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角を矯めて牛を殺す」新専門医制度

2017/03/29

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

安城更生病院 副院長/神経内科部長
安藤哲朗

2017年3月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

 

角を矯めて牛を殺す――。


この言葉は、小さな欠点を無理に直そうとすると、

かえって全体がダメになってしまうという意味である。

新専門医制度を評するのに、この諺がふさわしい。

 

新専門医制度の原点ともいえる

平成25年の「専門医の在り方に関する検討会報告書」によると、

 

基本的な考え方は

「専門医制度を持つ学会が乱立して、

制度の統一性、専門医の質の担保に懸念を生じる

専門医制度も出現するようになった結果、

現在の学会主導の専門医制度は

患者の受診行動に必ずしも有用な制度になっていないため、

質が担保された専門医を学会から独立した

中立的な第三者機関で認定する新たな仕組みが必要である。」と記載されている。

 

「専門医制度の乱立、制度の不統一」という

“小さな欠点”が気になったことがそもそもの出発点のようだ。

 

また、後半の患者の受診行動と専門医制度の関わりについては、

たとえ新制度が始まったとしても限定的であると私は考える。

 

日本にはかかりつけ医という文化があり、

かかりつけ医が、自分の信頼する医師に

患者を紹介するシステムが広く行き渡っている。


その場合、かかりつけ医からみて、

紹介先の医師の専門医資格はほとんど関係ない。

 

地理的条件に加えて、個人的に信頼していること、

あるいはこれまでの紹介状に対する回答書、

さらには学会発表や論文などを考慮して

紹介することが多いと思われる。

 

救急疾患の場合は、

近くの救急病院に行くか搬送される。

それも専門医資格の有無は全く関係ない。

 

つまり新専門医制度は、

小さな欠点を矯正し、

ほとんど意味のない目的を持ったものであるといえる。

 

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一応「質の担保」という謳い文句もあるが、

質の担保に寄与しそうな内容は皆無であり、

基本領域―subspecialty構造による「管理」、

専攻医の地域別、領域別の人数の「管理」、

基幹施設―連携施設構造による「管理」と、

「管理」、「管理」「管理」が並び、

これがよい医師を育てることにどう繋がるのか、全く理解ができない。


むしろ、医療の柔軟な発展を阻害し、

若手医師のキャリア形成を阻害し、

地域医療を支えている指導医のmotivationを低下させ、

専攻医のon the job trainingを劣化させる。

 

新専門医制度がもしこのまま開始されると

日本の地域医療と将来を担う若手医師達に不可逆的なダメージを与えるだろう。

 

そして多くの地域で、

大学医局はこの新制度に乗じて大学復権を目指している。

そのことがより事態を複雑にし、地域医療の危機を高めている。

 

専門医機構および厚労省は平成30年の制度開始を優先せずに、

原点に立ち返って、

すなわち平成25年の「専門医の在り方に関する検討会報告書」に立ち返って、

再検討すべきである。

 

議論が机上の空論で終わらないようにするためには、

地域医療の現場で働く指導医や、

研修医、女性医師を議論に加える必要がある。

 

 

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