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致死率ほぼ100%の”狂犬病” 海外渡航前に気をつけるべきこととは?

2019/10/17

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。 

 

この原稿はAERA dot.522日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2019052000037.html

 

ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医

山本佳奈

 

2019920日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

野犬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海外旅行先でサルにかまれてしまいました」

「ネコにかまれて、現地で1回ワクチンを接種して帰国しました」

 

このように、

大型連休明けの勤務先のクリニックでは

連休中の旅行先で動物にかまれてしまったというケースが、

多く見受けられました。

 

 

511日、

フィリピンを旅行中に

犬と接触した24歳のノルウェー人女性が、

帰国後「狂犬病」を発症した後、

死亡したとのニュースが

全世界を駆け巡りました。

 

海外へ渡航する前の

狂犬病ワクチンの接種の必要性を

実感していた直後のことでした。

 

 

死亡した女性は、

2月に友人と共にフィリピンを訪問中に

やせ細った子犬を路上で発見。

 

 

彼女はその子犬を

宿泊先のホテルに連れて帰り、

ケアをしたところ次第に回復し、

ホテルにいた他の犬とも

元気に遊ぶようになったのですが、

彼女もその際、指をかまれてしまったといいます。

 

 

狂犬病の予防ワクチンを

接種していなかったにもかかわらず、

かまれた後も狂犬病に対して

未治療のまま帰国し、

その後体調を崩して

死亡に至ってしまったというのです。

 

 

「狂犬病」は「イヌ」にだけかまれると感染すると思っていませんか。

 

 

「イヌが感染しないようにワクチン接種している病気じゃないの?」と思っていませんか。

 

 

実は、感染源となる狂犬病ウイルスは

全ての哺乳動物に感染する可能性があります。

 

 

私たちが狂犬病に感染して発症すれば、

ほぼ100%死亡する、極めて恐ろしい感染症なのです。

 

 

そこで、今回は「狂犬病」についてお話ししたいと思います。

 

 

狂犬病は、

狂犬病ウイルスに感染している動物にかまれたり、

傷口や粘膜をなめられることで唾液が体内に入り、

その唾液に含まれるウイルスが侵入してくることで感染します。

 

 

日本やスウェーデン、

アイスランドやアイルランド、

ニュージーランドやグアム、

ハワイ諸島などの一部の国を除いて、

世界150カ国以上の国と地域で

発生していることが報告されており、

海外ではほとんどの国で感染する可能性がある病気です。

 

 

日本は、世界でも数少ない狂犬病清浄国。

 

 

1957 年以降、国内で狂犬病は発生していません。

 

ネパールで犬にかまれ帰国後に発症した事例が70年に、

フィリピンで犬にかまれ帰国後に発症した事例が2件あったのみです。

 

 

イヌへのワクチン接種の義務化や

わが国が島国であることが

その要因として考えられています。

 

 

2004年の世界保健機関(WHO)の調べによると、

狂犬病ウイルスに暴露された後の

年間推計ワクチン接種者数は1500万人であるにもかかわらず、

狂犬病の年間推計死亡者数は55千人。

 

 

そのうちアジア地域が31千人、

アフリカ地域が24千人を占めています。

 

 

また、ヒトにおける狂犬病の

感染源の99%がイヌであったと報告されています。

 

 

しかしながら、感染源となる動物は

イヌだけではありません。

 

 

ヨーロッパではキツネやコウモリ、

アジアではイヌやキツネやコウモリ、

アフリカではコウモリやマングースやジャッカル、

北米ではアライグマやスカンクなどからの

感染も報告されているのです。

 

 

なお、ヒトからヒトに感染することはないため、

感染した患者から感染が拡大することはありません。

 

 

感染から発症までの潜伏期間は13カ月。

 

 

侵入した狂犬病ウイルスの量や

かまれた部位、傷口の程度によってさまざまであり、

まれに1週間から長いと1年という歳月を経て

発症したというケースもあります。

 

 

 

発症すると、

発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感、食欲不振、

といった感冒のような症状などが

生じることから始まります。

 

 

そして、ウイルスが中枢神経に広がるにつれて、

不安感、恐水症(水への恐怖)および恐風症(冷たい風への恐怖)、

興奮状態、まひ、幻覚、精神錯乱などの神経症状脳や

中枢神経には進行性の致命的な炎症が生じます。

 

 

これらの症状が生じると

数日後には昏睡(こんすい)状態となり、

死んでしまうのです。

 

 

残念ながら、

狂犬病後の有効な治療法は現時点ではありません。

 

 

感染しないようにするためには、

旅行先などで不用意にイヌをはじめとした

野生動物に近づかないという注意とともに、

渡航前の狂犬病ワクチン接種が大切です。

 

 

4週間隔で2回接種、

612ヶ月後に3回目の接種を行うことで、

高い確率で免疫を得ることができ、

狂犬病に対して1年から1年半の予防効果が期待できます。

 

 

渡航前までに3回接種を終える時間がなさそうだ、

という場合、2回だけでも接種して渡航しておくといいでしょう。

 

 

しかし、こちらから近づいてはいなくても、

イヌにかまれてしまった、コウモリに襲われてしまった、

なんてケースが起きてしまうことも十分考えられますよね。

 

 

渡航前にワクチンを接種していても、接種していなくても、

渡航先で動物にかまれたり、引っかかれたり、

なめられてしまったりぶつかった場合には、

とにもかくにも、できるだけ早急に、

大量の水で傷口を徹底的に洗うことが大切です。

 

 

その上でワクチン接種が必要となりますので、

すぐに病院を受診してください。

 

 

予防接種を受けていなかった場合、

初回接種日を0日として、

3日、7日、14日、30日、90日の計6回の

ワクチン接種による発症を予防することができると言われています。

 

 

予防接種を受けていた場合も、

接種初日と3日後の2回のワクチン接種が必要です。

 

 

発症すれば、ほぼ100%死亡する狂犬病。

 

 

海外旅行へ行くことが決まった、

行こうと思っているという方は、

余裕を持って狂犬病ワクチンを

接種していただきたいと思います。

 

 

 

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