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これではインフルエンザ・パンデミック推進国だ ~新型インフルエンザに備えて、感染を広げない教育を~

2017/01/21

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

つくば市 坂根Mクリニック
坂根みち子

2017年1月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

インフルエンザが猛威を振るっています。


日本では、公休と出席(出社)停止期間の関係から、

インフルエンザが疑わしければ

必ず医療機関の受診を勧められてしまいます。

 

治療のための受診ではなく、

実態は診断のための受診であることが多いのです。


そして、たとえ軽症であっても

ひとたびインフルエンザと診断されれば、

大抵は抗インフルエンザウイルス薬が処方され、

そのために抗インフルエンザウイルス薬の使用量は世界一と推測されます。

 

安易な処方での薬剤耐性の問題も心配されています。

今年は鳥インフルエンザも多発しており、

新型インフルエンザの出現につながらないか懸念が広がっています。


現在のやり方では、

この先予想される新型インフルエンザに対応できず、

パンデミックを誘発します。

 

治療に専念すべき医療機関が診断を求める人でパンクし、

医療関係者からまず多くの犠牲者が出るでしょう。

 

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通常のウイルス感染症で大事なのは、
1.ウイルスを自分の体内で増殖させないこと。
2.人にうつさない行動をとること。
の2点です。


喉が痛い、熱が出た、節々が痛い、体がだるい。

そういった症状が出たら、

何かしらのウイルスが体に侵入して闘っているということを意味します。


それが、インフルエンザウイルスなのか、

風邪のウイルスなのか(場合によっては細菌感染なのか)は、

軽症の場合は区別がつきません。


要は、軽いうちに自力で抑え込めればいいわけです。
まめに水分を摂って、

ウイルスの侵入経路である喉を潤すこと、

よく休みウイルスを増殖させないこと、これにつきます。


併せて大切なのが、人にうつさない行動です。


先日来院した患者さんは、

発熱し医療機関受診、通常診断のためには

発熱から12時間は待ったほうが良いのですが、

それ以前の受診となりインフルエンザ検査は陰性、

医師にインフルエンザは否定できないと言われたものの、

風邪薬を飲んで(見た目は解熱)学校の試験へ。


その後さらに熱が出て当院受診、

インフルエンザと診断されました。


「ウイルスまき散らしましたね」といっても、

ピンとこないらしく「はあ、僕はどうすればいいのですか?」という返事でした。

「軽かったのでインフルエンザとは思わなかった」から仕事に、

学校に行っていた、という患者が大勢います。

結果として大流行の原因となっています。

 

ウイルスはある程度体内で増えないと検査で陽性となりません。

軽く済む人(不顕性感染)の人はたくさんいるのです。

この人達も感染源となりますが、

検査キットが出来たからと言って

根掘り葉掘り検査するのは本来意味がありません。

 

会社も学校もとても休みにくいのは確かです。
インフルエンザに罹ったという証明、

医療機関にかかったという証明がないと、

追試や公休は認められないところも多いようです。

 

当院では、人にウイルスをうつさない対応を具体的に指導しています。
鼻水やくしゃみなど、自分から出る分泌物には、

ウイルスがたくさん含まれていること、

使用中のマスクも同様であること。

 

それを触った手は、

アルコールをしっかり擦り込んだ手で消毒してからでないと、

人とのやり取りでウイルスをうつしてしまうこと、

部屋は加湿して、ウイルスが宙を舞わないようにすること。

 

あちこちに付いたウイルスは、

それほど長時間感染力を持つわけではないが、

しばらくは感染力があることなどです。

 

特に子育て中の親は、

家族内での接触が0に出来るわけではありません。

具体的なウイルス対策を知らないために家族内感染が多発しています。

 

深刻なのは、医療関係者です。
医療の現場は人手が足りず、

微熱がある、節々が痛いくらいで休めません。

このくらいならと、無理して勤務することが多いのです。

ですから医療機関での集団感染も後を絶ちません。


いくら「疑わしい時は休め」という建前論を唱えていても

現状と解離しています。

 

次善の策として、体調が今一つの時に出勤した時は、

インフルエンザウイルスを体内に持っている前提で、

マスクと清潔操作(一動作一消毒)を徹底させることです。

これは一般の軽症患者にも通じることです。

 

今年のインフルエンザは、

典型的な咽頭のインフル濾胞を認めることもほぼなく、

ウイルスというのは少しずつ変異しているのだということを感じさせます。


今回の大流行は、ウイルス感染パンデミックの予兆かもしれません。
危機をチャンスととらえ、それに備えなければいけません。

診断については、大きな転換が必要です。

 

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開業医の過剰地域では、

この次期のインフルエンザの診断処方で、

経営が成り立っているところもあるでしょう。

 

日本医師会が動かないのも同じ理由かもしれません。

薄利多売の医療システムに問題があるのは確かです。

でも今は近い将来かなりの確率で訪れる致死性の高いウイルスに対する

パンデミック対策の方がどう考えても重要です。

 

出来ることははっきりしています。
厚労省と日本医師会は、

速やかに、インフルエンザ検査キットを市販するよう

関係諸機関に働きかけて下さい。


診断は自分で、

治療が必要なレベルの人だけ医療機関をご利用する、

これだけでも医療機関の負担と感染のリスクはかなり減ります。

 

会社と学校が求める「インフルエンザのお墨付き」も得られます。

本来なら軽症で医療機関に受診する必要がない、

検査する必要がない人はこれで用が済みます。


病を抱え、

インフルエンザをうつされる恐怖を感じながら

医療機関に通院せざるを得ない患者にも朗報でしょう。

 

学校、会社で早めの受診を勧めることは止めましょう。

他の先進国では、

インフルエンザが疑われる場合は

受診を控えるように呼びかけているところも多いのです。


それより、自分の感染を悪化させないことために

どうすべきか(水分と休養)、

感染拡大を防ぐためには

どのような行動をとるようべきかの教育をお願いします。

 

私たちは日々患者さんへの啓蒙に努めておりますが、

とても間に合いそうにありません。

医療現場からの危機感を知って頂きたいのです。

よろしくお願いします。

 

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