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ママ医師が解説 生まれたての赤ちゃんにミルクを足しても、母乳育児は継続できる?

2019/12/03

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿はAERA dot.612日配信)からの転載です。

https://dot.asahi.com/dot/2019060600041.html?page=1

 

森田麻里子

 

2019年月日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

ミルク

 

 

 

 

 

 

 

 

赤ちゃんに与える栄養を

母乳にするかミルクにするかというのは、

赤ちゃんを育てるママ・パパにとって、

やはり気になるところではないでしょうか。

 

一時期の完全母乳「信仰」は

少しずつ弱まってきて、

母乳の良さは認めつつも、

必要な場合にはミルクも積極的に利用する、

いい流れになってきたように感じます。

 

赤ちゃんが産まれて入院している間、

いつどんな場合にミルクを足すのか

ということについても、

産院によっていろいろな考え方があるようです。

 

このテーマについて、

今月新しい研究結果が発表されましたので、

解説したいと思います。

 

 

母乳には風邪や中耳炎など

様々な病気を予防する効果があるとされていて、

世界保健機関(WHO)は、

2歳ごろまで母乳を与えることを推奨しています。

 

日本では、

正確な統計はないものの

1歳前後から母乳をやめる家庭も多く、

母乳育児を長く続けたい場合に

それが可能となるよう、サポートが必要です。

 

母乳育児を続けるという観点からは、

産後の入院中に赤ちゃんにミルクを与えるのを、

できるだけ避ける方が良いと言われています。

 

その根拠として、

新生児の早い時期にミルクを与えると、

母乳育児の期間が短くなるという研究が複数あるのです。

 

例えば、

2014年にアメリカで発表された論文があります。

 

393人の赤ちゃんを調べたところ、

生後2カ月までに母乳を与えるのをやめたのは、

入院中にミルクを与えたグループで32.8%、

与えなかったグループで10.5%でした。

 

もちろん、

赤ちゃんの水分や栄養をミルクで補うのは、

医学的に必要なこともあります。

 

産まれたばかりの赤ちゃんは体がむくみ気味で、

最初の数日は体に取り込む水分よりも、

体から出ていく水分の方が多くなります。

 

結果として、

出生体重より体重が減ってしまうのですが、

これを生理的体重減少といいます。

 

510%程度までの体重減少は普通ですが、

それ以上に体重が減った場合は、

ミルクなどを足すのが一般的です。

 

母乳の分泌量は人によって違いますし、

最終的に母乳が十分出るママでも、

赤ちゃんを出産した直後から十分出るとは限りません。

 

母乳が十分に分泌されるまでは、

やはりミルクで補う必要があるのです。

 

そこで、どのようにミルクを補えば、

母乳育児にチャレンジしたいママを

上手にサポートできるかが、

研究されています。

 

今回アメリカで行われた研究によると、

ある方法でミルクを補ったところ、

産後の入院中にミルクを足しても、

生後6カ月時点で母乳育児を続けている割合には

明らかな差がないことがわかったのです。

 

この研究は、

新生児の赤ちゃんで、

体重減少の大きさが上位25%に

入っていた子を対象に行われました。

 

上位25%というのは、

出生体重からおよそ810%以上の

体重減少にあたります。

 

条件を満たす164人の赤ちゃんを2グループに分け、

一方のグループは医療者からの指示がなければミルクを足さず、

もう一方のグループでは母乳の分泌がよくなるまで、

毎回の授乳後に注射器のシリンジを使って

10mlのミルクを飲ませてあげたのです。

 

すると、

生後6カ月時点で母乳育児を続けていたのは、

ミルクを足さなかったグループでは77%、

足したグループでも65%でした。

 

母乳育児を続けるというのは、

母乳とミルクの混合育児も含んだ数字です。

 

ミルクを足さなかった方が

母乳を続けている子が多い傾向にはあったのですが、

2つのグループ間で統計的に差があるとはいえないという結果になりました。

 

そもそも、

なぜ入院中にミルクを足すと

母乳を早くにやめる割合が上がるのかは

よくわかっていないので、

なぜこのような与え方が良かったのかも

明らかになってはいません。

 

まだ最適な方法が決まっているわけではなく、

実際に赤ちゃんにミルクを与える基準や、

どのように与えるかについては、

施設によって様々に異なっているのが現状です。

 

しかし、

母乳とミルク、

それぞれのメリット・デメリットを知ったうえで、

子育てをする当事者のママ・パパの希望が叶えられるよう、

医療者がうまくサポートしていければ良いのではないかと思いますし、

こういった研究が少しずつ進んでいるのは、親として心強く思いました。

 

 

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