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クリニックでの有給休暇申請の対応について

2017/05/18

カテゴリー税務、労務、法律

 

皆さん、こんにちは。

森山社会保険労務士事務所の代表を務めております

社会保険労務士の森山幸一です。

 

前回、前々回とクリニックにおける

有給休暇の法律上の定めや運用面について

ご説明してまいりました。

 

有給休暇の法律上の定め

 

クリニックでの有給休暇の運用方法について

 

今回はより具体的にスタッフさんから

有給休暇の申請があった場合の対応について

考察してみます。

 

有給を申請された場合にどう対応すべきか?

クリニック運営の中では、

スタッフさんからの急な有給休暇の申請や、

後で有給休暇に振り替えて欲しいという要望がくることがあります。

 

そういった際の対応についても、

対応の方針をクリニックで定めることでスムーズに処理できるかと思います。

 

(1)有給休暇の申請に期日を設定

クリニックの運営上、

有給休暇の突然の申請や事後申請は、

代替要員の確保や業務遂行上支障が生じることがあるため、

有給休暇の申請時期を例えば、

1週間前とか、シフト作成前とすることは認められています。

 

判例でも、

「年休の時期を指定すべき時期につき原則的な制限を定めたものとして合理性を有し、

労基法39条に違反するものではなく有効である

(此花電報電話局事件-最一小判昭57.3.18)」としています。

 

直前の申請に対しては、

就業規則の有給休暇の条項に、

「従業員は、年次有給休暇を申請する場合、

1週間前(他に「シフトを組む前」)までに届け出なければならない」

という規定を設け、所定の申請書を準備しておくことが重要になります。

 

この申請期間については、

時期指定の時間的制限を余りにも前(例えば「シフトを作成する1ヶ月前」など)に

設定しすぎると、有給休暇の取得を制限しているとみなされることがあり、

規定の合理性が認められにくくなります。

 

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(2)有給休暇の事後申請への対応

有給休暇は、職員からの申請(時季指定)に対して、

労基法上も会社に時季変更権は制限があるとはいえ、

認められていることから考慮すると、

職員の申請(時季指定)はクリニックにおいて、

『事前』に時季変更の要否を検討し、

その職員にその告知をするに足りる相当の時間をおいてなされなければならないもの

と考えられます。

 

判例でも、

「年休の事後請求という概念は本来成り立たない性質のものです

(東京貯金事務センター事件-東京高判平.6.3.24)」となっています。

 

実務上においては、

職員が急病、その他の緊急の事態のため、

あらかじめ時季指定をすることができずに欠勤した場合、

職員の求めに応じて、欠勤と扱わず、

有給休暇と振り返る処理を行っているクリニックが有ります。

 

これは、クリニックの『同意』がある限りは、

法によって排斥されていないというだけで有り、

同意するか否かはクリニックの裁量に委ねられています。

 

クリニックが事後申請を認める運用をする場合は、

労務トラブル予防の観点から、

就業規則に『事後申請を認める』規定を定めておくことが良いかと考えます。

 

(3)有給休暇申請書の取得理由の記載について

上述の通り、

有給休暇には所定の申請書により申請してもらう運用をしていく中で、

『取得理由』を記載する欄を設けること自体は問題ありません。

 

有給休暇の利用目的は労基法の関知しないところとなり、

休暇をどのように利用するかはクリニックの干渉の許さない職員の自由です。

 

したがって、利用目的を考慮して有給休暇を与えないことは

自由利用の原則に反して認められないことになります。

 

実務上で活用する事例としては、

有給休暇の申請が複数人から出された場合に、

例えば急な子供の病気の対応で病院に連れていくとか、

近隣の葬儀に参列するという目的のための時季指定には時季変更権を行使せず、

具体的な事情や必要性を記載しなかった組合活動目的の時季指定に対しては

時季変更権を行使することが適法(津山郵便局事件-広島高岡山支判昭61.12.25)

というものがあります。

 

反面、取得理由の記載欄を設けながら、

その取得理由を考慮して有給休暇を与えない運用は自由利用の原則に違反し、

クリニックが損害賠償責任を負うことになりません。

 

上記のことから、『事業の正常な運営を妨げる場合』に該当しないときは、

記載された取得理由を問わず、

有給休暇を取得させる運用をしていただくことが求められます。

 

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次回は、職員の勤怠について、

「遅刻・早退・欠勤をする職員に対して、

どのような対応が出来るのか」について説明していきたいと思います。

 

 

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