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EMDRのトラウマ治療への効果とは?

2020/09/15

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

EMDRのトラウマ治療への効果とは?

新しいトラウマの治療として、

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)という

心理療法が注目されています。

 

従来のトラウマの心理治療は、

持続エクスポージャー法という

認知行動療法を中心にすすめられてきました。

 

文字通り、

トラウマに真正面から向き合っていく治療法です。

 

これに対してEMDRは、

眼球運動というリズミカルな動きを意識しながら

過去の外傷記憶をあつかっていくことで、

その処理を促してくれる働きがあります。

 

2013年にはWHO(世界保健機構)でも、

EMDRはトラウマ治療に効果的であると認定されました。

 

ここでは、EMDRのトラウマ治療への効果について

お伝えしたいと思います。

 

EMDRPTSDの新しい心理療法

EMDRは、PTSDに対する

効果的な心理療法の一つと考えられています。

 

EMDR

EMDR1989年にアメリカの臨床心理士によって

提唱された心理療法です。

 

眼をキョロキョロ動かしていると、

嫌なことを考えていても

楽になることに気づいたことがはじまりです。

 

この眼球運動をPTSDの方の治療に取り入れて

カウンセリングを行ったところ、

非常にすぐれた効果が確認されました。

 

眼球運動という部分がクローズアップされ、

胡散臭い民間療法や宗教ではないかという批判もありながらも、

その効果は次第に実証されていきました。

 

1998年にアメリカ心理学会、

2000年に国際トラウマチックストレス学会によって

有効性が認められました。

 

2013年にはWHOでも、

EMDRPTSDに効果的な治療法として推奨されています。

 

多くの国々のPTSD治療ガイドラインでは、

持続エクスポージャー法(認知行動療法)と

EMDRの2つが記載されています。

 

日本ではガイドラインなどには記されていませんが、

学会認定資格をもったEMDR治療者が少しずつ増えています。

 

EMDRの期待できる効果

EMDRは「眼球運動による脱感作および再処理法」とも呼ばれ、

PTSDに対してだけでなく

様々な病気にも効果が期待できると考えられています。

 

EMDRでは眼球運動というリズミカルな動きを通して、

ネガティブなイメージしかなかった外傷記憶に慣れ、

ポジティブな部分もあわせて

適切に過去の記憶として処理していくのです。

 

過去のトラウマと向き合っていくことは必要ですが、

眼球運動を組み合わせることによって

「外傷記憶への慣れと再処理」をすすめていきます。

 

EMDRのやり方は、

トラウマの原因になった過去の出来事を

イメージしてもらいます。

 

すぐにセラピストが左右に振る指を

目で追っていく眼球運動を行います。

 

おわったら「何かありますか?」と尋ね、

思い出すことがあれば再び眼球運動を行います。

 

思いだしたことに対して治療者は解釈を加えずに、

「そのまま」にして眼球運動を行います。

 

眼球運動の効果とは?

 

それでは眼球運動には、

どのような効果があるのかを考えてみましょう。

 

眼球運動を行うことで、

以下の4つの効果が考えられています。

 

外傷記憶に慣れる

外傷記憶が結びつきやすくなる

連想が活発になる

目で追うという動作に意識が繋ぎ止められる

 

まず、外傷記憶に少しずつ慣れていくことができます。

 

外傷記憶をイメージすると、

通常は不安や恐怖が強くなってきて発展していきます。

 

イメージすると同時に

セラピストの指を追いかけるという

眼球運動に注意を転換して分割することで、

外傷記憶を「そのまま」にしておくことになります。

 

時間が過ぎ去っていくと次第に不安や恐怖が薄れていきます。

このようにして、外傷記憶に少しずつ慣れていくことができます。

 

また、眼球運動が脳を直接刺激するため、

外傷記憶を結び付けやすくすると考えられています。

 

封じ込められていた

外傷記憶のさまざまなものが思い出されてきます。

 

その中には、つらい記憶が

あまりに強すぎて忘れさられていた

「ポジティブな記憶」もあるかもしれません。

 

このように外傷記憶だけでなく、

様々なことに対する連想が高まっていきます。

 

記憶の断片が少しずつ繋がっていくのと同時に、

視野が広がっていきます。

 

そうすることで、

過去のネガティブなイメージが

少しずつポジティブなイメージに置き換わっていきます。

こうして再処理が進んでいくのです。

 

眼で追うという動作は、

意識を現在に繋ぎ止める働きもあります。

 

トラウマ治療では、

本人が蓋をしてしまった

つらい記憶をこじ開けることになります。

 

ときに解除反応といって、

ひどいフラッシュバックに見舞われることもあります。

 

セラピストの指を追いかけるという動作に

注意を転換して分割することで、

現在に意識をつなぎとめておくという効果があります。

 

眼球運動というと、REM睡眠を思い出します。

REMとは、rapid eye movementの略です。

 

日本語にすると急速眼球運動ですね。

REM睡眠では夢を見ていて、

不必要な情報を整理して

脳の情報処理をしていると考えられています。

 

そのREM睡眠で急速眼球運動がみられることを考えると、

EMDRが脳の情報処理を高めてくれるのも納得できます。

 

EMDRの進め方

 

EMDRは、脳が本来持っている

情報処理の力を再活性化していく方法です。

 

ときに強烈なフラッシュバックがおこることもあるので、

方法は簡単に見えますが

必ず専門家の下で実施しなければいけません。

 

4つのステップで行っています。

 

評価

脱感作

再処理

確認

 

まずは患者さんの外傷記憶に対する評価を行います。

 

どのような外傷記憶があって、

感情や身体症状はどのようにあらわれ、

どのように捉えているのか。

 

あるべき物事のとらえ方はどのようなものなのか、

治療者側で評価をします。

 

それをもとに脱感作を進めていきます。

 

まず患者をリラックスさせた状態で座らせ、

トラウマの原因になった体験を想起させます。

 

それを確認したセラピストは、

患者の眼の前で指を左右に振ります。

 

患者さんはこの指の動きを眼で追いかけます。

これを2030回往復したところで、

再び患者さんに浮かんでくるイメージを確認します。

 

不安や恐怖などの苦痛を感じることなく

浮かんでくるようにしていきます。

 

眼球運動が難しければ、

 タッピングなど注意ができる音の刺激でも可

 

それが進むと、今度は再処理を進めていきます。

あるべき物事のとらえ方を刷り込んでいきます。

治療者は、ここではじめて解釈を交えて

患者さんと話していきます。

 

ひと通りすむと、

患者さん自身に振り返っていただき、

残っている違和感があれば脱感作から行います。

 

これを繰り返すことで、

少しずつ外傷記憶を

普通の記憶として処理されていくように促します。

 

EMDRのメリットとデメリット

EMDRは新しいトラウマの治療法として、

とても効果的な治療法です。

 

ですがすべての患者さんに向いているわけではなく、

効果だけでないデメリットもあります。

 

ここでは、EMDRのメリットとデメリットを整理したいと思います。

 

EMDRのメリット

従来の持続エクスポージャー法と比べると、

EMDRではトラウマに対する心理的苦痛が少ないことが多いです。

どちらの治療もトラウマに目を背けることはできません。

 

ですがEMDRでは、

眼球運動に注意を転換して

分割することを繰り返していきます。

 

真正面からぶつかっていく

持続エクスポージャー法よりも

心理的苦痛が軽減されます。

 

EMDRでは、脳の情報処理を活性化させて

外傷記憶の脱感作と再処理を進めていくので、

EMDRがあっている方には

効果がとても早く出てくることがあります。

 

明確に特定のトラウマがある方には効果的です。

その記憶の断片をつなぎ合わせていくことで、

通常の記憶として処理されていきます。

 

EMDRは、セラピストの解釈が入る要素がとても少ないです。

EMDRでは本人の連想を引き出して、

自分自身で外傷記憶を再処理していくのを手助けしていきます。

 

このため、治療方法が

個人の解釈や力量によって差が出ることなく、

画一的な効果が期待できます。

 

EMDRのデメリット

EMDRはまだまだ新しい心理療法です。

日本EMDR学会による研修や民間資格などがありますが、

専門家も数少ないです。

 

このため、日本ではEMDR治療は

一般的ではありません。

 

心理治療全般にいえることですが、

保険適応外の治療となってしまいます。

 

自費での治療となってしまうので

治療費がとても高くなってしまい、

1回1時間ほどのセッションで12万円ほどかかってしまいます。

 

10回以上のセッションが必要なことも多く、

経済的に負担の大きな治療法となってしまいます。

 

また、複雑性PTSDには効果が期待しづらい傾向にあります。

いじめや虐待などによって

慢性的な心的外傷にさらされ続けていると、

様々な症状が入り混じって複雑性PTSDと呼ばれたりします。

 

このような外傷記憶の根が深い方は、

認知が固定かされていたり、

健忘や否認が強く、感情が強すぎてしまいます。

 

外傷記憶がポジティブなイメージと結びつかずに、

再処理がすすみません。

 

このような方には、

ポジティブな部分をつくっていくことが必要です。

 

いまの健康な部分に目を向けて、

少しずつ広げていくことが必要になります。

時間をかけて進めていく必要があります。

 

まとめ

EMDRは持続エクスポージャー法と並んで、

海外ではPTSDの心理療法としてよく行われています。

 

EMDRは、外傷記憶に少しずつ慣らしていきながら、

連想を活発にします。

 

外傷記憶をポジティブな部分とあわせて、

適切に過去の記憶として処理していきます。

 

外傷記憶の評価を行った後、

眼球運動を行いながら脱感作と再処理をすすめていきます。

 

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