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周産期医療最前線からの叫び?COVID-19妊婦受け入れの早急な整備を!

2020/04/17

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

 

国立成育医療研究センター

前田 裕斗

 

2020413日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

妊婦

 

 

ある晩、救急車からの連絡が入った。

 

「妊娠1X週の妊婦さ人も4日前から微熱、

 本日本格的に発熱と気道症状の増悪あり、

 不安になって救急要請されました。

 現在バイタルサインは保たれており…」

 

当センターは

産婦人科と小児をみる各科で構成された専門病院であり、

大人のCOVID-19肺炎が重症化した場合管理することができない。

 

「既にかなりの施設を当たったのですが

 どこからも満床や妊娠中とのことで対応困難と断られてしまい…」

 と救急隊は続ける。

 

この電話を受けた時点では

当院では受け入れ体制は整っておらず、

搬送を断らざるをえなかった。

 

このような事態は今後、必ず多発する。

 

そもそも現在の日本における周産期医療体制では、

COVID-19感染が疑われる妊婦の受け入れが困難を極める。

 

 

日本では分娩の約半数を一次施設、

個人病院や小規模の病院が請け負っているが、

そうした施設では1-2人の産婦人科が診療を担当しており、

1人倒れれば閉院となってしまうことから

とても感染妊婦の診療はできない。

 

 

それどころか無症候患者のことを考えれば夜間や、

風邪症状が出た妊婦の対応を縮小せざるを得ず、

その分患者が中規模以上の病院へと流れ込む。

 

一方で周産期センターは

既に多くの分娩を抱えており、

COVID-19以外のハイリスク妊娠も担当しているため、

全体のことを考えればCOVID-19妊婦の受け入れには

慎重にならざるを得ない。

 

産婦人科はチーム医療が特に必要な診療科だ。

 

多くの分娩管理・手術を一人ではできないし、

緊急事態ともなればさらに人手が必要になる。

 

感染妊婦の診療は

自身も感染するリスクを負いながらの診療になるが、

もしチームの一人が感染すると全員が共倒れ、

一定期間隔離・休職せざるを得なくなってしまう。

 

そうは言っても誰かが感染妊婦を引き受けねばならない。

 

人手が足りなくなるならば

補充をすればよいと考えるかもしれないが、

そこに院内感染の問題が拍車をかける。

 

既に多くの施設で院内感染の報告が相次いでいるが、

そうした施設との人の行き来は誰が感染しているか、

免疫を持っているかわからない状態では事実上不可能であり、

人手が足りなくなっても人材の補充ができないのだ。

 

この問題の解決のためには、

院内感染防止策は当然ながら、

医療者の大規模な抗体検査と施設の棲み分けが必要だ。

 

抗体検査は簡便に行え、COVID-19への耐性をみることができる。

 

もちろん抗体があるからと言って

必ず感染が防げるかどうかはわからず、

診断キットの信頼性など問題はあるが、一つの目安になる。

 

大規模な抗体検査を行い、

現在の感染が心配ならさらにPCRでも行うことで、

既にCOVID-19に免疫を持つ医師を

複数のチームに分散させることができる。

 

また、COVID-19妊婦を重点的にみる施設と、

通常の分娩を多く扱う施設を設け

それぞれを集約化することも重要だ。

 

当然、COVID-19妊婦をみる施設には

金銭面や精神面での多大なサポートが必要であるし、

通常の分娩を集約化する施設では、

COVID-19のために活動できていない開業医を

臨時で雇用するなどの仕組みを作り

人手を確保するなどの工夫が必要になる。

 

あの妊婦さんは一体どこに受け入れられたのだろう…

そう考えるたび心に陰が差す。

 

家族から感染者が出て、

妊娠中の不安が多い時期を一人で過ごすことがいかに精神を蝕むか。

 

あげく自分に症状が出ようものならば

救急車を呼びたくなるのは無理もない。

 

既に感染対策から分娩時の立ち合いや

入院時の付き添いを控えてもらっているが、

それだけでも多くの妊婦が精神的に不安定となっているのを

現場は強く感じている。

 

 

感染妊婦だけでなく、全ての妊婦は今、

自分が感染したらどうなるのかを不安に感じている。

 

早急に周産期医療提供体制の再編が必要だ。

 

何のための緊急事態宣言か、

病院の枠を越えた連携を取るための施策をすぐにでも検討すべきではないだろうか。

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