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離人感・現実感消失症(離人症)の症状・原因・診断基準・治療

2017/01/15

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

離人感・現実感消失症(離人症)の症状・原因・診断基準・治療

 

離人感・現実感消失症とは、

離人症と現実感消失症に症状を分けることができます。

 

離人症とは、

実際の体験と感覚・感情・思考・行動などといったことがバラバラになり、

自己が分離して感じられることです。

 

「感情がわからない」

「自分がよそよそしく感じる」

「外から自分をみているようだ」といった症状がみられます。

 

それに対して現実感消失症では、

周りの世界に対する非現実間やなじみのなさといった

外界の知覚が分離されている感じがします。

 

「霧の中にいるようだ」

「まわりの景色に現実感がない」

「自分と世界の間に膜があるようだ」といった症状がみられます。

 

これらは本質的には差がないため、

新しい診断基準では離人感・現実感消失症とまとめられました。

そして解離性障害に分類されましたが、

離人症は解離性障害だけに特徴的な症状ではありません。

 

例えば統合失調症など、様々な病気でも認められます。

ここでは、解離性障害としての離人感・現実感消失症をみていくことで、

離人症について考えていきたいと思います。

 

1.離人感・現実感消失症(離人症)の症状とは?

離人感・現実感消失症とは、

自己の感覚や外界の知覚が分離してしまう病気です。

 

離人感は自己の感覚が分離するように感じ、

現実感消失は外界の知覚が分離されるように感じます。

 

まずは離人感・現実感消失症とはどのような病気なのか、

お伝えしていきたいと思います。

 

離人感・現実感消失症とは、

離人感や現実感消失のどちらか、

もしくは療法を繰り返すような症候群のことになります。

 

症候群と申し上げたのは、

「離人」や「現実感消失症」といった症状は、

一つの病気だけに認められるのではないためです。

 

統合失調症や気分障害、不安障害、パーソナリティ障害、

てんかんを含めた器質性精神障害や物質乱用等でも認められる症状です。

 

ですが、解離性障害で頻繁にみられる症状になるため、

アメリカの診断基準のDSMでは解離性障害のカテゴリーに含まれています。

WHOのICDでは、他の神経症性障害という形で分類されています。

 

離人症や現実感消失に関しては、

本質的に区別することの意味がないとして一つの病名に集約されました。

 

  • 離人感:実際の体験と感覚・感情・思考・行動などといったことが分離し、
    自己がバラバラに感じられること
  • 現実感消失:周りの世界に対する非現実間やなじみのなさといった知覚が
    分離されている感じられること

離人症では、自分の様々な体験に対して実感のなさを感じます。

「自分がよそよそしく感じる」といったことから、

極端になると自己が分離したように感じられます。

 

「外から自分をみているようだ」といったことが強まると、

「身体から抜け出して自分をみている」といった

体外離脱体験症状がみられることもあります。

 

現実感消失では、周囲の世界がなじみがなく、離れている感覚を覚えます。

「自分と世界の間にベールがあるようだ」

「周囲の世界が人工的で色がない」

「周りの景色になじみがない」といったように感じられます。

 

聴覚のゆがみがあって、

音や声が聞こえなくなったり大きくなったりすることもあります。

 

どちらも、「自分が自分である」という自我意識が障害されています。

自己の感覚や外界の知覚といった分離がみられます。

そのメカニズムとして、

離隔(意識変容)や空間的変容で説明されることがあります。

 

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2.離人感・現実感消失症の原因とは

離人感・現実感消失症は、

遺伝的な要素に環境要因が加わって発症すると考えられています。

 

それでは離人感・現実感消失症は、

どのような原因で発症するのでしょうか?

 

原因としては、遺伝的な要因と環境的な要因の2つが考えられます。

離人感・現実感消失症の原因となりうる要素を見ていきたいと思います。

 

①遺伝と性格・考え方

性格や物事の考え方は遺伝的な気質に加えて、

さまざまな経験の中で少しずつ形成されていきます。

このため性格や考え方には、

遺伝の要素と環境の要素が重なって影響しています。

 

離人感・現実感消失症では、

遺伝的な影響があることが示唆されています。

 

離人感・現実感消失症では、

  • 損害回避の気質

が関係しているといわれています。

 

不安になりやすく、

行動を抑えてリスクを好まない生まれ持っての性格傾向です。

それに加えて、暗示へのかかりやすさも関係していると考えられています。

 

そして発達の初期に、

様々な経験から認知的スキーマが作られていきます。

 

認知的スキーマとは、

物事を判断するときのモノサシのようなものです。

断絶や関係過剰といったスキーマが大きく関係しているといわれています。

 

断絶とは、

様々な基本的な欲求が安定して満たされないということが根底に形成され、

情動抑制や不完全さにつながります。

虐待などの外傷体験が大きく関係します。

 

関係過剰とは、

自分が家族から自立して生活することができないだろうということが根底に形成され、

依存性や脆弱さ、自己不全感につながります。

 

過保護な育て方であったり、

反対に子供の世話をしなかったりすることが関係します。

 

このように遺伝的な気質に加えて、

養育環境を含めた成長の過程で形作られた認知的スキーマが原因となります。

このためストレスに対する対処がうまくできず、

未熟な防衛機制をとりがちになってしまいます。

 

②幼少期の虐待などのトラウマ

幼少期に虐待を受けていたり、

家庭内で暴力をたびたび目撃したりといったトラウマは、

解離性障害の大きな原因の一つとなります。

 

しかしながら解離性同一性障害(いわゆる多重人格)と比べるとその影響は小さく、

性的虐待などの極度のトラウマが認められることは少ないといわれています。

情動的なネグレクトや学校でのいじめなどとの関係が大きいといわれています。

 

③ストレス

日々の生活の中では様々なストレスがありますが、

対人関係や仕事でのストレス、経済的なストレスなどが原因となって

解離症状が認められることがあります。

 

トラウマのような極端なものでなくとも、

ストレスによって心的エネルギーが不足してしまうことが原因のひとつとなります。

過剰なストレスが加わることは、離人感・現実感消失症の原因となります。

 

特別に大きなストレスでなくとも、

外傷体験に関係するようなストレスが加わることも解離症状の原因となります。

 

④年齢と性別

離人感・現実感消失症はの平均発症年齢は16歳と報告されています。

その多くが未成年のころから発症し、

20歳以上で発症するのは20%未満で、

25歳以上では5%未満とされています。

 

このため中年以降の発症では、

器質性疾患やてんかんなども含め、

医学的疾患をしっかりと調べる必要があります。

 

生涯有病率は2%ほどといわれていて、男女比は1:1になります。

 

3.離人感・現実感消失症の症状と診断とは?

離人感・現実感消失症の診断をすすめていくには、

診断基準を元に行っていきます。

 

離人感・現実感消失症の診断基準には、

アメリカ精神医学会(APA)のDSMと世界保健機関(WHO)のICDがあります。

 

離人感・現実感消失症のDSMとICDでの大きな違いは、

DSMが解離性障害のカテゴリーに含まれているのに対して、

ICDではその他の神経症性障害に分類されていることです。

 

確かに「離人症状」「現実感消失症状」は

解離性障害特有のものではありませんが、

解離性障害でよく認められる症状になります。

 

ここでは、DSMに基づいて診断基準をご紹介していきます。

 

DSMの最新の診断基準であるDSM‐Ⅴでは、

AからEまでの5項目を上から順番にチェックしていくことで、

離人感・現実感消失症として診断できるようになっています。

 

  • 簡単にまとめると、

    1. 離人感か現実感消失が認められること
    2. 現実検討能力は保たれていること
    3. 本人が苦しんでいるか、生活に支障が大きいこと
    4. 物質や他の疾患によるものでないこと
    5. 他の精神疾患では説明がつかないこと

     

    順番に、詳しくみていきましょう。

    A.離人感、現実感消失、またはその両方の持続的または反復的な体験が存在する。

    1. 離人感:自らの考え、感情、感覚、身体、または行為について、非現実、離脱、
      または外部の傍観者であると感じる体験
    2. 現実感消失:周囲に対して、非現実または離脱の体験

    離人感や現実感消失といった症状のどちらかが認めらる必要があります。

    繰り返しになりますが。

     

    • 離人感:実際の体験と感覚・感情・思考・行動などといったことが分離し、
      自己がバラバラに感じられること
    • 現実感消失:周りの世界に対する非現実間やなじみのなさといった知覚が
      分離されている感じられること

    になります。

    B.離人感または現実感消失の体験の間、現実検討は正常に保たれている。

    離人感や現実感消失といった症状は、

    統合失調症で認められることも多いです。

     

    「現実検討能力が保たれていること」ということが、

    診断基準として求められています。

     

    解離性の離人感・現実感消失症では、

    自己や知覚の分離を感じても、

    事実を認識して判断する力は保たれています。

     

    統合失調症では思考のまとまりがなくなってしまい、

    正しく現実を判断できなくなってしまいます。

     

    ただし統合失調症の軽症例や初期状態では、

    ある程度現実検討が保たれていることもあります。

    ですから、この点だけで鑑別することは容易ではありません。

    C.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、
     または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

    離人感・現実感消失に近いことは、

    正常でも起こらないわけではありません。

    白昼夢、空想状態、恍惚状態といった何かに没頭することでの

    意識変容は誰にでもあります。

     

    離人感・現実感消失といった症状を病気と診断していく線引きとして、

    問題が起きていることが必要です。

    • 本人が苦しむ
    • 生活に支障がある

    このどちらかがある時に、

    離人感・現実感消失症という病気として診断することになります。

    D.その障害は、物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

    E.その障害は、統合失調症、パニック症、うつ病、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害、または他の解離症のような、他の精神疾患ではうまく説明できない。

    違法薬物であるマリファナや幻覚薬・ケタミン・エクスタシー(MDMA)などは、

    離人感・現実感消失症状を引き起こすことがあります。

    過去にこういった物質乱用をしていた時期がないかは重要になります。

     

    うつ病では、生気のない感覚や夢の中にいるような感覚、

    アパシー(無気力)といった症状が認められることがあります。

    うつ状態でないときにも離人感・現実感消失が認められる必要があります。

     

    とても慎重に鑑別していく必要があるのが、統合失調症です。

    Bのところで、「現実検討能力が保たれていること」ということが

    重要であるとされていますが、これだけでは判断がつかないことも多いです。

     

    統合失調症に特有の症状や社会機能の低下などを時間を追ってみていきながら、

    慎重に判断していく必要があります。

     

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    4.離人感・現実感消失症のその他の症状

    断続的な離人感や知覚の異常に、

    恐怖を感じる方も少なくありません。

    また過敏症状として、

    体内の感覚に対する違和感が認められることもあります。

     

    離人感・現実感消失症の特徴的な症状は、

    その名の通り「離人感」と「現実感消失」になります。

    それ以外に認められる症状も、診断の参考になります。

     

    離人感・現実感消失症では、

    およそ1/3が断続的に症状が認められます。

    このような方では、離人感が突然に始まり、不安や恐怖を伴って

    「自分がくるってしまうのではないか」という発狂恐怖がみられることがあります。

     

    また、健忘様の症状(時間的変容)も重なって、

    時間の流れが異常に早かったり遅かったり感じることがあります。

    そして過去の記憶が思い出せなかったり、

    自分の記憶として実感をもって感じられないといった症状が認められることもあります。

    何らかの脳の異常があると感じて、それに対して恐怖を感じることがあります。

     

    身体に漠然とした体感異常を感じることも少なくありません。

    「頭に何かが詰まっている」

    「虫が這っているような感覚」

    「手足がチクチクする」といった感覚です。

     

    これは過敏症状として、

    体内の感覚に対する違和感が認められていると考えられます。

    こういった症状も、解離性障害としての離人感・現実感消失症の診断の目安になります。

     

    5.離人感・現実感消失症の治療とは?

    離人感・現実感消失症に決まった薬物療法があるわけではありません。

    どのようなメカニズムで解離が生じているのかを考え、

    それに適した薬物療法を行っていきます。

    そのうえで精神療法を進めていくことで、

    少しずつ葛藤の解消を目指していきます。

     

    離人感・現実感消失症をはじめとした解離性障害では、

    薬物療法と精神療法を合わせて行っていくことが必要です。

     

    解離性障害では心理的要因や環境要因が複雑に絡んでいて、

    その症状の表れ方も様々です。

    ですから、これといって決まった薬物療法があるわけではありません。

     

    解離性障害では、大きく2つの目的でお薬を使っていきます。

    • 症状を軽減するサポート
    • 合併した精神疾患の治療

     

    離人感・現実感消失症では、

    どのようなメカニズムで症状が認められるかを考えていくことが大切です。

     

    例えば、離人感・現実感消失症では発狂恐怖が認められることがあります。

    その根底に、「自分がバラバラになってしまうのではないか」

    「自分のことがわからない」という実在の不安である精神病性不安がある場合、

    抗精神病薬を少量使うことで軽減させることができます。

     

    その一方で、通常の恐怖や不安発作などが目立つ場合は、

    抗うつ剤抗不安薬が軽減してくれます。

    ベースにある気分の不安定さや衝動性が目立つ場合は、

    気分安定薬抗精神病薬の効果が期待できます。

     

    そしてそれ以外に、

    うつ状態や不安障害などを合併したときに使われます。

    しかしながら合併症治療を急ぐあまりに、

    根底にある病状を不安定にさせてしまうこともあります。

     

    例えばうつ状態に抗うつ剤を使ったときに、

    効果が不十分だからと増量すると、

    気分の不安定性や衝動性を悪化させることがあります。

     

    解離性障害ではその表面的な症状にとらわれて、

    お薬が多剤併用になりがちです。

    本質的にどのようなお薬が全体的な症状の軽減に有効かを考えながら

    使っていくことが大切です。

     

    一般的に解離性障害は、治療期間は長くなります。

    解離性障害では何らかの葛藤が認められることが多く、

    そうした心理的なわだかまりを少しずつほぐしていくことが必要になります。

    このため、カウンセリングによる精神療法をしっかりと行っていくことも大切です。

     

    根深いトラウマがある場合は、

    安全な環境で外傷記憶を想起して、

    少しずつ処理していくことが必要になります。

     

    そして現在の生活の中に影響していることがあれば、

    それに対して洞察を深めていきます。

    また、ストレスの対処法についても振り返り、

    少しずつ適応的な防衛機制に置き換えていきます。

     

    このように治療をすすめていくので、

    年単位の精神療法をじっくりと行っていく必要があります。

     

    まとめ

    離人感・現実感消失症とは、

    自己の感覚や外界の知覚が分離してしまう病気です。

     

    離人感は自己の感覚が分離するように感じ、

    現実感消失は外界の知覚が分離されるように感じます。

     

    離人感・現実感消失症は、

    遺伝的な要素に環境要因が加わって発症すると考えられています。

     

    離人感・現実感消失症に決まった薬物療法があるわけではありません。

    どのようなメカニズムで解離が生じているのかを考え、

    それに適した薬物療法を行っていきます。

    そのうえで精神療法を進めていくことで、

    少しずつ葛藤の解消を目指していきます。

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