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「国立大学医学部長会議」はなぜ「全国市長会」への反論をしたのか?

2017/05/22

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

仙台厚生病院 医学教育支援室
遠藤希之

2017年5月22日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

 

国立大学医学部長会議は5月17日、

全国市長会の4月12日の

「国民不在の新専門医制度を危惧し、

拙速に進める ことに反対する緊急要望」に対して、

反論文を同会に提出したことを公表した
(m3. Com. https://www.m3.com/news/iryoishin/529509).

 

この報道をみて、強い違和感を覚えたのは筆者だけではあるまい。

市長会に「専門医機構」が反論するならわかる。

 

しかし、なぜ、医学部長の集まりが市長会に反論するのか?

 

この疑問を解くには日本専門医機構の内情からみていくと判りやすいだろう。

5月17日付けのJB press 「日本の医学界をいまだに仕切るゾンビ組織」に

機構内情の詳しい解説が載っている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50005

 

この記事によると、機構では発足当初から、

以前医師派遣の見返りに裏金を貰っていた経歴のある人物が

事務局長を務めており(現在は退職)、

現理事長も「地域医療振興協会」という

医師派遣を行っている団体の「常勤顧問」だという。

 

つまり医師派遣の見返りとして

金銭を受け取る事に抵抗がない人間が機構中枢だった、

ということだ。

 

結果として「基幹施設」が「連携施設」を従え、

それらに医師を「循環」させるという仕組みが出来上がった。

 

研修制度といいながら、

基幹施設側にすれば使い勝手のいい「医師派遣制度」なのである。

そして国公立大病院はほぼ全ての領域の「基幹施設」に手を挙げている。

 

国立大医学部長会議は、

この「新」医師派遣「制度」がのどから手が出るほど欲しい、

ゆえに「市長会」に筋違いの反論をしてしまった、

と勘ぐられても仕方なかろう。

 

また、反論もとってつけたような内容が多く、

それこそ「事実誤認」も目立つ。

 

紙面の都合上、本論考では一点だけあげる。

 

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「「医師配置の地域格差を生んだ根本原因は、

2004年4月に創設された新医師臨床研修制度にあると考える」と指摘、

同制度の改革なくして、

地域の医師不足の根本的な解決がなされることはないとしている。」

 

地域格差に対して過去にもしばしばなされてきた主張だ。

しかしこの主張を裏付ける具体的なデータを筆者は寡聞にして知らない。

 

逆に、昨年12月に森田知宏氏が発表したデータ(http://medg.jp/mt/?p=7248)は、

臨床研修制度が始まったのち、

むしろ医師数の地域格差は減少傾向にあることを示している。

 

氏は「ジニ係数」と呼ばれる一般には所得格差を表す指標を用いて解析した。

所得を市町村人口あたり医師数に置き換えてジニ係数を計算したのだ。

その結果、新臨床研修制度が始まった2004年から2014年までに、

ジニ係数は0.60から0.56と減少傾向にあったとのことだ。

 

医学部長会議も、

仮にも科学者であるなら論拠となるデータを示すべきである。

それがなければ、やはり「事実誤認」と反論されても仕方あるまい。

 

なお市長会は「新専門医制度が医師偏在を増長する」と述べているだけで、

新専門医制度で「医師偏在を解消しろ」とは言っていない。

 

医師数の地域格差に対して

新医師臨床研修制度が問題なのであれば、

強大な力をもつ医学部長会議としてそちらを先に改善したらどうだろう。

 

個人的には、今回の市長会への反論で、

図らずも医学部長会議は自ら「日本専門医機構」という

「医師派遣の利権追求団体」と同じ穴のムジナであることを証明してしまった、

と思えてならないのだ。

 

最後に提案がある。

筆者も真に質の高い「新専門医制度」を切望している者だ。

この際、全国市長会、医学部長病院長会議、専門医機構、

そして現場の医師達を含めた形での公開シンポジウムを開き、

議論をつくしてはどうだろう。

 

 

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