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医療崩壊防止対策として法律を超えた支援金を拠出すべき

2020/04/16

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

この原稿は月刊集中4月末日発売予定号からの転載です。

 

井上法律事務所所長 弁護士

井上清成

 

202049日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

弁護士からの発信

 

1.医療従事者への感染防止対策

この4月4日付けの毎日新聞

「医療従事者153人の感染判明 

 院内感染も発生 医療崩壊の懸念 新型コロナ」の記事によれば、

「新型コロナウイルスの感染者のうち、

 医師や看護師ら医療従事者は

 全国で少なくとも153人いることが毎日新聞の調べで分かった。

 診察などを通じて感染者と接する機会が多いことが背景にあるとみられる。」

 とのことである。

 

 

 イタリア・スペイインやアメリカなどの欧米各国のみならず、

 日本においても医療崩壊の懸念が高まってきたように思う。

 

 

 筆者は2月13日時点では

「新型コロナウイルス感染症が不安の患者に対して応招義務はない」

 という論稿などにおいて、

 医療従事者への感染を避けるために、

 一般の病院診療所には応招義務がないことを訴えてきた。

 

 しかし、感染拡大によって

 非感染症の患者に紛れてしまうことなどから、

 すでに診療回避だけでは感染予防は難しくなってきている。

 

 そこで、政府としては、 一般の病院診療所においても、

 できるだけPPE(個人防護具)や N95マスクを行き渡らせるよう、

 国内に他の用途のために備蓄してある分を放出すると共に、

 国内の他種の各メーカーにお願いしてでも大増産をすべきであろう。

 

 なお、もちろん、それと共に、

 PCR検査や、

 初診も含めたオンライン診療を拡充すべきなのは、

 医療従事者への感染防止対策としても当然である。

 

2.臨時の医療施設として各種病床を増設

4月5日時点で、

 東京都は軽症者や無症状者のための

 ホテル借り上げと転送を同月7日から実施することを表明した。

 

 筆者も3月10日時点で、

「歴史的緊急事態の下での規制を正当化するものは助成措置である」

 という論稿などで、

 「厚労省も、墨俣城や石垣山城といった一夜城に負けず、中国の規模にも負けずに、

  病院やホテルのような入院施設や隔離施設を造ったり丸ごと借り上げたりすればよい。」

 と訴えていたのだが、

 その一部は実現し始めているようである。

 

 

 さらに、重要なのは、

 「臨時の医療施設」 (新型インフルエンザ等対策特別措置法第48条)

 としての病院、有床診療所であろう。

 

 各種の病床を仮設でよいので増設することである。

 

 医療法第4章の適用はないので、

 医療機能は十分でなくてもよい。

 

 感染症用と非感染症用、

 病院のように大きなものと有床診療所にように小さなもの、

 といった各種の多数の病床の仮設が有用であると思う。

 

 現在進められているクラスター対策の

 カバーリング用(バックアップ用)にも、

 新型コロナに感染しかねない一般の病院診療所のための

 パイロット用(水先きでの案内用。感染したら直ぐに廃院して取り毀してもよい。)にも、

 グレーゾーンの患者の判別用にも、いくつもの用途に資するよう、

 各地に用途ごとにいくつも増設するとよい。

 

 本丸である一般の病院診療所と

 感染症指定医療機関とをできるだけ現状を維持させて守ることによって、

 医療崩壊を阻止するのである。

 

 なお、それらの臨時の医療施設に配備するのは、

 人工心肺装置であるECMOではない。

 

 通常の酸素吸入器や人工呼吸器を、

 とにかく多く増産した上で、

 メリハリをつけて分散して配備することが大切となろう。

 

3.措置法第62条の実費弁償を超えた損失補償

新型インフルエンザ等対策特別措置法第31条は、

都道府県知事が医療関係者に対して医療を行うよう

要請(同条第1項・第2項)や指示(同条第3項)をすることができると定めている。

 

そして、その場合には、

その実費(日当、時間外勤務手当、旅費)を弁償しなければならない(同法第62条第2項)。

 

しかし、実際は、

医療関係者は一般の病院診療所の業務の一部を止めて、

その要請・指示に従うのが通常であるし、

そもそも正式な要請・指示以前の協力依頼に基づいて行うことも珍しくない。

 

それらのケースを考えれば、

正式な実費弁償だけでは十分には償われていないと言ってよいのである。

 

そこで、同法第62条第2項の実費弁償にとらわれずに、

実費弁償を超えた休業損害を含んだ損失補償を拠出したり、

同法に基づく正式な実費弁償ではないけれども

任意の実質的な実費弁償を拠出したりして、

柔軟に法律以上の支援金を拠出すべきであろう。

 

4.措置法第63条の損害補償を超えた損失補償

同法第63条第1項は、

同法第31条の要請や指示に従った医療関係者が

死亡・負傷したり疾病にかかったり障害の状態になったりした場合に、

その損害を補償することとしている。

 

しかし、それは療養費用の実費や

後遺障害・死亡の損害の一部に過ぎない。

 

医療崩壊を食い止めるために

必死で新型コロナウイルス感染症に立ち向かった医療関係者への補償としては、

必ずしも十分とは言えないであろう。

 

そこで、同法第63条第1項の損害項目や損害額にとらわれずに、

たとえば医療関係者の一部の罹患によって

外来をすべて休診したことによる損害など広い項目にわたり、

また、後遺障害や死亡による逸失利益も大部分を算入するなど

より多くの損害額を計上することなどが考えられる。

 

そうして、十分な損失補償を医療崩壊防止対策として柔軟に、

法律以上の支援金として拠出すべきであろう。

 

5.ワクチン・治療薬などでの患者補償と医療免責

以上、多岐にわたって述べてきたが、

医療崩壊防止対策として最も重要なのは、

実は医療免責であると言ってよい。

 

新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発されれば、

その副作用には予防接種等健康被害救済制度(予防接種法第15条~第17条)による

患者補償が存在する。

 

また、治療薬が開発されれば、

その副作用にはPMDAの医薬品副作用被害救済制度(医薬品医療機器総合機構法)による

患者補償も存在する。

 

しかしながら、それらの制度には、

それ以上の金額での裁判上の医療過誤損害賠償請求を

抑止する法的効果はない。

 

そこで、ワクチン・治療薬を使用した医療そのものへの、

または、人工呼吸器による治療の不開始や遅れへの医療関係者に対する損害賠償請求などが

各地で発生する恐れがある。

 

時にはそれが、国家賠償請求という形を採ることもあろう。

 

しかし、そのような事態を放置していては、

到底、医療崩壊を防止しえない。

 

そこで、

包括的な患者補償

(当該医療に起因していさえすれば、過失無過失は問わない。

 慰謝料は無し。

 死亡又は後遺障害による逸失利益の60%程度の補償に留める。)を、

新型コロナウイルス感染症に関連した医療に限定した

緊急暫定措置として実施するのがよいであろう。

 

つまり、医療崩壊防止対策として、

法律以上の支援金を患者補償の形で拠出するのである。

 

そして、その患者補償の代わりに、

関連した医療すべてを免責し、

医療関係者すべてを免責してしまう。

 

緊急事態下の一時的な措置として、

患者補償と医療免責を是非とも速やかに実施すべきである。

 

 

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