各分野の専門家が医師の転職や開業などに必要な情報を配信します。

トップ > 医師からの情報発信 > うつ病・うつ状態に漢方薬は有効?病院でのうつ病の漢方治療

うつ病・うつ状態に漢方薬は有効?病院でのうつ病の漢方治療

2017/01/29

 

*当記事は「医者と学ぶ心のサプリ」から許可を受けて転載しています。

 

うつ病・うつ状態に漢方薬は有効?病院でのうつ病の漢方治療

 

うつ病やうつ状態といった気分の病気の治療としては、

抗うつ剤を中心とした薬物療法が主流となっています。

 

最近では新しい薬もたくさん発売され、

治療の選択肢も広がりました。

 

しかしながら日本では、

昔から漢方による治療が行われてきました。

 

漢方は長年の経験則に基づいて発展してきた医学です。

その知見をうつ病治療にうまく取り込めると、

治療の幅はさらに広がっていきます。

 

日本の保健制度でも、

漢方は保険適応として使えるようになっています。

 

ここでは、うつ病やうつ状態に役立つ漢方薬について詳しくお伝えしたいと思います。

 

1.うつ病治療での漢方薬の位置づけ

漢方だけでの治療は、うつ病の程度が軽症の方のみです。

抗うつ剤の効果や副作用を補強するために漢方を使うこともあります。

 

うつ病の治療では、

現在は抗うつ剤を中心とした薬物療法が中心となっています。

 

最近の抗うつ剤は副作用がかなり軽減されるようになってきていて、

身体に優しくなってきています。

 

ですから、医師という立場では

漢方薬よりも抗うつ剤による治療をおすすめします。

少なくとも「うつ」の程度が中程度以上の場合は、

抗うつ剤の治療の方がよいと思います。

 

しかしながら漢方薬も、

うつ病治療に活かせる部分がたくさんあります。

漢方薬は大きく3つの使われ方をします。

 

  • 軽症のうつ病での漢方薬での治療
  • 抗うつ剤の効果を増強
  • 抗うつ剤の副作用の軽減

 

漢方薬だけで治療をするのは、

何とか日常生活はおくれている軽症の方だけにします。

 

中等度以上の方には、しっかりと抗うつ剤を使っていく方がよいです。

それ以外としては、抗うつ剤の効果や副作用を補強する使い方です。

 

ここでは、それぞれのケースに分けて、

うつ病に有効な漢方薬についてみていきましょう。

 

06

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.うつ病治療に漢方薬を使う時の注意点

漢方薬は証を意識して選ぶ必要があり、

合う漢方薬も人それぞれであるということを理解してください。

 

もっとも大事なことなので、

具体的な話に入っていく前にお伝えしておきたいと思います。

 

「〇〇はうつ病に効く漢方薬」と聞くと、

その漢方に飛びついてしまう方がたくさんいらっしゃいます。

診察をしていても、「〇〇を下さい」と希望されることもあります。

 

漢方薬の考え方は、

多くの皆さんがもっている薬のイメージとは異なります。

 

一般的には、

薬は症状や原因に対してピンポイントで改善するためのものと理解されています。

病院でもらうお薬はその考え方で作られています。

 

しかしながら漢方では、

身体のバランスの崩れを考えて、

全体的にそのバランスを整えるものとして薬を選択します。

ですから漢方薬では、バランスの崩れ方が同じであれば、

それが腹痛だろうが頭痛だろうが同じ漢方薬になります。

さらには漢方では、体質や身体の抵抗力なども含めて漢方薬を選んでいきます。

 

このように、漢方では体質・身体の抵抗力、

身体のバランスの崩れ方などを「証」として診断していきます。

それに基づいて生薬を選んで漢方薬を配合します。

 

病院で使う漢方はエキス剤といわれていて、

代表的な生薬の配合ごとに名前をつけられて商品となっています。

それぞれの漢方薬によって、

どの症状や病気に効果があるのかが知られています。

またその漢方薬が、どのような体質の方に向いているのかもわかります。

 

ですから病院では、患者さんの体質や抵抗力をみて証を判断し、

症状に応じて漢方薬を使っているのが現状です。

気血水などの身体のバランスの崩れを考える医師は、ほとんどいないでしょう。

 

なかには体質を考えていないケースもあります。

この場合は誤治といって、漢方にも副作用が起こります。

漢方は決して副作用がないわけではありません。

漢方薬は証を意識して選ぶ必要があり、

合う漢方薬も人それぞれであるということを理解してください。

 

3.軽症うつ病で使われる漢方薬

うつ状態のときには、

漢方の概念で言う「気」の異常を考えていきます。

 

「気」とは、生きていく上で必要なエネルギーのことです。

生命の根源ともいえます。

 

息を吸ったり、食べ物を摂取することで、体内に取り入れられます。

「気」というと、私の世代ではドランゴンボールを連想するのですが、

目に見えるものではありません。形はなくて働きだけあるものなのです。

 

気が異常となる状態としては、大きく3つがあります。

気の異常

気うつ(気滞) 気が上手く流れない状態
気虚 気の足りない状態
気の上衝(気逆) 怒りやストレスで気が上昇する状態

 

それぞれの異常で生じる症状を以下にまとめてみました。

気うつ 抑うつ気分・呼吸困難・喉頭部違和感など
気虚 意欲低下・疲労感・だるさ・食欲低下・下痢など
気の上衝 頭痛・めまい・発汗・のぼせ感・イライラなど

 

具体的に使っていく漢方薬は以下になります。

気うつ 半夏厚朴湯香蘇散柴胡剤黄連解毒湯など
気虚 四君子湯・人参湯・補中益気湯帰脾湯など
気の上衝 桂枝加竜骨牡蛎湯抑肝散加味逍遥散など

 

それぞれの気の異常ごとにみていきましょう。

 

2-1.気うつ(気滞)

半夏厚朴湯・香蘇散・柴胡剤・黄連解毒湯など

気うつとは、気が上手く流れなくなって滞ってしまう状態です。

このために、どこかが「つっかえている感じ」が認められます。

のどに違和感を感じたり、胸につっかえを感じる時には、

気うつの状態であることが多いです。

 

症状としては、うつ病の中心的な症状である抑うつ気分をはじめ、

のどの違和感や呼吸困難感、胸の違和感、頭重感が認められます。

お腹がはって食欲も低下します。

 

このような気うつを改善する漢方としては、

気の滞りを解消する「気剤」が使われます。

気剤としてもっとも代表的な漢方薬は、半夏厚朴湯です。

 

それ以外としては、

柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯などの「柴胡剤」を使います。

副作用が多くて合わない場合は、風邪にも使われる香蘇散なども使われます。

 

不安や焦りが強い場合は、身体の反応が強いと考えます。

このため、陽証の黄連解毒湯や柴胡加竜骨牡蛎湯を使います。

ただし状態が慢性的に続いて明らかに陰証の場合は、

真寒仮熱といって、柴胡桂枝乾姜湯や加味逍遥散などを使います。

 

2-2.気虚

四君子湯・人参湯・補中益気湯・帰脾湯など

気虚とは、気が不足してしまっている状態です。

 

全体的に生命エネルギーがしぼんでしまっている状態です。

周りからみても、「元気がなくなっている」ようにみえます。

 

症状としては、

意欲低下や倦怠感やだるさといったうつ病の中心症状、

食欲も低下して、消化機能が全体的に落ちてしまって下痢などが認められます。

 

気が不足すると血や水もまわらないので代謝がわるくなり、

貧血やめまいなども認められます。

 

気虚を改善する漢方薬としては、補気剤を使います。

同時に血が足りなくなっていることも多いので、

補血剤も意識して使うことがあります。

 

補気剤としては四君子湯や六君子湯、

人参湯や補中益気湯、帰脾湯などを使っていきます。

補血剤としては四物湯、気血両補剤としては

十全大補湯や人参養栄湯を使っていきます。

 

2-3.気の上衝(気逆)

桂枝加竜骨牡蛎湯・桂枝加芍薬湯・加味逍遥散など

気の上衝とは、上半身に気が集まっている状態で、

気が頭に集まって熱を帯びます。

イライラしていたり、顔が赤くなっていることもあります。

 

症状としては、頭痛やめまい、動悸や発汗といった形で、

気を下降させることができないためにバランスが崩れています。

 

他にも、のぼせや下半身の冷え、顔面の紅潮がみられます。

精神的にはイライラしていることがあります。

いわゆる更年期の症状に近いです。

 

気逆を改善する漢方薬としては、

生薬の桂枝が含まれているものを使います。

桂枝加竜骨牡蛎湯や桂枝加芍薬湯や桂枝人参湯になります。

抑肝散や加味逍遥散が使われることもあります。

 

05

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.抗うつ剤の効果を漢方薬で補う

意欲低下が残る時に補気剤を追加したり、

身体の症状に対して漢方薬で補えることがあります。

 

うつ病の治療を抗うつ剤で行っている場合でも、

その効果を補うために漢方薬を使うことはよくあります。

抗うつ剤である程度よくなっても、

完全には症状がよくならないことがあります。

 

例えば、気分の落ち込みや不安は抗うつ剤によってよくなっても、

その後に「どうにも気力がでない」

「何かをしたいという気持ちがおこらない」ということがあります。

 

このような時には、

補気剤として補中益気湯や十全大補湯、人参養栄湯などを

用いるとよくなることがあります。

 

それ以外にも、

身体のさまざまな症状に対して漢方が効果を発揮することがあります。

抗うつ剤の効果を補うためによく使う漢方薬をまとめてみます。

 

症状 漢方薬
喉頭部の違和感 半夏厚朴湯などの気剤
意欲低下 補中益気湯十全大補湯など
頭痛 呉茱萸湯・釣藤散など
肩こり 葛根湯など
めまい 苓桂朮甘湯・真武湯など
腹痛 大建中湯・桂枝加芍薬湯など
むくみ 五苓散・防己黄耆湯など

 

4.抗うつ剤の副作用を漢方薬で軽減

証が合えば、漢方薬で副作用を軽減できることがあります。

抗うつ剤をはじめとした精神科のお薬では、

さまざまな副作用が認められることがあります。

 

副作用がみられたら減薬するのが基本ではありますが、

その薬で効果がでている時は減らせないこともあります。

そのような時に、漢方薬で副作用を軽減できることもあります。

 

もちろん漢方薬ですから、

「証」があっている場合に使っていきます。

副作用を改善させる漢方薬を、症状ごとにまとめてみます。

 

副作用 漢方薬
口のかわき 白虎加人参湯・麦門冬湯・五苓散・猪苓湯など
便秘 大黄甘草湯・麻子仁丸・防風通聖散など
下痢・嘔吐・胃もたれ 五苓散・六君子湯など
めまい・ふらつき 苓桂朮甘湯・真武湯・半夏白朮天麻湯など
むくみ 五苓散・防己黄耆湯など
排尿障害 八味地黄丸・牛車腎気丸など
性機能障害 八味地黄丸・補中益気湯など
高プロラクチン血症 芍薬甘草湯など
肝機能障害 小柴胡湯・柴胡桂枝湯など

 

まとめ

うつ病でよく使われる漢方薬をまとめました。

 

お問い合わせはこちら