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「自殺は重大医療事故」と発表した医療機能評価機構は即時訂正を -厚労省は、医療安全調査機構の事故調センター指定の取り消しの検討を-

2017/10/05

 

*この原稿はMRIC by 医療ガバナンス学会の許可を受け転載しています。

 

現場の医療を守る会代表世話人
坂根Mクリニック 坂根 みち子

2017年9月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

 

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医療安全を担うはずの組織が暴走している。


8月28日に、日本医療機能評価機構が

「入院患者の自殺は重大な医療事故」と記者会見した(1)。

 

自殺は様々な要因で起きるが医療事故ではない。

 

現在の医療事故の法的な定義に照らしても、

医療事故にはあたらない。

 

機構の真意を「忖度すれば」、

注意喚起するために善意で発したものかもしれない。

 

しかしながら、法の定義を無視して公表すれば、

言葉が一人歩きをするのは目に見えている。

 

その場合、自殺の原因は医療機関の手落ちとされ訴訟を誘発されかねない。

悪意のない善意というには、あまりに非常識である。


このような法を逸脱した用語を用いた提言が、

傘下の認定病院患者安全推進協議会が出てきた時に、

日本医療機能評価機構にはそれを検証する義務がある。

 

今回の問題で、機構にチェックシステムが欠如していることが露呈した。

機構はこの事実を厳粛に受け止め、速やかに提言を訂正し、

世間に間違ったメッセージを発信した過ちを認めて頂きたい。

 

今、日本で医療事故を取り扱う組織としては、

日本医療機能評価機構と日本医療安全調査機構がある。

 

日本医療機能評価機構は、

永年にわたり、ヒヤリ・ハットを含めた広義の医療事故情報を収集し、

分析・提言してきた。


これに対し、2014年に改正された医療法では、

「加えた医療による」「予期せぬ死」であると

管理者が認めたものを医療事故と定義し、

すべての医療機関を対象に医療事故調査支援センターに報告するように定めた。

 

日本医療安全調査機構は、そのセンター業務を担っている。

それまで広義の医療事故を担ってきた日本医療機能評価機構ではなく、

医療安全調査機構が法的に極めて限定して定義された

医療事故だけ担うようになったため、制度が複雑化し、

無駄な重複が生じていることは、何度も指摘してきた(2)。

 

「自殺は医療事故」と発表した日本医療機能評価機構よりさらに問題なのは、

医療事故調査支援センターの指定を受けている日本医療安全調査機構である。

 

2014年に始まった医療事故調査制度は、

全医療機関を対象とした初めての制度のため、

今まで日本医療機能評価機構が担ってきた仕事の繰り返しにならないように、

報告対象を極めて限定し開始されたものである。

 

ところが、センターが行っていることは、


1.報告対象の拡大推進(3)(4)

 →報告数は予算とリンクするので、

  センターへの報告をうながすことは利益相反にあたる。


2.定義に当てはまらない合併症の分析・公表(5)(6)

 →第1報 中心静脈穿刺合併症 第2報 肺血栓塞栓症 

 →いずれも予期出来た既知の合併症で、そもそも報告対象ですらない。

 

日本医療機能評価機構がやってきた

医療事故情報収集等事業をベースに考えた時、

センターに課せられた仕事は、全医療機関を対象に、

今まで指摘されていなかったシステムエラーを発見し、

今まで出来ていなかった現場の具体的な医療安全のための改善策を

実行させることである。繰り返しはいらない。


残念ながら、医療安全調査機構には日本の医療安全全体を俯瞰して、

過去の事業との連続性を考え無駄を省く視点は全くない。


それどころか8月30日のキャリアブレインのニュースによると、

機構はセンター調査結果の公表を検討していると言う。

 

日本医療安全調査機構(高久史麿理事長)は30日、

医療事故調査制度を円滑に運営するために設置している

「医療事故調査・支援事業運営委員会」を開いた。

 

この中で委員会事務局は、

医療機関または遺族が院内事故調査の結果に納得がいかず、

医療事故調査・支援センター(センター)に依頼した再調査の結果を、

個人情報保護に留意した上で、公開することを提案した(7)。


何度も繰り返し指摘してきたが、

この制度は遺族の納得(〜紛争解決)のための制度ではなく、

今後の医療安全を高めるため、

言わば未来の患者のための制度なのである。

 

センター調査結果の公表は、事故情報を収集分析して、

医療現場にフィードバックするという法の趣旨を明らかに逸脱している。

 

この制度のための2017年度の予算は9.8億円に上る。

不要な報告を促し、二番煎じの不要な分析に人と予算を費やし、

現場の医療安全のために具体的なアクションを起こすのではなく、

従来通りの報告書作りに終始し、

遺族への対応に拘泥しているセンターは、

むしろ医療現場に余分な仕事を増やしている。

 

厚労省は、日本医療安全調査機構のセンターとしての指定を取り消し、

日本医療機能評価機構に制度を一本化する必要がある。

 

2011年に医療事故調査制度が完備したスウェーデンでは、

日本のような混乱は起きていない。

 

制度が一本化されていること、

センターの仕事は、

報告→分析→システムエラーの発見→情報共有→医療現場の改善、

というサイクルが徹底しているのである。

 

センターにいる法令系スタッフの仕事は、

法に則って行われているかチェックすることである。

 

日本のセンターの法律家はなすべきことを間違えていないだろうか。

また、スウェーデンでは、起きてしまった事故に対しては、

無過失補償制度が完備していることも制度が上手く回っている大きな要因である。


日本での本質的な問題は、

センターの仕事を検証するシステムがないことである。

 

遵法精神に乏しい無駄の多い医療安全団体の存在こそ、

検証されるべきである。

 

莫大な税金が使われてる以上、

それは厚労省の仕事のはずだが、如何だろうか。

 

<参考>
(1)「入院患者自殺は重大医療事故」、日本医療機能評価機構が提言

https://www.m3.com/news/iryoishin/553856?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD170828&mc.l=243230019&eml=dec73da708e24678ff79160c0fd3035d


https://www.psp-jq.jcqhc.or.jp/post/proposal/3192

 

(2)坂根 みち子 医療事故調査制度混乱の原因は日医とセンターにあり–

   これでは管理者が混乱する – http://medg.jp/mt/?p=7070


(3)医療事故 届け出促進へ 関係機関が統一基準 制度低迷打開 
http://mainichi.jp/articles/20161012/ddm/001/040/209000c


(4)“事故調”、係争例もセンター調査の対象

   日本医療安全調査機構、運営委員会で確認 
https://www.m3.com/news/iryoishin/499221


(5)日本医療安全調査機構 医療事故の再発防止に向けた提言
第2号 急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析
第1号 中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―

https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=1

 

(6)坂根みち子 医療事故調査・支援センターは、
         医療の「質」の問題に手を出してはいけない
http://medg.jp/mt/?p=7586

(7)事故調センター調査の公開を提案 日本医療安全調査機構の運営委員会

https://www.cbnews.jp/news/entry/20170830135742

 

 

 

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