現実的です。

 

会社としては、

休職の診断書を受け取ったら、

すぐにでも休職させなければいけません。

 

原則的には引継ぎもNGです。

ただし本人が大丈夫ということを文章同意できるなら、

本人の希望を最大限に尊重した上で引継ぎを行わせても大丈夫でしょう。

 

復職期間中はできることはありませんし、

ほとんど診断書からわかることもありません。

 

復職の診断書が提出されたら、

本人の体調を客観的に評価して産業医に復職の判断を仰ぎましょう。

 

復職可能であれば、

現実的な復職のステップや環境調整を考えていきましょう。

 

 

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