各分野の専門家が医師の転職や開業などに必要な情報を配信します。

トップ > 医師からの情報発信 > ママ医師が教える”明日から使える”新しい育児の知見 離乳食の卵はいつから?

ママ医師が教える”明日から使える”新しい育児の知見 離乳食の卵はいつから?

2019/10/29

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はAERA dot.51日配信)からの転載です

https://dot.asahi.com/dot/2019042400084.html

 

森田麻里子

 

2019927日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

離乳食と卵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤ちゃんの離乳食と食物アレルギーの関係は、

最近の研究の進歩がめざましい分野だということ、

ご存知でしょうか?

 

以前は、アレルギー源になりやすい食品、

例えば卵を早い時期から食べると、

食物アレルギーを発症しやすくなると考えられていました。

 

今でも、育児書やネットでは、

卵はなるべく遅く始めた方がいい

と書いてあるものがたくさんあります。

 

しかし現在では、

むしろ早めに食べさせた方が良い

とわかってきているのです。

 

保健所などでの離乳食の指導において、

基本になるのが、厚生労働省が作成している

「授乳・離乳の支援ガイド」

(以下、支援ガイド)です。

 

今年3月の支援ガイドの改定で、

これまで生後78カ月から

始める食品の欄に書いてあった卵黄が、

生後56カ月の欄に移動されました。

 

今回はこの改定の理由について

解説したいと思います。

 

離乳食の開始時期は、

ここ10年ほどでどんどん遅くなっています。

 

平成17年には

離乳食の開始時期は

生後5カ月が最も多かったのに対し、

平成27年度には

そのピークが生後6カ月になっています。

 

平成19年の支援ガイドで、

離乳食の開始時期が

「生後5カ月になった頃」という表記から

「生後56カ月頃」と変更された影響もあるようです。

 

もし、本当に摂取を遅らせることで

食物アレルギー発症が予防できるなら、

食物アレルギーを持つ子の割合は

減っていて良さそうなものです。

 

しかし、アレルギーは減るどころか

増加の一途をたどっています。

 

例えば、

東京都が3歳児健診のデータをまとめた調査では、

平成11年度に7.1%だった食物アレルギーの子どもは、

平成25年度には16.7%となっています。

 

確かに、食物アレルギーを持つ子が

抗原となる食品を摂取すると、症状が起こります。

 

だからこそ、

アレルギーを起こさないためには、

アレルギーを起こしやすい食品を

食べなければいいと考えられていました。

 

しかし実は、

アレルギー反応が起こってしまうのは、

バリアが破壊された皮膚から

抗原が入ってくることが原因であり、

逆に腸から抗原が吸収されると

アレルギーを抑える方向に働く、

ということがわかってきたのです。

 

つまり現在では、

食物アレルギーを発症していない子には、

早めにアレルゲンを食べさせた方が、

その後のアレルギーの発症を抑えられる可能性が

高いと考えられています。

 

これを証明した代表的な研究は、

2017年に日本の成育医療研究センターから

発表された研究です。

 

この研究の対象者は、

アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんでした。

 

アトピーがあると、

食物アレルギーを発症するリスクが

高いことがわかっているからです。

 

研究では、

まずしっかりとアトピーの治療を行い、

皮膚の湿疹をきれいに改善させました。

 

その後赤ちゃんを2グループに分け、

一方のグループには生後6か月から

毎日、加熱した卵を含むパウダー(ゆで卵0.2g相当)を与え、

もう一方のグループには見た目のよく似たかぼちゃパウダーを与えました。

 

1歳になったときの

卵アレルギーの割合を調べると、

卵を摂取したグループの方が

80%近くも少ないことがわかったのです。

 

このような研究結果から、

新しい支援ガイドでは、

生後56カ月から卵黄も開始するように

記載が変更されたのです。

 

しかし、

ただ早く食べさせ始めれば良いというものではありません。

 

例えば、

2013年にオーストラリアから発表された研究では、

中等度から重度のアトピー性皮膚炎のある4カ月の赤ちゃんを

2グループに分け、一方には卵パウダー、

もう一方には米粉パウダーを食べさせました。

 

前述の日本の研究とは違い、

卵パウダーは加熱していないもので、

量も卵たんぱく0.9g(卵16)相当と

やや多いものでした。

 

すると、

卵パウダーを摂取した赤ちゃんの13

アレルギー反応が出現してしまいました。

 

すでに乳児湿疹などで皮膚バリアが壊れている場合は、

まずしっかりと治療を行って、

皮膚の状態を改善することが大切です。

 

支援ガイドでは、

湿疹があったり、

食物アレルギーが疑われる場合などは、

医師の指示に基づいて対応するようにと書かれています。

 

そして卵を食べ始める際は、

固ゆで卵の卵黄を少量から開始するのがおすすめです。

 

卵黄から始めるのは、

卵の抗原となるタンパク質が、

主に卵白に入っているからです。

 

また、生卵より加熱した卵、

特に固ゆで卵が

アレルギーを起こしにくいことも知られています。

 

はじめに固ゆで卵の卵黄、

そして固ゆで卵の卵白と進めていき、

卵焼きはそれより後にチャレンジするのが良いでしょう。

 

卵をゆでた後に放置することで、

卵白から卵黄に抗原が浸透していくこともわかっています。

 

特に卵黄の与え始めの時期は、

ゆでた卵がある程度冷えたら、

早めに卵白と分けておくのが安心です。

 

明日からの育児で使える新しい知見が、

研究からもたらされるのは素晴らしいことだと思います。

 

この記事を通して一人でも多くのママ・パパに

新しい情報をお伝えし、子育てに活かしていただきたいと思っています。

 

 

お問い合わせはこちら